元気な高齢者こそ使いたい電子機器

80歳を過ぎても、日々の生活を楽しく豊かにする電子機器を使いこなそう

トランプの快進撃の秘密をえぐる、ジャーナリスト長野美穂 氏の好レポート。

2016年03月14日 14時11分18秒 | 日記
 共和党トランプ候補の快進撃で、ひょっとすると米国大統領になるかもしれないという危惧が、かなりの信ぴょう性を帯び始めている。

 筆者もそうあって欲しくはないと思っているが、ジャーナリストの長野美穂氏のレポートを読むと、現代のアメリカが抱えている問題を、書き出してくれている。

 金融経済が主流のアメリカ経済でありながら、アメリカ国民の生活は従来通りの実物経済の中で生きている現実がある。

 膨大なレバレッジを生かした金融商品の世界での損得は、一般庶民には関係のない世界で、彼らの生活水準はじりじりと悪化している。

 日本人には当然のように受け入れている国民健康保険制度が確立していなかった米国で、ようやくオバマケアが広がりつつあるが、これがレストラン業界などでは、パート人件費の高騰やレストラン経営者の経営難などと、民主党の政策に不満を持つ人々が多いという。

 長野美穂 氏のレポートは、個々人の意見を聞き出しているだけに、世論調査などの数字は出てこない。

 しかし本当に景気が良いアメリカであるならば、トランプ支持者のような白人の不満層は、ごく少ないと思うのだが、これだけ根強い支持者があり、一方の民主党もバーニー・サンダース候補が、クリントン女史に肉薄している現実を見ると、生活に不満と不安を持つ米国人の層の厚さに、いまさらながら驚くのだ。

 長野美穂氏のレポートは少々長いが、米国の現状の核心をついているレポートであると、筆者は興味深く読ませてもらった。

(ダイヤモンド・オンラインより貼り付け)

トランプはなぜ勝ち続けるのか?
米国民の本音を現地で徹底調査
長野美穂
2016年3月14日

 トランプ旋風が止まらない。このままいけば、「トランプ大統領」が誕生する可能性すら出てきた。米国民はなぜ彼を支持するのか。 

 3月1日に行われたアメリカ大統領選における最大の地方予備選挙、スーパーチューズデイで圧勝したドナルド・トランプ氏。その過激な発言に賛否両論が飛び交い、ついに最新の民主党公開テレビディベートでは、「トランプ氏はレイシストか?答えてほしい」という質問が、ヒラリー・クリントン候補に直接ぶつけられた。共和党内部のエリート層は慌てて「トランプを止めろ」運動に血道を上げるが、「トランプフィーバー」はすでに一大社会現象に育ってしまった。

 トランプ氏の「大統領の資質」が取り沙汰されるなか、不安を抱く日本人も多い。同盟国である日本にとって、新大統領が打ち出す経済、外交、安全保障政策の影響は計り知れないからだ。彼はなぜこれほどの注目候補になれたのか。「トランプ派」「反トランプ派」の両方に現地で聞き込み取材を行ない、彼らの本音を徹底的に探った。(取材・文/ジャーナリスト 長野美穂、本文中敬称略)

●「トランプ大統領」を求める
米国民の知られざる声

「私、トランプがテレビでは見せない、ソフトで人間的な面を実際に見たことがあるの」

 そう語るのは、カリフォルニア州クレアモントに住むジュディ・ニール(68歳)だ。

 地元の共和党クラブの長を務める彼女のイチオシはテッド・クルーズ候補だが、トランプがもし共和党の指名を受ければ「100%のエネルギーを注いでトランプを大統領にする」と断言する。ニールは、違法移民によって殺害されたアメリカ市民を追悼する会「We The People Rising」の集会でワシントンDCを訪れたとき、トランプに初めて会った。

「ギャング活動や飲酒運転する違法移民に殺された市民が、実は全米にたくさんいるんです。そんな犠牲者を追悼するキルトを縫って展示していたら、トランプが『これは何?』と近づいてきたの」

 トランプは犠牲者の家族に歩み寄り、キルトを手に取り、彼らの話に耳を傾けたという。

 「アメリカの大メディアは、違法移民の権利を保護拡大するための報道にはすごく熱心。でも、違法移民に命を奪われた犠牲者の家族の苦しみにスポットライトを当てることは、ほとんどない。トランプは、オバマ政権にも無視されているそんな声をちゃんと聞いてくれた」

●イスラム教徒の入国阻止を支持
テロの記憶に今も怯える60代女性

 カリフォルニアで生まれ育った彼女が住む街は、昨年12月、14人が射殺されるテロ事件が起こったサンバーナディーノ地区から車で40分ほどの場所にある。地元民の間には、近くで起きたテロのショックがまだ色濃く残る。「パキスタンから来た“妻”に影響されてジハードを計画した人間が、次々と罪もない市民を殺した」とニールは言う。

 事件以来、彼女にとって、IS(通称イスラム国)はもはや、遠いシリアの話ではなくなった。街にあるイスラム教のモスクがFBIのウオッチリストに載っているという噂を聞くたび、「もしかしたら、次のテロに向けて信徒の洗脳が進んでいるかもしれない」と想像するだけで恐怖だという。

「移民でイスラム教徒の一家がウチの近くに住んでいるけど、彼らだってテロが怖いと言っている。テロリストが普通のイスラム教徒のふりをして入国してきたら見分けがつかない。人道主義を振りかざして外国人を入国させるのはいいけど、次に殺されるのが私の家族ではないという保証は一体誰がしてくれるの?」

 そんな彼女は、トランプの「イスラム教徒を米国に入国させるな」という発言を支持するという。

「宗教を差別するつもりはない。米国は宗教の自由が建国の源だから。でもイスラム過激派のテロリストが入国できてしまう現在のシステムは、危険すぎる」

 ニールは自宅に拳銃を常に配備し、射撃訓練も受けてきた。特にテロ後は、万一のことも考えて、子どもたちや家族を誘って射撃練習場で練習するようになった。拳銃を携帯するための州の許可も申請中だ。

「私は13人の孫がいるおばあちゃんだけど、射撃の腕はちょっとしたもの。銃を所有していることに、大きなプライドを感じているわよ」

 彼女が共和党の活動に積極的に関わるようになったきっかけは、2008年のリーマンショックの最中、共和党の議員の無策な対応に我慢ができなかったからだという。

「オバマがAIGや銀行に巨額の税金を注ぎ込んで救済する中、倒産していく中小企業には何の援助もなかった。それを共和党議員たちは黙って見ているだけ。情けなかった」

 共和党エスタブリッシュメント――。これは、彼女が何度も口にした言葉だ。共和党の権力中枢、エリート層を指す。そのエスタブリッシュメントに愛想を尽かした彼女は、スモールビジネスの税制優遇措置の拡大を求めて、地元でティーパーティを立ち上げる活動にも積極的に関わってきた。彼女と夫が経営する建設会社は不況の煽りを受け、収入も減った。

「リーマン不況の元凶を防げなかった大統領のブッシュにも怒りを感じたけど、オバマ政権になってその10倍悪くなった」

 自らを筋金入りの保守派だと言うニール。だが、10代の頃、投票したかったのは民主党のジョン・F・ケネディだった。

「すごくハンサムだったから」

 選挙権を得てからは、一貫して共和党候補に投票してきた。なかでも彼女の永遠の憧れは、レーガン前大統領だ。ロサンゼルス郡の警官だった彼女の父親が、レーガンの警備に当たったときに使った車のライセンスプレートは家宝として大切に取ってある。

 ある世論調査では、アメリカ人有権者の約半数が「もしトランプが大統領になったら恥ずかしいと思う」と回答したという。これをどう思うかについて聞いてみると、ニールは「ヒラリーが大統領になる方がよっぽど恥ずべきことだ」と断言する。

「トランプはナルシストで、傲慢だけど、決してマヌケではない。必ず賢い人間を要職に抜擢するはず。ヒラリーはリビアの米国人大使を見殺しにしたし、とにかく嘘つきだから決して信用できない」


●徴兵制が復活され戦争に突入?
弁護士が恐れるトランプの人心掌握術

 一方、ロサンゼルス郊外、エルモンテ市の弁護士、デイビッド・ゴンデックは、トランプの支持率の高さを「人々の心に恐怖をかき立てることで得た人気。そこが怖い」と見る。

 民主党のヒラリー・クリントン候補を支持する彼は、「国境に壁を立ててその費用はメキシコに払わせろ」「イスラム教徒を国に入れるな」という一連のトランプ発言に油を注いできたのは、共和党が暗黙の了解で米国民にふりまいた「無知はいいことだ」という価値観そのものではないかという。

「アメリカが世界の中心で、最強で、世界の複雑に絡み合った難問をシンプルな解決策で解決できると思っている無知さが、トランプ人気を支える基盤だ。昔、ナンシー・レーガンが、ドラッグ中毒の問題を解決するには『ドラッグを薦められてもNOと言えばそれで解決でしょ』と言ったのは有名だ。ドラッグ中毒者がそもそも中毒になってしまった社会的背景、その他の理由を考えれば、そんなに簡単に解決できる問題ではないことは明らかなのに」

「ビジネスの場では利益を生むために、効率と生産性が重視される。でも、政治で最も大切なのはフェアであることだ。効率だけで考えれば、ムッソリーニもヒトラーも非常に効率的な政治をやっていた。トランプはフェアという理念を理解し、実践する経験値が少なすぎる」

 もしトランプが大統領になったら、具体的に何が起きると思うかについて聞いてみた。

「戦争に突入したり、徴兵制度も復活しかねない可能性もある。恐怖を煽ってコントロールする政治になると思う」

 ゴンデックは現在60代半ば。両親が共和党支持者という家庭で育った。医師だった父親は、20年前に亡くなる直前には民主党寄りになり、「国民皆健康保険が必要だろう」という意見に傾いていた。一方母は、右派でタカ派のラジオ・トークショーホストのラッシュ・リンボーのファンで、一貫して保守派だ。

 そんな環境で育った彼が民主党支持者になったのは、14歳のときジョージ・オーウェルの小説『1984年』を読んで『戦争は平和である』や『無知は力である』というスローガンを掲げる社会の実現だけは、何としても防がなければ、と決意したことがきっかけだった。

●「モラルがないから貧困に陥った」
共和党が振り撒く暗黙のメッセージ

 ゴンデックが幼い頃からずっと違和感を感じてきた共和党の価値観の1つは、「貧困」をモラル的に間違ったことをした自己責任の結果だ、と判断する態度だったという。「神的、倫理的に見て正しい行いをしていないから、貧困層から脱却できないのだ」という暗黙のメッセージが我慢できなかったと彼は言う。

「トランプの圧倒的な資産は、金持ちになりたい、儲けたいという人間の欲を全肯定するツールとして使われている。これは職業政治家のテッド・クルーズやマーク・ルビオが使えないカードだけに、トランプの独壇場だ。だが、カジノ経営にすら失敗してきたような手腕で、政治の経験もなく、大統領になってから策を考えれば何とかなるという、行き当たりばったり思考は危険すぎる」

 カリフォルニアで起きたテロ事件については、同州住民として、ゴンデックはこう語る。

「テロを起こすのはイスラム教徒の外国人だけじゃない。今回のテロも主犯は米国で育った米国人だった。オクラホマの連邦政府ビルを爆破したティモシー・マクベイも米国人だった。テロが起きたからと言って、イスラム教徒を全て締め出せという短絡さは、差別を生むだけだ」

 近所のスーパーのレジなどで、オバマ批判やトランプ支持を口にする客がいると、ゴンデックはつい話しかけて議論をしてしまうという。

 選挙権を得てからは、一貫して共和党候補に投票してきた。なかでも彼女の永遠の憧れは、レーガン前大統領だ。ロサンゼルス郡の警官だった彼女の父親が、レーガンの警備に当たったときに使った車のライセンスプレートは家宝として大切に取ってある。

 ある世論調査では、アメリカ人有権者の約半数が「もしトランプが大統領になったら恥ずかしいと思う」と回答したという。これをどう思うかについて聞いてみると、ニールは「ヒラリーが大統領になる方がよっぽど恥ずべきことだ」と断言する。

「トランプはナルシストで、傲慢だけど、決してマヌケではない。必ず賢い人間を要職に抜擢するはず。ヒラリーはリビアの米国人大使を見殺しにしたし、とにかく嘘つきだから決して信用できない」


●徴兵制が復活され戦争に突入?
弁護士が恐れるトランプの人心掌握術

 一方、ロサンゼルス郊外、エルモンテ市の弁護士、デイビッド・ゴンデックは、トランプの支持率の高さを「人々の心に恐怖をかき立てることで得た人気。そこが怖い」と見る。

 民主党のヒラリー・クリントン候補を支持する彼は、「国境に壁を立ててその費用はメキシコに払わせろ」「イスラム教徒を国に入れるな」という一連のトランプ発言に油を注いできたのは、共和党が暗黙の了解で米国民にふりまいた「無知はいいことだ」という価値観そのものではないかという。

「アメリカが世界の中心で、最強で、世界の複雑に絡み合った難問をシンプルな解決策で解決できると思っている無知さが、トランプ人気を支える基盤だ。昔、ナンシー・レーガンが、ドラッグ中毒の問題を解決するには『ドラッグを薦められてもNOと言えばそれで解決でしょ』と言ったのは有名だ。ドラッグ中毒者がそもそも中毒になってしまった社会的背景、その他の理由を考えれば、そんなに簡単に解決できる問題ではないことは明らかなのに」

 ゴンデックは、ビジネスマンとしてのトランプの手腕を、そのまま政治の場で発揮できると思う有権者が多いことが危ないと指摘する。

「ビジネスの場では利益を生むために、効率と生産性が重視される。でも、政治で最も大切なのはフェアであることだ。効率だけで考えれば、ムッソリーニもヒトラーも非常に効率的な政治をやっていた。トランプはフェアという理念を理解し、実践する経験値が少なすぎる」

 もしトランプが大統領になったら、具体的に何が起きると思うかについて聞いてみた。

「戦争に突入したり、徴兵制度も復活しかねない可能性もある。恐怖を煽ってコントロールする政治になると思う」

 ゴンデックは現在60代半ば。両親が共和党支持者という家庭で育った。医師だった父親は、20年前に亡くなる直前には民主党寄りになり、「国民皆健康保険が必要だろう」という意見に傾いていた。一方母は、右派でタカ派のラジオ・トークショーホストのラッシュ・リンボーのファンで、一貫して保守派だ。

 そんな環境で育った彼が民主党支持者になったのは、14歳のときジョージ・オーウェルの小説『1984年』を読んで『戦争は平和である』や『無知は力である』というスローガンを掲げる社会の実現だけは、何としても防がなければ、と決意したことがきっかけだった。

●「モラルがないから貧困に陥った」
共和党が振り撒く暗黙のメッセージ

 ゴンデックが幼い頃からずっと違和感を感じてきた共和党の価値観の1つは、「貧困」をモラル的に間違ったことをした自己責任の結果だ、と判断する態度だったという。「神的、倫理的に見て正しい行いをしていないから、貧困層から脱却できないのだ」という暗黙のメッセージが我慢できなかったと彼は言う。

「トランプの圧倒的な資産は、金持ちになりたい、儲けたいという人間の欲を全肯定するツールとして使われている。これは職業政治家のテッド・クルーズやマーク・ルビオが使えないカードだけに、トランプの独壇場だ。だが、カジノ経営にすら失敗してきたような手腕で、政治の経験もなく、大統領になってから策を考えれば何とかなるという、行き当たりばったり思考は危険すぎる」

 カリフォルニアで起きたテロ事件については、同州住民として、ゴンデックはこう語る。

「テロを起こすのはイスラム教徒の外国人だけじゃない。今回のテロも主犯は米国で育った米国人だった。オクラホマの連邦政府ビルを爆破したティモシー・マクベイも米国人だった。テロが起きたからと言って、イスラム教徒を全て締め出せという短絡さは、差別を生むだけだ」

 近所のスーパーのレジなどで、オバマ批判やトランプ支持を口にする客がいると、ゴンデックはつい話しかけて議論をしてしまうという。

「ヒラリーはバランスの取れた政策を打ち出せる大統領になると私は信じているし、それを説明すると、大抵相手は黙ってしまうけど」

 彼が危惧しているのは、トランプ支持を公言する層ではない。外では口には出さないが、実はトランプに投票するという、いわば、サイレントマジョリティのトランプ支持者だ。

「その多くが、年配の白人女性、つまり私の母やその友だちなんだ。メディアは怒れる白人男性ばかりをトランプ支持者と強調するけど、違う。たとえば、年配のアメリカ人白人女性の戦争に対する考え方は、第二世界大戦の戦火を生き抜いた同じ年代のドイツ人女性の考え方とは180度違うんだ。自分の住んでいる街が爆撃されず、自身が兵隊に取られることもなかった彼女たちは、戦争にそれほど嫌悪感を持っていない場合もある。つまり、テロの恐怖を使って、タカ派や右派が一番取り込みやすい層なんだよ」


●「オバマを継承するヒラリーはダメ
トランプが指名を得たら必ず勝たせる」

「オバマケアのせいで、LAのレストランがどんどん潰れてるんだ」

 カリフォルニア州、ロサンゼルス近郊のレドンド・ビーチに住むビル・シュミッドの声には怒りが籠もっていた。

 ロサンゼルス全域のレストランに食材を卸売りする会社でセールス担当として働く彼は、オバマケアが施行されてから、レストラン業界が大きな打撃を受けてきたと語る。レストラン業界では、週に30時間以上働く社員が、フルタイム社員とカウントされる。フルタイム社員を50人以上雇っている企業は、オバマケア施行後、社員に医療保険を提供することを義務づけられた。

 医療保険を提供しない場合には罰金が課せられる。そのため、多くのレストランがフルタイム社員を減らし、パートタイム社員を増やして保険を提供する義務を逃れるか、規定通りに社員に保険を提供して、そのコストを負担するという選択肢を迫られた。

「フルタイムのスタッフがパートタイムに格下げされ、収入が激減したケースを何度も見てきた。料理の価格を値上げして、客にオバマケアのコストを払わせる手もあるが、それをやれば当然、値上げしない店に客をごっそり取られてしまう」とシュミッドは言う。

 さらに、ロサンゼルスの最低時給は2020年までに9ドルから15ドルへと段階的に引き上げられる。これもレストランオーナーにとっては、頭の痛いコスト増となるため、人員削減をせざる得ない企業が増える。「オバマの社会主義は、レストランオーナーも労働者も幸せにしないどころか、彼らの将来を潰そうとしているとしか思えない」とシュミッドは言う。

 共和党員の彼が支持するのは、テッド・クルーズだ。だが、トランプが共和党の指名を勝ち取れば、トランプに投票して必ず勝たせる、と答えた。

「オバマケアに代表されるような社会主義を継承するヒラリーだけは、絶対に大統領にしてはいけない」

 ロサンゼルスのレストラン業界で働くスタッフには、メキシコ系や南米系の移民も多い。トランプが、メキシコからの違法移民に「犯罪者」のレッテルを貼り、ヒスパニック系の有権者から批判を浴びていることをどう思うか聞いてみた。

「あの発言は確かに決めつけすぎだったとは思う。でも、違法移民には決して米国市民になる権利を与えるべきじゃない」

●子どもでも理解できる
発言のわかりやすさが最大のウリ

 シュミッドがクルーズとトランプを押すのは、不法移民には救済策を決して与えないと彼らが強調する点に共鳴するからだ。「その点、穏健派のマルコ・ルビオでは弱い。トランプの発言のわかりやすさ、シンプルさ、それが彼の最大のウリだ」という。

「トランプの言うことは13歳の少年でも完璧にわかるような内容ばかり。誰でも理解でき、単純だ。だがその単純さに、多くの人間が心地良さを感じていることは否定できない」

 ジェブ・ブッシュが低い支持率しか取れず、戦線離脱したことについては、「共和党のエリート家系の出であれだけ惨敗したことが、国民はエスタブリッシュメントをもう求めていないことの証明だ」という。

 現在73歳で現役で働くシュミッドにとって、生涯現役でビジネスに邁進することは当たり前のことだ。今ではLA中のレストランに友人がいるし、働くのが心底好きだと言う。

「リーマンショックで自分が持っていた株券の価値は半分になった。たまたま株以外でもコツコツ資産を形成してきたから、何とかなったけど、自分と同年代の友人の多くは引退を撤回して、再び働いている。そうしないと生活できないから」

 スモールビジネス推進派の彼は、米国のGDP(国民総生産)の成長率が2%台で停滞している元凶は、オバマ政権のビジネスへの規制の厳しさのせいだという。

「本来なら6%から8%の伸びを見せてなきゃいけないのに、こんな低い成長率なんてあり得ない失敗だ。企業のCEOだったらとっくにクビになってるよ」

 実業家のトランプならば、いくら政治の経験がなくても、こんな経済状況には決してしないとシュミッドは言う。

 少額の献金を有権者から幅広く集めて4000万ドル以上の選挙資金を集めることに成功したサンダースは、企業や投資家などから大口献金を受け取っているクリントンと比べて、好感が持てるとベイツは言う。

「アメリカ人は自分の国が他国からどう見られているのか、もっと意識するべき。トランプを倒すために、最終的にヒラリーを支持しなければならないなら、それは仕方なく受け入れる。でも、バーニーがトランプを打ち破ったら、どんなにスカッとするだろう」


●とてつもない金持ちになりたい
トランプは「富」のロールモデル

 カジノの街、ネバダ州ラスベガス――。「TRUMP」とロゴが入った金色のホテルがそびえる。

 合衆国の国旗をヘビーメタル風にアレンジしたファッションに長髪で現れたのは、ラスベガス在住の共和党員で、カメラマンのビクター・スネークマンだ。どくろマークの指輪をした手には、合衆国国旗の柄と共和党のシンボルマークであるゾウ柄のタトゥーが、色鮮かに彫り込まれている。


「トランプは富のロールモデル」と語る、カメラマンのビクター・スネークマン

 トランプ大統領が誕生する日を心待ちにしているという彼は、トランプを支持する理由をこう語った。

「自分もトランプみたいに、いつか大富豪になりたい。トランプが手に入れているものを自分も全部手に入れたい。彼はロールモデルなんだ。事業を成功させて、たくさんの雇用を作り出したい。そして、自分で稼いだ金を政府に使われたくない」

 とてつもない金持ちになりたい――。そんな欲望をストレートに語る彼にとって、金ピカのトランプホテルは憧れの象徴だ。トランプなら、レーガン時代のような「強く素晴らしいアメリカ」を取り戻してくれると信じているという。そんなスネークマンが一番恐れているのは、ヒラリーが大統領になることだという。

「彼女がアメリカを社会主義国にしようとするのも嫌だけど、一番問題なのは、彼女のテロ対策や安全保障対策が最悪だから。CIA長官だったペトレイアスがガールフレンドに機密を漏らしていた疑いで辞職に追い込まれたけど、ヒラリーはペトレイアス以上に機密保持が壊滅的にできない。ベンガジの米領事館襲撃事件で殺された4人のアメリカ人への責任も取っていない」

 そしてこう付け加えた。

「ISに殺されたくなければ、ヒラリーではなくトランプに票を入れるべきだ」

 3月8日、ミシガン、ミシシッピ、ハワイの3州でトランプが勝った。2位のテッド・クルーズとの差をじりじりと広げつつある。

(貼り付け終わり)