6月21日発売の『航空ファン』8月号では表紙と巻頭で
『トップガン マーヴェリック』の撮影にも使用されたF/A-18Fと、
本家トップガン(NAWDC SFTIコース)のアドバーサリー機の編隊空撮を紹介していますが、
ここでは映画のネタバレにならない程度で、関連したマニアックな話題を少々。
本作のジャケットはCWU-36/P。VX-31のインシグニアにトップガンの卒業パッチと星条旗、ネームタグもトップガンの教官用(写真はイメージ)
1986年の前作『トップガン』では、主人公Maverick(演:トム・クルーズ)は
父の形見のG-1レザージャケットを劇中で着用しており、これが当時大流行しました。
しかしこのジャケットに縫い付けられたパッチがデタラメだったというのも、
マニアの間では有名な話。
そして大佐になったMaverickは、今回の『トップガン マーヴェリック』では
難燃素材ノーメックス製のCWU-36/Pジャケットを着用して登場します。
海軍機ファン、フライトジャケットファンからすれば、なぜこうなってしまったのだろうというG-1。でも当時レプリカがバカ売れしました…。
海外のパッチショップで入手したMaverickとGooseのネームタグ。色はVAW-110のパッチに合わせてあります。
前作ではMaverick/Gooseの所属していたVF-1もIceman/Sliderが所属していたVF-213も
映画オリジナルのインシグニアデザイン
(それぞれVAW-110とVFA-25をベースにしたもの)を採用していましたが
(ただしそのパッチはG-1には付いていませんでした)、
今回Maverickのジャケットの胸には、
試験飛行隊VX-31“Dust Devils”のインシグニアが縫い付けられています
(右腕にはもちろんトップガンの卒業パッチ)。
そういう意味では今回はホンモノらしいジャケットになっていますが、
VX-31と聞くと「トップガンなのになぜ試験飛行隊のジャケットなの?」と思う
詳しい方もいるでしょう。
しかしそこは、映画を見ていただければ「なるほど!」と納得いただける展開が
用意されています。
ジャケットがCWU-36/Pとなるのと同時に、バイクもGPZからニンジャH2へと世代交代します。
また、Maverickのもとで極秘ミッションのために訓練を積む
若きトップガン学生(卒業生)のエビエーターたちも、
各部隊から集まってきたという設定でそれぞれに違う実在の部隊のパッチを胸に付けています。
ただ、スーパーホーネットの飛行隊がそろっているなかで、
PaybackはF-35CのFRS(艦隊即応飛行隊)VFA-125の、
BOBは1995年に解散したF-14飛行隊VF-51(パッチは「VFA-51」に変更されています)の
所属となっているあたり、なにか意味があるのか、興味をそそられます。
また映画の冒頭部分では、カワサキ・ニンジャGPZとともに前作のG-1がアイコニックに登場、
オールドファンを喜ばせてくれます。
しかしこのG-1、公開前にはとあることで物議をかもしました。
前述のとおり、このG-1は同じ海軍のファイターパイロットだった父親の形見という設定で、
縫い付けられたいろいろなパッチのうち、背中には父の経歴を示すと思われる
アメリカ・国連・日本・台湾の国旗をあしらった1963~64年のクルーズパッチ
(ただしこのパッチには駆逐艦の名前が入っており、
パイロットのフライトジャケットには不釣り合いなものでしたが…)が付いていました。
それが撮影・編集を終えた2019年ころにリリースされたポスターや一部の映像では、
そのパッチのデザインが変わり、日の丸と台湾の青天白日旗がなくなっていたのです。
これはおそらく、昨今のハリウッド映画とは切っても切り離せない
中国資本の援助を勘案しての忖度だったのだろうといわれており、
日本の一部のファンの間ではこれを痛烈に批判する声も上がりました。
ただ、映画のスタッフも単に日本と台湾のパッチを外したということではないことが、
替わりに貼られたパッチからも分かります。
そのパッチはVF-1のインシグニアとトムキャットマークが付け足され、
Maverickが3機を撃墜した1985~86年のクルーズのものになっているのです。
つまり、Maverickはこの30数年の間に、
父の形見のジャケットのパッチを一部アレンジしたということで、
前作でトムキャットのパッチなども貼られていたことを考えれば、
彼がパッチを付け替えるのもなんら不思議ではない展開なのです。
とはいえ、本作で登場するG-1、最終的には1986年公開時のままで、
スクリーンに映し出されますので、ご安心ください。
背中のクルーズパッチが一部の嫌中派の人を中心に物議をかもしましたが、私としてはそれ以前の問題だった気もしますし、落としどころはよかったと思うのですが。
なお、このG-1のデタラメパッチですが、海軍パッチ大好きな編集部神野は、
ウィリアム・ホールデン主演の朝鮮戦争を題材にした1954年の映画
『トコリの橋』の衣装として用意されたG-1がベースになっていると考察しています
(一部のパッチが同作品に登場するG-1と重複しているのです)。
同じ海軍の空母パイロットを扱う映画なので、
パラマウントの衣装倉庫から発見されたものを使おうと思ったのでは、という推測ですが、
ただ、比較的シンプルなそのジャケットにスタイリストが物足りなさを感じ、
色合いやデザインだけで余計なパッチを縫い付けてしまって出来上がったのが、
あのMaverick G-1なのではないかと思っています。 (神野)