十一月後庭梅花盛開 蔡襄(さいじょう)詩
迎臘梅花無数開
旋看飛片点青苔
幽香粉艶誰人見
時有山禽入樹来
この詩を初めて読んだとき、「蝋梅」の花が無数に開いた情景を、頭に描いた。読み進むと、花びらが青い苔に舞い散る風情が詠まれて、幽雅な詩情に惹きつけられた。がしかし、何かウソっぽくないか?? 蝋梅の花びらは、風が吹き禽が飛んできたくらいでは、散らないのではないか・・・。蝋梅には、風に舞う花びらの風情は無い。しかし、明らかに「臘梅花無数開」と詠われているではないか!?
頭を抱えて暫らくして、詩の題名を見た。「十一月後庭梅花盛開」とある。なになに? 十一月に裏庭で梅の花が盛んに咲いている? チョッと早すぎではないの! でもまあ中国の何処か知らないが、早く咲く処もあるのかな・・・、などと考えているうちに、ハッと気が付いた。
陰暦十二月を「臘月」という。「蝋梅」ではなく、「迎臘」、すなわち「十二月を迎えて梅の花が咲き誇っている」と詠っているではないか!
恥かしながら早とちり、虚庵氏ご粗末の一席。
人知れず寒空に咲く梅の花
飛び来る禽に花びらこぼれて
ほのかにも香れる梅の樹の下に
佇みおれば ひとひら舞いきて