今週から週刊で、前週に読んだ本や観た映画のこと、思いついたことなどを君に書こうと思います。難しい漢字や表現もあるかもしれませんが、それは自分で調べたり私に尋ねたりして、わかるようにして下さい。必ずしも返事は必要ありません。言いたいことがあるときだけメールを下さい。
夏休みも残すところ1週間です。宿題の進捗はいかがですか? 「休み」というくらいですから、休めばよいのですが、学校というところはそれだけでは済ませてくれないようです。やらなければならないことがあるなら、そうしたことを確実に片付けましょう。
先週も暑い日が続きましたが、それでも、なんとなく暑さが峠を越えたような気がします。身体が暑さに慣れた所為もあるのかもしれませんが、2週間ほど前の情け容赦無い暑さに比べると、すこししのぎ易くなったように思います。尤も、こうした気候の緩急も身体にとってはストレスになるので、健康管理には気をつけたいものです。栄養のバランスと水分補給に気を配りましょう。
先週は、暑さが和らいだ所為か、読書もはかどり小林秀雄全作品23巻「考えるヒント(上)」、大塚初重・五木寛之「弱き者の生き方」、小池昌代「タタド」を読了しました。
「考えるヒント」は文系の大学受験生なら誰もが知っている本で、当然、私も受験生当時に読んだはずなのですが、内容に関しては全く記憶に残っていませんでした。今になって改めて読んでみると、これは高校生にはかなり難解だったのではないかと思います。語り口は平易で論理構成が明快なので現代国語の教材には良いのかもしれません。しかし、その内容はある程度人生経験を積んで、人の世の機微に通じてみないことにはわからないことや、古典についての知識が無いと何を言っているのかさっぱりわからないところが多いと思いました。今は読めば読むほど、タイトルの通り考えさせられることが多く、手元に置いて舐めるようにことあるごとに読んでみたいと思うようになりました。
「弱き者」は考古学者の大塚と作家の五木の対談です。内容は戦争体験。あの戦争の現場に本当は何があったのか、どのようなことをして生き延びてきたのか、その告白あるいは懺悔のようなことが書かれています。改めて、人間の業の深さのようなものを感じると同時に、生きるということはどういうことなのか、考えさせられました。しかし、自分のなかにあの戦争とは何だったのかという疑問が常にあり、それに答えるほどの内容ではありませんでした。
「タタド」は短編集です。表題作を含め3作品が収録されていますが、ストーリーよりも作品のなかに広がる世界を味わうタイプの小説です。表題作「タタド」はある50歳代の夫婦が海辺の別荘にそれぞれの友人を招いて会食をし、翌朝になって彼等の関係が「決壊」するという話です。主人公たちの年齢設定が物語全体の鍵だと思います。もし、もっと若く、例えば30歳代くらいだとしたら、単なる欲求不満解消の話にしかならないような気がします。それなりに生活を重ねてきた者どうしが、それぞれの時間を経て改めて交錯するところに、人間関係の不思議とか味わいのようなものを感じます。「波を待って」も中年夫婦の話ですが、普段と変わらないかのように見える日常のなかで、新たな生活の芽が現れ、それが不気味に膨張していくという、得も言えない不安の陰を感じさせる物語です。「45文字」は30歳前後の男性が主人公ですが、この話も過去と現在が交錯するというものです。人の記憶の中には、どうでもよいことなのに妙に印象に残っている人や物事があるものです。それらが、ふと、現在の生活のなかで思い起こされ、そのことに現在という時間が微妙に影響されるということは、あるかもしれないと思います。そんなことを読みながら考えました。
まだまだ暑い日は続くのでしょうが、季節は確実に移ろうものです。暑さが和らいだ頃に体調を崩し易くなるので、ご自愛下さい。