Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
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ムンバイ、危ぶまれる塩田の将来

2013-07-01 12:50:39 | アジア
一ヶ月程前になるが、それまでずっと撮りにいきたいと思っていた塩田を訪れることが出来た。

まるで工事現場の砂のように無造作に積み上げられた何十もの白い山をみて、海水からこれほど多くの塩がとれるものかと驚かされる。まさに「自然の恵み」といったところか。素足になって歩き回るが、足底にあたるゴツゴツとした荒い塩粒の感触が痛いけれども心地いい。

ここ数年、ムンバイ近郊ではこのような塩田の将来が危ぶまれている。土地が不足しがちなこの大商業都市で、塩田が土地開発のターゲットになっているのだ。

開発業者たちが商業用や新興住宅地としてこの広大な海沿いの地域に目を光らせている一方、政府は市内のスラム住民をまとめて移動させられるような代替地を求めている。そんな開発の動きに対して環境保護主義者たちは、津波や浸食から町を守る堤防のような役割を果たしている塩田を破壊すべきではないと主張するが、強力な開発の流れにどこまで立ち向かえるかは疑問だ。

状況をさらにこじらせているのは、塩田の所有権問題だ。塩田のある土地の多くはもともと政府の所有地であったが、それを塩の製造業者が借りうけ、さらに耕作者に又貸しして現場を委ねている。そんな歴史的背景から政府は、製造業者や耕作者は土地を売る権利をもたないとして開発業者たちを牽制しているが、もとの契約からすでに200年以上の長い年月が経過しており、現実的には土地の所有権も曖昧になってしまっている。

このような塩田の将来がどうなるのは定かではない。しかし僕個人としては、ムンバイのような極端に密集した都市にとって、数少ない自然の残る場所としても、美しい塩田がなくなってしまうのを見るのは寂しいものだと思う。

(もっと写真をみる http://www.kunitakahashi.com/blog/2013/07/01/uncertain-future-of-mumbais-salt-pans/ )

(同記事は、Yahoo Japan News にも掲載しています)

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