草若葉

シニアの俳句日記
 ~日々の俳句あり俳句談義あり、そして
折々の句会も

ことばを見つける/(ゆらぎ)

2013-08-27 | Weblog

処暑をすぎて暑さも一段落。青い空がひときわ高くなり、秋の風情です。さて九分九厘さんが、少しのあいだ休養中ということで、ピンチヒッターとして小文を投稿させて頂きます。


(俳句上達法)もう十年以上まえですが、歌人の小高賢さんが産経新聞に「短歌ワンポイント~ことばを見つける」というコラム記事を書いておられました。俳句にも共通するところがあると思いますので、ここに紹介します。

      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ”短歌は三十一音という限界がある。そのなかで何かを伝えなければならない。ありふれたことばを上手く組み合わせることにより、思いを巧みに表現できる場合もあるだろう。一方、いままで使われなかったことばの導入によって、新しい感情や気分を生むこともできる。
 
 よくものを観察しなさいといわれる。じっと見ているうちに必ず何かが生まれてくるはずともいう。これは世間に流布している教訓かも知れない。しかし、私にいわせれば、ほとんどでたらめに近いものいいだ。ことばが用意されていなければ、いくら対象を凝視したとしても、何も生まれないことは経験則としてみな知っていよう。もちろん観察も大事だ。しかし、それだけでは短歌は決して上手く作れない。ではどうすればいいのか。手始めにすることがある。ともかくことばを渉猟し、溜めることである。自分なりのことばの通帳をつくることである。

 頭陀袋抱えるようなさみしさのわれひとしずく雨後に透けたり ー梅内美華子

作品の面白さは「頭陀袋」を使った比喩の秀逸さにあるだろう。しかし、これは自分のさみしさを実感したとき、すっと出てきたことばだろうか。そうとは私には思えない。ことばの通帳に記載してあったものに違いない。つまり一首のために梅内は自分の預金のなかの名詞をひとつおろした結果なのである。

 歌人はそれぞれに自分の通帳を持っていて、残高がなくならないようにいつも注意している。新聞・テレビ・小説・俳句・詩。古典まで、ことばを豊かに収集しておくのも短歌上達の道なのである。

     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 歌人高野公彦さんの歌集『天平の水煙』は、ことのほか気に入っている歌集ですが、その本のあとがきで、著者”日本の懐かしい言葉を意識しながら歌を詠んだ。懐かしい言葉とは、かつて古典とか諺(ことわざ)とか落語などに登場し、今滅びようとしている言葉のことである。このまま忘れ去られるのはもったいない、せめて私の歌集の中にとどめておきたい・・・”、と云っています。そのような言葉は、私にとっては「ことばの通帳」の中に記録してあります。

 あさぎ色の空、日の辻休み、飮食(おんじき)、和魂、天網は疎にして漏らし、蘭交、篭り居、匂ふ言葉、噂供養、水庫、さ丹(に)つらふ、崔花雨、香箸

 べにさしゆび、仄明かり、忘憂、花冷え(の酒)・・・・・・

 

 

 

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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
言葉 (龍峰)
2013-08-29 21:20:36
ゆらぎさん

ここで述べられている事は、俳句にも通じること、大だと思います。言葉の通帳は貴重です。小生も似たものを作りかけましたが、何回か挫折しております。必要性は痛く感じておりますが。そうこうしながら、年月は流れて行くのでしょう。今年こそ預金を増やしたいと思います。
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コメントほか (かつらたろう(桑本栄太郎))
2013-08-29 21:58:43
ゆらぎ様
処暑の日以来、すっかり秋めいて来ました。朝晩は窓を開けたままですと、肌寒さを覚え目覚めてしまう程ですね!!。ほんの一週間前まで連日37度~38度と猛烈な残暑であり、あれは一体何であったのか?と思うほどです。
さて今回はピンチ・ヒッターとの事でゆらぎ様より出された夏休みの宿題?古い言葉を自分なりに、調べてみました。良い勉強になりました。
パートⅠ
1、あさぎ色・・・藍色より薄く空色よりも濃く、昔新撰組の羽織に使われた色とも。・・・染色技術の昔から栄えた日本には驚くほどの色と表現言葉があります。
2、日の辻休み・・・日の辻とは正午の事。夏の暑い時季、昼食後の昼寝の事・・・嘗てゆらぎ様に句会にて教わりました。
3、飲食(おんじき)・・・食べる事と飲むこと・・従って食事の事
4、和魂・・・わこん・・・日本古来の良さを生かし、海外の良い所を取り入れる事、和魂洋才、和魂漢才などと使う
5、天網愜?々疎にして漏らさず・・・天の網は粗いようでも、どんな小さな悪事でも決して漏らすことは無い・・・どんな小さな悪事でもいつしかきっとばれる。
6、蘭交・・・らんこう・・・友人間の心からの交わり・・・乱交ではありませんョ。
7、篭り居・・・こもりい・・・読んで字の如く、引きこもりの事。
8、匂ふ言葉・・・色が鮮やかに色づく事。その言葉。
9、噂供養・・・うわさ供養・・不倫の後始末?もう一つ意味不明。
10、水庫・・・すいこ・・・ダムの事。
11、さ(丹)つらふ・・・赤く色づく事。嘗てゆらぎ様に句会にて教わりました。万葉語?
12、崔花雨・・・さいかあめ・・・春先に梅、桜などの花の開花を誘う雨の事。
13、香箸・・・こうばし・・・香道でお香をつまむ箸の事。
14、べにさしゆび・・・薬指の事・・・薬などを水でとく場合この指を医療用とした。そこから口紅をさす時の指へ。
15、仄明かり・・・ほのあかり・・・かすかな明かり。
16、忘憂・・・ぼうゆう・・・うさばらし、気晴らしの事。
17、花冷え(の酒)・・・日本酒を美味しく呑む
適温の呼び名の意味であり、素晴らしい表現の文。
=「冷やの場合」=
○みぞれ酒・・・0度
○雪冷え・・・・・5度
○花冷え・・・・・10度
○涼冷え・・・・・15度
=「燗の場合」
○日向燗(ひなたかん)・・・30度
○人肌・・・・・・・・・・・・・・・・35度
○ぬる燗・・・・・・・・・・・・・・・40度
○上燗・・・・・・・・・・・・・・・・・45度
○熱燗・・・・・・・・・・・・・・・・・50度
○飛び切り燗・・・・・・・・・・・・55度以上
宿題は以上です。又、後日正解をお願い!!します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パートⅡ
さて言葉の預金通帳に貯めなさいとの事ですが、日本語は古代神代語、その後の漢字導入、ひらがな、カタカナ、外来語と入り乱れ大変面白く、又相当難解のようですね?裏を返せば、それほどニュアンスの違う表現方法が日本語には沢山有ると言うことのようです。しかし、表記文字は適切なる表現でなければ、理解し難い場合が多々あるようです。こう言う例があります。東京から大阪に転勤になり、百貨店の外商担当の為、着任のあくる日から外回りに出ました。とある大阪市内の電車の停留所に「てんがちゃや」?と看板が出ていました。後で漢字表記をすれば「天下茶屋」と分り、なるほど秀吉の天下茶屋の由来なのかと理解できました。又、読みづらい漢字には必ず、ひらがな表記も必要のようです。例えば杭全(くまた)、放出(はなてん)、我孫子(あびこ)など。更に以前東京勤務の折は、埼玉県に居りましたが、アイヌ語の地名もありました。越生(おごせ)、越辺川(おっぺがわ)、武蔵嵐山(むさしらんざん)、新座市(にいざし)などなどです。又、地名の由来も大変楽しく吾が田舎は鳥取県ですが、古の職業集団名(鳥取部・・・ととりべ)から来ているようです。又、田舎ではお腹が空き、飢餓感を覚える事を「ひだるい」と言っていましたが、古語に「ひだるし」とあり、驚いた事があります。どうやら中央行政官が地方着任により齎したものと想われます。この様に、日本は人種、民族の坩堝とも言われ、日本語の由来は日本の歴史に由来し、古代ヨーロッパ、中国、韓国、南方など多岐にわたるようですね?。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パートⅢ
さて雑学を縷々述べましたが、今回は此処で俳句ではなく、短歌での相聞歌を三首試みます。

「つまどひの あさにありせば ゆくみちの
   ちぢにぬれをり あさのくさつゆ」

「さにづらふ いろにでづとも わがこひの
      とはのわかれぞ つらのくるしき」

「あおそうの まちやをあゆむ づだぶくろ
       ぎおんのまちの みちぞをかしき」

以上、おそまつでした。 


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ことばの通帳 (ゆらぎ)
2013-08-31 06:48:15
龍峰さん
 私自身も、ことばを気がついた時だけ拾うくらい。それもあちこちに書き知らし、メモがどこへ行ったか分からなくなっています。反省しています。エクセルの整理し、エバーノートなどのクラウドサービスにいれて置こうかなと思案しております。
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嬉しきコメントありがとうございます (ゆらぎ)
2013-08-31 16:59:13
たろう様
 この暑さにもめげず長文のコメントをお寄せ頂き、ありがとうございました。よく研究されましたね。感服いたしました。こうして詩歌について語り合えるのは、とても嬉しいことです。

 「日本の懐かしいことば」については、ほとんど正解ですね。あえていくつかのコメントをさせていただきます。「篭り居」ですが、与謝蕪村は、篭り居の詩人とも言われています。雪の日など、いや雪でなくとも終日家にいて句作に、絵作りに励んでいました。ひきこもり、とはニュアンスが異なります。「噂供養」ですが、高野の詠んだ歌は、”命日にあらねど歌人小野茂樹のソフトさ言ひて噂供養す”から、ご推察ください。

「蘭交」は、その通りです。拙ブログに背景を書いていますので、ご高覧ください。
 →http://blog.goo.ne.jp/rokuai57/s/%B6%E2%CD%F6%CA%ED

「天網は疎にして漏らし」は、その通りですが、高野の歌は、”天網は疎にして漏らし我はいま香月泰男の死の齢越ゆ」です。「花冷え」、美しい言葉ですね!


また鳥取県の名前の由来をご教示いただき、ありがとうございました。大変興味深く読ませていただきました。

 相聞歌拝見しました。こういうのを読まれると、なぜかいきいきしておられますね。感服いたしました。”さにづらふ”→”さにつらふ”でしょうか?
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コメント (四捨五入)
2013-09-01 09:42:19
ゆらぎさん

「言葉の通帳」興味深く読ませてもらいました。わたしも難しい言葉、面白い言葉に出会うと電子辞書を開いて意味を確認しています。しかし、メモしないのですぐ忘れてしまいます。若い人にはテキストを読んだだけでは頭に入らない。重要な事項はノートに筆記せよと繰り返し話していますが、本人が実行しないのはいただけません。
季語に限らず、それぞれの言葉には字面からは分らない雰囲気というか、環境のようなものが備わっており、これを理解することも大切と思っています。いうばかりで実行しなければ無意味なのですが、ゆらぎさんを手本にしたいと思います。
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お礼 (ゆらぎ)
2013-09-01 17:29:16
四捨五入様
 お目通しいただきありがとうございました。「ことばの通帳j」、ぜひ持ちたいものです。小生の場合、この「草若葉」のほかに、2本ほどプライベートなブログを持っています。そのひとつは詩歌日記と題し、好きな歌(短歌、俳句、詩)を書き込んでいます。印象に残る歌は、ある意味での「ことばの通帳」として、そこへメモしています。

9月の投句を鶴首しております。
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