「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「揺るるも侘しき」

2006-02-19 00:05:41 | 和歌
 
     邙 山  沈佺期(しんぜんき)詩 

     北邙山上列墳塋
     万古千秋対洛城
     城中日夕歌鐘起
     山上惟聞松柏声


 北邙山は洛陽の北、黄河の南に連なるなだらかな丘陵の名前だと言う。ものの本によれば、後漢の光武帝をはじめ・西晋・北魏の帝の陵が連なり、杜甫・王之渙・顔真卿らの詩人もここに葬られているという。将に墳塋(墓)が連なり、二千年の遥かな昔から、洛陽の街中の「さんざめき」と相対してきた。

 洛陽の繁栄、人生の栄華、歓楽の歌声と対極にあるのが、邙山の世界だと沈先生は詠った。全てが沈黙の世界にあって、松籟のみが耳に残り、人生の無常を感じさせる。



 




             邙山の墳墓の松柏さんざめく

             洛陽の夜をいかに聴くらむ




             大振りの誇れる華を偲ぶれば

             芙蓉のなきがら揺るるも侘しき