Kuni Takahashi Photo Blog

フォトグラファー高橋邦典
English: http://www.kunitakahashi.com/blog

イラン雑感

2014-06-24 06:40:21 | Weblog
2週間程前に、初めてイランを訪れた。許可された日数が7日間だけだったので短い滞在だったが、それでも興味深い経験ができて、イランに対する僕の印象はがらりと良くなった。

イランといえば、欧米メディアによって、その過激な反欧米姿勢(特に前大統領アフマディネジャドのとき)や核兵器製造疑惑などばかりが報道が報道されるので、どうしてもネガティブなイメージがつきまとう国だろう。ところが国内で幾ばくかの時間を過ごし、僅かながらも友人もできると、その先入観が間違いだったことにすぐに気づかされた。長い歴史のある文化や芸術は圧巻ものだし、町のなかの雰囲気や人々と自分あいだの距離感が、なんとはなしに居心地がいいのだ。ホテルのスタッフ、市場の親父さん、雇った通訳やドライバーなど、市井の人々もみなフレンドリーだが、こちらが疲れるような大袈裟さはない。通りでも一応放っておいてくれて、必要な時には親切にしてくれる、といった感じか。予想していた反欧米感などは、人々のあいだからまったく感じられることもなかった。

「1979年の革命がおこらなかったら、この国はもっと発展していたのに」
ある晩、一緒に食事をしながら、通訳の口からこんな意外な言葉がこぼれでた。学歴も高く教養もあるまだ30代なかばの若い彼は、イラン人の9割以上は、革命がおこらなければよかったと思っている、と言うのだ。これにはちょっと驚いて、さすがに大袈裟だろうと話半分で聞いていたのだが、彼はその日におこった出来事を話しだした。僕らの乗った国内便の飛行機で、中間の座席だった彼の両側にはイラン人の老人がふたり座ったそうだ。乗客が全員搭乗してから、一時間もなんのアナウンスもなしに飛行機の出発が遅れたのだが、そのとき老人たちが彼に向かってこう謝ったという。
「革命なんておこしてまって、君ら若い世代に申し訳なかったね」
革命に中断されることなく国が発展していれば、もっと便利で信頼の置ける交通網が整備されていたはずだ、という意味らしい。

なるほどな。いくらか合点がいったような気がした。結局のところ、政府の言うことと国民の感じていることなど一致してはいないのだ。イラン政府が反米であるからといって、イラン人がみな反米というわけではない。国民たちの多くは、革命後の政府と自分たちのあいだの隔たりをしっかりと感じているのだろう。ただ、こういうことは広がって反政府デモにならない限り報道されることもないので、なかなか僕ら外国人には伝わってこない。

最近のイラクの状勢が悪化するにつれ、この地域の安定させるためのイランの役割の重要さが増している。これから世界におけるイランの影響力が広がっていくことは間違いないだろう。こんな時勢にここを訪れることができたのは幸いだった。勿論、国の表面をさらりとみただけで、社会の内部に根を下ろす問題などには触れることなどできなかったが、それでもイランはまたぜひ訪れたい場所のひとつになった。

だけどビールがないのと(ノンアルコールはどこでも手に入る)、あまりに魅力的な特産品が多くて財布のヒモを固くしめておくのが難しいのが玉に瑕かな。今回も、4日分の撮影で稼いだ金が、出国前にすべて一枚のカーペットになって消えてしまったし…。

(もっと写真をみる http://www.kunitakahashi.com/blog/2014/06/24/a-thought-in-iran/
(この記事はヤフーニュースブログにも掲載してあります)

最新の画像もっと見る

コメントを投稿