性や麻薬にみる欲求の抑制・無抑制

2015年08月14日 | 中庸としての節制(節制論5)

5-1-4-4. 性や麻薬にみる欲求の抑制・無抑制
 食では、快楽でないもの、美味でないものも、それどころか嘔吐しそうな不快なものも必要な栄養ならと摂取する。だが、性の営みは、快楽にならないのであれば、すすんでこれに関わることはない。飲酒も同様で、これを不快とする下戸は、飲酒欲求をもたない。飲酒する者は、これを快楽としている者である。
 食では、摂取の促進・抑制・無抑制は、複雑である。砂糖ひとつとっても、他の食品との組み合わせ次第で、これを無抑制にとどめることもあれば、抑制の筆頭にあげる場合も出てくる。だが、性欲の場合は、きわめて単純である。夫婦の間なら、原則、無抑制・促進になる。かつそれ以外の相手については、全面的に抑制して禁じることを節制は求める(食でも、自分のお膳やトレイに載せたものだけに限定して、よそのお膳からとるのは、ご法度・禁止ということで、性的節制と同様の方式をとることもある)。
 飲酒(酩酊)の快楽は、美酒も安酒もまったく同一で、性の快楽の有り方に似ている。性の快楽享受においては、さらに、どんな場合も同一量の快楽にとどまり量的には調整はできず無抑制になるが(つねに、自分の作り出す同量の快楽、つまり男子なら射精の絶頂感で、放尿の快楽とちがい中断できるほどの持続性はない)、酒の酩酊の快楽は、その摂取量で、ほろ酔いから泥酔までの違いがでる。その点での分量の抑制をし、快楽(酩酊)の回数を抑制するのが節酒である。

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