忍耐における根性

2018年03月09日 | 忍耐論1(忍耐の倫理的な位置)

1-5-6. 忍耐における根性
 叩かれても叩かれてもへこたれず、苦痛に耐えて、普通なら断念して引き下がるものをそうせず、ねばり強く耐え忍んで目的へとひたすらになる姿勢がある。「根性」といわれる、忍耐を強力に支える心身の態勢である。 
 根性は、それの働く場面とひとにより評価の違いが目立つが、忍耐における根性は、高く評価されるのが普通であろう。忍耐を支える根性とは、風雪に耐えてねばる根っこのように、苦難に遭遇してもこれに屈さず諦めることなく人一倍辛抱のできる、経験によって身につけた能力である。受苦への忍耐経験の反復のなかで、苦痛に耐える意志を巧みに働かせ、そのための神経回路を大きくしたり、そのための気力や覇気を高めるような脳内外のホルモン分泌も適応させて、ひとは、根性といわれる不撓不屈の優れた心身の構えをつくり出すことができる。
 耳を動かすことは、まずないだろうが、これがどうしても必要となったら、その努力をする。耳を動かす随意の筋肉があっても使うことがないから、意志しても、はじめはほとんど動かない。だが、これを辛抱して訓練していると、だんだん自分の意志の命令をきかせることができるようになる。そうなるようにと経験を重ねることで、犬ほどうまくはならないとしても、これが上手になっていくことであろう。忍耐の反復は、苦痛からの逃走衝動などを抑制するための意志を堅固にするようにと人を変えていく。よりよく苦痛甘受を制御できるようになり、辛苦に強い根性が培われていく。さらに苦痛に挑戦するための気力・やる気を高め、これを持続させる脳内外のホルモン(ドーパミンなど)をより分泌しやすい状態に経験の反復はもっていくことでもあろう。そういう根性をもった心身の態勢を経験の反復は作っていく。