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国民年金資金運用(GPIF)の株式投資の功罪を考える。山崎 元 氏に学ぶ。

2016年02月17日 16時24分13秒 | 日記
 昨日のNYダウが222ドルも上昇したために、連動しやすい今日の日経平均株価は、精神的指標である16,000円台を十分維持するかと思っていたが、大引けの株価は15,836円  ▲218円の下落で終わっている。

 若干の円高傾向ではあったが、やはり世界的な金融不安が払拭されていない結果であろう。 明日以降の日経平均株価が大きく下落する可能性を、筆者は感じている。

 なぜならば、16,000円台を維持したいという安倍政権の強い希望で、今日も公的資金や日銀が買い進んだと思われるからである。

 しかし、大量の公的資金をつぎ込んでも、16,000円を割り込んで終わっている。

 おそらく、海外の投機ファンドなどは、次のボーダーライン15,000円や14,000円を切るのに向かっているのであろう。

 日本の公的資金の運用で話題になっているのが、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の存在だ。

 安倍政権の肝いりで、国債などの債券主体であった運用を、リスクの多い株式運用にシフトした。

 東京株式市場のような世界的には比較的小さな株式市場に、大量の公的資金が投入されたのであるから、クジラともあだ名され、日経平均株価の押し上げに大いに役だったのだが、20,000円を大きく下がる最近の日経平均株価で、大きな含み損を抱えているといわれている。

 もちろん売りに出されていないから、損失にはならない。しかしいざ、この巨大な資金を株式市場から引き上げるの、並大抵ではない。いくら株価が高い時であっても、大きな株価下落の要因になろう。

 もう一つとても大きな問題は、個々の企業の大株主にGPIFが、名を連れることになれば、民間企業経営者に政府の意志が強く働く可能性もあり、健全な経営ができなくなる危険性も考えられる。

 今日のダイヤモンド・オンラインに経済評論家の山崎 元氏が、わかりやすいGPIFの運用についての解説コラムを掲載されている。

 まあ、どう見ても巨大な資金で運用されるGPIFや日銀の株式購入などの、公的資金の介入は、健全な株式市場の運用に大きな歪を与えそうだ。 個人的にも年金資金の目減りの不安を感じざるを得ない。

(ダイヤモンド・オンラインより貼り付け)

GPIFに資産運用してもらうのは
国民にとって望ましいか?
山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
2016年2月17日

●国民はGPIFに1人当たり幾ら
運用してもらっているか

 金融市場の混乱で、GPIFの資産運用状況への関心も高まっている

 日本に数多の年金基金や運用機関があるにもかかわらず、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)ばかりが注目されて気の毒だが、金額が大きいので例に使わせてもらう。

 GPIFは昨年度第2四半期末(9月末)時点で135兆円の資産を運用している。日本の総人口を1億2700万人とすると、1人当たり106万円と少々のお金をGPIFに運用してもらっていることになる。

 ちなみに、マクロ経済や予算などの数字で「1兆円」という数字が出てきたら、ちょっと不正確だが1億2500万人で割って、「国民1人当たり8000円」と計算すればいい。4人家族なら、3万2000円だ。

 このパターンで考えると、厚労省的標準家庭(夫婦+子ども2人)の場合は、世帯として400万円以上預けていると考えるのがいいかもしれない。

 さて、世代により、支払った年金保険料により、実質的にGPIFの運用成果の影響を受ける度合いには大きな個人差がある。公的年金に加入していない国民も税金を通じて国民年金の一部を負担しているし、年金には各種の税制上のメリットがあるから、納税者は年金加入者のメリット分を分担して負担しているともいえる。

 ただし、所得の高いサラリーマンは、厚生年金を通じて、平均的な国民よりもずっと大きな利害を公的年金の運用に関して抱えていることになる。読者がサラリーマンなら、GPIFには、1人当たり106万円よりももっとずっと大きなお金を託していると考えていい。

 GPIFの運用の好不調は、現在の年金受給者に直ちに反映するわけではない。しかし、2月15日の国会答弁で安倍首相が「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する。給付に耐える状況にない場合は、給付で調整するしかない」と述べたように、GPIFの運用の成否は、年金の条件に影響してくる。

 GPIFの「基本ポートフォリオ」によると、135兆円の25%が「国内株式」で運用されることになっている。単純に計算すると、33兆7500億円だ。再び日本の総人口で割り算すると、1人26万5700円だ。株価が約3.7%上下すると、1人当たり1万円儲かったり、損をしたりすることになる。

 日経平均を1万6000円と考えると、ざっと600円の上下がこれに当たる。ついでに申し上げると、日本の株価が上がる時には、外国の株価も上がっている場合が多いし、為替レートも円安になっていることが多いので(因果関係は、外→内であることが多いが)、この倍くらいのインパクトを考えておくといい。

 読者の中には、株式にも投資信託にも投資されたことがない方もいらっしゃるだろうが、公的年金を通じて内外の株式市場や為替レートの変動が、ご自身の損得にこれだけ反映しているのだから、関心を持って、少しはドキドキしてみるのがいいかもしれない。

●「よしてくれ!」か「ありがたい」か
GPIFの運用で検討すべきポイント

 さて、GPIFによる運用の損得が自分にも及ぶことを考えると、「頼んだわけでもないのだから、よしてくれ!」と言いたい方がおられるかもしれない。他方、「自分で運用しなくても、GPIFが運用してくれるのだから、ありがたい!」と感じておられる方が存在する可能性もある。

 読者は、どちらだろうか?

 個人にとっては、投資信託でも買うようなものだが、検討すべきポイントが幾つかある。思いつくものを挙げてみよう。

(1)運用の上手・下手
(2)運用手数料の高低
(3)株主としての適性(議決権行使など)
(4)情報開示とコミュニケーション

●運用は上手くも下手でもない
ただしリスクテイクの大きさは疑問

 GPIFのような主体の運用判断には、幾つかのレベルがある。大まかに言うと、(A)資産配分(アセット・アロケーション)、(B)マネージャーの選択と配分、(C)自家運用、の三段階だ。

 資産配分については、「基本ポートフォリオ」の影響が特大に大きい。仮に、現在の株価下落で巨額の損失が出たとしても、その8~9割の責任は、GPIFの運用部隊ではなく、基本ポートフォリオを策定し、承認することに関わった人々にある。

 絶対的な利回りが大幅マイナスであっても、基本ポートフォリオから計算されるよりも良い結果になっていた場合には、CIO(最高投資責任者)である水野弘道理事以下の運用部隊は褒められるべきである。運用常識的には、「文句は、基本ポートフォリオの策定者に言え」が正しい。公的年金の問題を追及しようとする野党の議員は、この点をよくわきまえるべきだ。厚労大臣、GPIFの理事長、運用委員会の委員長(有識者)などが、表のターゲットだ。ただし、裏のターゲットともいうべき実質は審議会等の舞台回しをしている年金官僚達だろう。

 つい責任論に力が入ってしまったが、話を元に戻そう。

 資産配分のレベルで、GPIFの運用が上手いか下手かを判断できるデータは現在存在しないが(結果レベルの良し悪しは評価できるし、するべきだが、スキルを推定するには大量のデータが要る)、平均的な個人よりは安定感がありそうだ。しかし、「個人」の側では、リスク水準を自分の好みで決めたいかもしれない。個人的推測だが、GPIFのリスクテイクは過大だと思う国民が多いのではないだろうか。

 次に、GPIFのような年金基金投資家の場合、運用は複数の運用会社に委託して行うので、運用会社の選び方・組み合わせ方において上手いか下手かという点が、運用結果に大きく影響するスキルとなる。

 この点に関しては、GPIFくらいの規模になると、極端な選択には走らないので、平均的な個人投資家よりは「ずっとマシ!」だと申し上げておこう。ただし、ベンチマークである株価指数に連動する低コストなETF(上場型投資信託)をじっと持つような「よく分かっている個人投資家」と、どちらが勝るかは微妙である。

●株式の自家運用はやめた方がいい
手数料は現状は模範的だが……

 さて、GPIFは、国内債券に関しては自家運用を行っているが、国内株式については現在自家運用を行っていない。近時、GPIFが株式についても自家運用するべきか否かについて議論がある。

 この場合、自家運用の目的が、(1)パッシブ運用の委託コストよりも低コストな運用を行うため、(2)アクティブ運用でベンチマークよりも高いリターンを上げるため、(3)選択的投資で(例えば「好ましい企業」の株式を買う)世の中に影響力を与えるため、のいずれにあるかが問題だ。

(1)は、可能であるかもしれないと思うが、どの程度の効果があるのか、試算を聞きたい。

(2)は、民間運用会社がやろうと思って上手くいかないことであり、GPIFなら上手くいくという根拠が考えられない。「根拠無きチャレンジ」でも温かく応援しようという優しい国民がどのくらいいるかが問題だが、やめた方がいい。

(3)は、公的機関による民間企業への介入そのものなので、少なくともこれまでの常識とは大きく異なる方針だ。

 本当に(2)や(3)のような愚かなことを考えているとは想像しにくいが、GPIFもそれ以外の公的年金基金も、JPX日経400のような、ベンチマークと異なるリスクを取る運用(=アクティブ運用)に、実績もないのにいきなり資金を投じるような非常識な行動を取るケースがあるので、油断はできない。国民としては、注意が必要だ。この件は、公的資金が政府の意向に左右されやすい性質を持つことの証拠の一つだ。

 GPIFが、運用を通じて国民に利益を与えているとすると、最大の貢献は運用手数料が安い資産運用を提供していることだろう。

 今後、アクティブ運用を拡大したり(アクティブ運用が優れているという実証的証拠は無いのだが)、オルタナティブ運用を取り入れるなど、金融業界に融和的な、手数料の高い運用を行うようになるとすれば(つまり「いい客」になるとすれば)、GPIFはせっかく持っている長所を失って、運用会社のセールスマンに騙されやすい企業年金レベルの運用に近づくことになる。

●日本企業の図抜けた株主として
どのように行動すべきか

 これまで筆者は、政府は、民間企業の株主としての議決権行使を通じて、経営に関与すべきでないと考えていた。さらに、企業に対する監督者でもある政府と、株主としての政府の間には、利益相反の可能性があり、そもそも公的資金が民間企業の株主にならない制度設計が望ましいとも考えている。

 他方、近年、むしろ政府系の資金が民間企業の大株主となり、企業の経営に積極的に関与することが望ましいと考える人が出てきたように思う。

 例えば、賃上げや設備投資を積極的に行い、さらにROE(自己資本利益率)を上げるような、政府にとって「望ましい経営」を、株主としての力を使って実現しようという考え方だ。

 付け加えると、社外取締役などを応援団にして経営者の給料を上げることによって、経営者をいわば「買収」して、その代わりに株主の利益を上げる(株主への価値配分を増やす)経営を行わせようとすることが、近時「ガバナンス改革」と呼ばれているものの正体のようだ。

 ここでは、あえて結論の押し売りはしないが、今や日本企業の図抜けた筆頭株主であるGPIFが、株主としてどのように行動すべきかは、国民があらためて考え、判断すべき問題であるように思う。

 ついでに言うと、2位の株主である日銀の保有株式も着々と巨大化している。彼らは、議決権行使をどうするつもりなのだろうか。運用会社に丸投げするのでは無責任だし、さりとて自らが議決権行使に関わるのは民間企業の経営への介入となる。保有株の議決権行使をめぐる構図は、公的年金と一緒だ。

●巨大すぎて情報開示しにくいGPIF
資産運用は「民間の方がよくできること」の筆頭

 個人投資家が投資信託を買うと、そのファンドを保有している限り、運用報告書やホームページ等を通じて、ファンドの運用に関する様々な情報開示を受けることができる。

 一方、GPIFのような巨大資金になると、現在何を持っていて、今後どのような行動を取る可能性があるか、という事自体が運用マーケットにおける第一級の相場情報になってしまうので、運用の「計画」も「報告」も大きな制約を受ける。

 これは、マーケットで通称「クジラ」などと呼ばれるGPIFの運用資金が巨額すぎることに根本的な問題があるのではないだろうか。

 もちろん、GPIFから運用を委託された複数の運用機関が、さまざまな情報収集や投資判断を行っており、それがマーケットに反映してはいるわけだが、巨額の資金を集めて運用することで、マーケットの実質的な参加者が減っているという面もありそうだ。

 筆者個人は、「民間でできることは、民間で」するのがよく、資産運用(特に株式投資)は、「民間の方がよくできること」の筆頭ではないかと思っている。付け加えるなら、公的年金の運用改革は、積立金の規模を縮小して、積立金を民間に返すことが最善の策であり、そのための現実的手段も十分あると考えている。

 読者は、どうお考えになるだろうか?

(貼り付け終わり)


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