現在発売中の『航空ファン』8月号では表紙で集合写真、
巻頭で国立競技場ファイナルでの展示飛行と、ブルーインパルスを
2大特集のひとつに据えてご紹介しています。
松島での取材は、誌面でも触れているとおり国立のフライトの週に
行ないましたが、滞在中は残念ながらシーフォグが多く、
飛行訓練はほとんど実施されませんでした。
とはいえ、そういうときだからこそ、隊員に話をうかがったり
さまざまな部分を取材するチャンスです。
まずは3月から運用を再開したブルーパッド。
津波対策で、先の東日本大震災クラスの災害となっても水没しないよう、
通称「ブルーパッド」と呼ばれるエプロンと専用格納庫が
3.6mもかさ上げされました。
こうしてハンガーから引き出される姿を見ると普通ですが、じつは…
エプロンとハンガーの高さは駐輪場の屋根より高いのです。
写真の左には第11飛行隊の隊舎が以前のままの状態で建っていますが、
2階にある飛行班のブリーフィングルームの窓からは、エプロンが
通常の目線の高さで見えるという不思議な感覚です。
さて、そんな飛行隊のなかで、この春からブルーに加わったパイロット
3名にも会って話をうかがいました。詳細は誌面でお伝えしたとおりですが、
そこで紹介できなかった話なども少々。
上から編隊長要員春山維彦3佐、5番機要員園田健二1尉、総括班長會田昭彦3佐です。
春山維彦3佐はF-15パイロットとしてのキャリアが長く、第305飛行隊などでの
勤務経験があり、前職は第1航空団のT-4の飛行教官。難しいお名前ですが
「これひこ」と読むそうで、TACネームはSUIT。由来をうかがったところ、
予想どおり「スーツのはるやま」から来てるそうです。
ちなみに以前5番機要員だった井川3佐とは同期で、百里でも浜松でも
一緒に勤務した、気心知れた仲間だそうです。
5番機要員の園田健二1尉は第301飛行隊と第13飛行教育団での勤務経験がある
ファントムライダー。TACネームはEDEN、もちろん名字と引っかけて
「エデンの園」ってことですね。スラッとした長身、甘いマスクで
これからは固定ファンも増えそうですが「ORになるまではとにかく
精進して技術の習得に励みますが、航空祭で皆さんと話をするのも
大事な仕事だと思っていますし、楽しみです」とのことです。
失礼ながら紹介は最後になってしまったものの、総括班長の會田昭彦3佐は
飛行隊では最年長。いわゆる展示パイロットではありませんが、
展示飛行で後席に搭乗することもありますし、部隊の活動の根幹を支える
総括班を取り仕切る大事なポストです。華やかなブルーにあって
細かな書類仕事も多い業務ですが、展示飛行が安全、円滑に行なえるよう、
飛行隊を支えています。ちなみにTACネームは名前からとってAKI。
名字は「あいた」と読みますが、「會」は「会」の旧字。
「自衛隊に入るまでこの漢字を使うことはありませんでしたが、自衛隊では
戸籍にもとづく表記が定められているもので…」とのこと。じつは、自衛隊には
次期飛行隊長の日高大作2佐(実際には「高」ではなく、上の部分が
つながっている通称「はしご」と呼ばれる字)や、現統合幕僚長の
岩崎 茂空将(同じく実際は「崎」ではなく「大」の部分が「立」)など、
常用漢字ではないためPCなどで対応していない漢字のお名前の隊員が
少なからずいて、編集でも意外と苦労しています。
なお、會田3佐も第302飛行隊在籍が長かったファントムライダー。
現在のブルーには日高2佐、立山(雄一)1尉、園田1尉、會田3佐と
4名もファントム出身者が在籍しています。
取材日2日目の翌日、5月30日には国立での事前訓練のために入間移動を
控えていたメンバーは、飛行訓練がキャンセルとなった分地図での
地形慣熟イメージトレーニングなどに明け暮れていましたが、
じつは移動日もシーフォグの予報が出ており、支援のC-1が松島に
着陸できなかった場合に、事前訓練までに地上統制班と機材を
どうやって国立競技場まで運ぶかなど、万一の計画・調整が
大変そうでした。
結局、C-1は無事運航され、事前訓練も31日の本番も快晴のもと
大成功となりました。
高度2,000ftは通常の展示飛行の4倍近い高度となり、
それはそれで目標の確認など難しいことがあったり、
見慣れたファンからは「高い」との意見もありましたが、
結果としては都内のさまざまなところからスモークを曳き
編隊で飛ぶブルーを見ることができ、大きな話題となったのは
大成功だったといえるのではないでしょうか。
既定の4パスを終えて入間へ帰投を始めてからも、6機のT-4は
ワイドデルタ隊形を保持してスモークを曳き続けました。そのため
入間に着陸した6機のスモークタンクは見事にカラだったそうです。
さて、ブルー関連といえば、2月の石巻公開から各地での上映が
続くブルーと東日本大震災のドキュメンタリー映画
バナプル制作の『絆 再びの空へ―ブルーインパルス』ですが、
先ごろ東北六魂祭で飛んで話題となった山形市でも
7月5日から上映が決定しました。
東北地方の皆さん、ぜひ大スクリーンを通じて、震災に立ち向かい
いまも全国でその勇姿を見せているブルーをご覧ください。
なお、公開初日となる5日には、来場者へのスペシャルプレゼントも
あるそうです。
山形県山形市
ソラリス TEL:023-674-0035
梅雨の時期、ブルーの展示飛行も一休みですが、次は
7月20日、北海道札幌市の丘珠航空ページェントへの参加が
予定されています。
また、10月12日には長崎県諫早市で国体の開会式での展示飛行も
決定しましたので、ご注目を。 (神野)