Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

「僕は娘を戦地におくりたくない」

2014-07-04 14:15:41 | 日本
腹がたって、情けない。安倍総理、日本政府、そして我が国民たち。
3日まえに憲法解釈が安倍政権によってねじ曲げられ、また日本が「戦争のできる国」に一歩近づいた。

第二次大戦の悲惨な経験のあとにつくられた平和憲法のもので、これまでかろうじて日本の武力行使は「自衛のため」だけに限られてきた。それが今度の解釈変更で、「集団自衛権」が認められるようになり、日本に直接の危害が及ばなくても、同盟国さえ絡んでいれば世界のどこの紛争にも顔をつっこめるようになったのだ。
米国に尻尾をふってすがっていきたい官僚たちや、金になる武器を増産したい産業界からの要請も背景にあるだろうが、こうして日本を軍国にもどすのは安倍総理の長年の夢だった。今回の解釈改憲はその悲願達成の第一歩となったわけだ。しかしこれが、将来の国民の血と引き換えに成されているのだということを、一体どれだけの人々がわかっているのだろうか。

近年領土拡張で一層その強引さを増してきた中国など、日本の国益を脅かす材料があるのは理解しているし、いざというときのために軍事を備えておきたいという、改憲賛成派の心情はそれなりに理解できる。しかし、日本の国防なら、集団自衛権は必要ないだろうし、現行のままで十分なはずだ。同盟国がピンチだからといって、わざわざ中東やアフリカの戦争に加担する必要などない。

戦場というものをいくつか経験してきたフォトグラファーとして、僕には確固として譲れない思いがある。それは理由などどうあれ、「戦争は絶対悪」ということだ。耳の鼓膜を破るようなひっきりなしの爆音、死体の腐乱の匂い、脳みその飛び散った子供、まるで生ゴミのごとく積み上げられた何十もの屍…こんな、戦地での音や匂い、理不尽な殺戮の光景は、記憶した体が決して忘れることはない。そんな戦争への拒絶感は、僕にとっては理屈云々ではなく、体感的なものだ。

日本の戦後70年が経ついま、安倍総理や現職の議員のうち、戦場を経験したことのある人などいるのだろうか?彼らに欠けているのは、絶対的にその体感だ。おまけに彼らは想像力が乏しいからそういうことに思いを巡らすことさえできない。戦地の醜さを身をもって知っている人間、もしくはそれを想像できる人間であれば、こんなに安易に戦争への道をひらくことなど出来やしないはずだと思う。

今、日本に必要なのは、軍備どうこう以前に、体たらくな議員・官僚の外交能力を高める方が重要なのではないか?最近の、空いた口の塞がらぬような発言スキャンダルの数々をみても、近年の議員達の質はひどいものだ。歴史や国際認識に欠け、人間的にも幼稚に思える人がなんと多いことか。そこまで落ちてしまった人たちにつける薬などないかもしれないが、それでも勉強させるなり、国際政治の専門家の力を借りる、国際感覚をもった新しい若い力を投入するなどして、近隣諸国との建設的な外交にもっとエネルギーを注いでもらいたい。他の国々としっかりした関係を構築できれば、もともと戦争の心配などせずにすむのだから。軍事費拡大よりこちらのほうが遥かに重要なはずだ。

しかし、結局のところは国民がどれだけ政府に対する意思表示をするかにかかっているわけで、昨年の選挙のようにあれだけ騒がれながらも、投票率50パーセント前後の無関心さを通すのなら 、あまり希望はないだろう。数年後に自分たちの子供が徴兵されて、どこか地球の裏側の戦地で死ぬような憂き目をみてから文句をいっても、もう手遅れだ。僕はこんな政治家たちのために、将来娘を戦地におくるつもりなど、毛頭ない。

(お知らせ キャノンギャラリーにて7月10日より個展「紛争地からのメッセージ」開催 興味があればお越し下さい。
http://cweb.canon.jp/gallery/archive/takahashi-hotspot/index.html

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2 コメント

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Unknown (すずき)
2014-07-12 14:38:16
いつもブログ拝見させて頂いてます。

私の恩師も高橋さんと似たようなことをよく言っていたことを思い出しました。
環境問題を研究している恩師は、いつも「見えない他人の痛みを共有することが国際社会に求められているんだ」とおしゃっていました。
これは、何事においても通じることだと思います。

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よろしくお願い申し上げます。 (近藤晃司)
2014-07-20 08:59:34
素敵なブログ拝見させていただきました。
私は、近藤晃司ともうします。
「すべての人に幸せ」の思いを込めて、
http://kojyulmol.com←こちらを運営しておりますm(__)m。
みなさんのお力を是非ともお貸しくださいませm(__)m。
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