元気な高齢者こそ使いたい電子機器

80歳を過ぎても、日々の生活を楽しく豊かにする電子機器を使いこなそう

進展が見えない後藤健二氏解放に関して、アラブとの付き合い方を考える。

2015年01月30日 15時40分12秒 | 日記
 イスラム国の人質事件は、ヨルダン、日本、イスラム国との3者の交渉内容が見えない。

 脅迫ビデオでは時間を切っていたが、現実の捕虜交換などとなると、かなり交渉時間が長引く可能性があるという。

 場合によると1週間どころか1カ月以上を要する事態もありそうだ。

 米国は相変わらずテロ組織への身代金や人質交換は認めていない。しかし「ISIS=ISID=イスラム国」を単なるテロ集団とみなしても良いのだろうか?

 ここのところ、サイクス・ピコ協定『ウイキぺディアによる簡単な解説によるとーーーー第一次世界大戦中の1916年5月16日にイギリス、フランス、ロシアの間で結ばれたオスマン帝国領の分割を約した秘密協定。イギリスの中東専門家マーク・サイクス(英語版) (Mark Sykes) とフランスの外交官フランソワ・ジョルジュ=ピコによって原案が作成され、この名がついた』を基に作られた国境線を、イスラム国等の過激派は改正しようとしている働きでもあると解釈する専門家がいる。

 たしかに地図を広げると、中東諸国は非常に単純な直線で国境線が引かれているのがわかる。オスマントルコ帝国が崩壊した時に、欧米諸国が中東諸国を植民地として分割統治した証拠である。

 今中東諸国のあちらこちらで発生している紛争は、アラブの人達の民族主義政権が、現実の宗派や人種に合った、自分たちの領土や国境線を作ろうとしている活動であると、理解する事も必要ではないだろうか?。

 イスラム過激派の暴力的手法は決して褒められたものではないが、地域住民や海外からの賛同者が参集しているイスラム国を、単なるテロ集団と看做すだけで良いのかも大いに疑問になるところだ。

 中東に関しては、歴史的にも関与した事がない日本にとっては、まったく未知に近い存在といっても良い。

 ただ原油供給国であり、日本製品の販売先とだけの認識で、当たり障りのない全方位外交は、もはや日本も取れなくなってきつつあるとは思う。しかし安倍首相の推し進めようとしている積極的平和主義でもって、アラブ地域への接触をするのは、あまりにも危険が多すぎると思うのだ。

Financial Times /JB Press より貼り付け)

イスラム国人質事件、日本外交の転換点か
2015.01.30(金) Financial Times

(2015年1月29日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 日本では今、「I am Kenji(私はケンジ)」が「I am Charlie(私はシャルリ)」に取って代わって一番叫ばれるスローガンになっている。

 ここで言うケンジとは、後藤健二氏のこと。シリアで過激派武装組織「イラク・シリアのイスラム国(ISIS)」に拘束された、尊敬されているフリーランスジャーナリストだ。

 1月24日、今や嫌というほどお馴染みになったオレンジ色のジャンプスーツを着た後藤氏の動画が公開された。

 後藤氏は、人質になっていたもう1人の日本人、湯川遥菜氏の遺体を写したと見られる写真を手に持っていた。湯川氏はほぼ間違いなく、日本政府が2億ドルの身代金を払うことを拒んだ後に首をはねられたようだ。

 ISISはヨルダンに収監されているアルカイダの過激派の釈放を要求している。彼女が解放されなければ、次に死ぬのは後藤氏だ、とISISは警告している。

●安倍首相の掲げた「積極的平和主義」

 後藤氏の運命よりはるかに大きなものが、今、分かれ目にある。平和主義憲法に根差す日本の外交政策が分水嶺に立っているのだ。後藤氏の運命に日本国民がどう反応するかが、日本が今後向かう方向性に大きな影響をもたらす可能性がある。

 互いに関連のある2つの変化が進行している。まず、保守派の安倍晋三首相は、より強固な防衛態勢を築こうとしている。これは首相が「積極的平和主義」と名付けたものだ。

 この積極的平和主義は、同盟国への武器の売却――最近まで厳密に禁止されてきたこと――から中国と争われている島嶼周辺での海上防衛の強化に至るまで、あらゆることを正当化するために利用されてきた。

 特に、安倍首相は同盟国が攻撃された場合に日本が支援することを禁じる憲法の解釈を変更したいと考えている。理想的には、日本が交戦権を永久に放棄することを定めた1947年憲法の第9条を廃止したいとも思っている。

 現実には、それは恐らく不可能だろう。憲法改正に必要な国民投票では、極めて平和主義の日本国民がほぼ間違いなくそのような修正を否決するからだ。

 次に、日本政府が長年、国際舞台で自国を中立な国として演出しようとしてきた後で、安倍氏は立場を明確にする方向へ日本を突き動かそうとしている。第2次世界大戦以降、日本は想像力豊かに「全方位外交」と名付けられたものを追求してきた。

 ありていに言えば、全方位外交は、すべての人の友人であるふりをしながら、自国の経済的利益を追求することを意味した。その間、日本を防衛する危険な仕事は米国にアウトソースされた。

●通用しなくなった戦後の「全方位外交」

 全方位外交にも用途はあった。例えば1973年には、日本の外交官らはオイルショックの破滅的な原油禁輸措置に直面し、日本政府をアラブ世界の友人として打ち出すことで、ヨム・キプル戦争(第4次中東戦争)でイスラエルを支持する米国と距離を置いた。すると、原油が再び日本に流れ込んだ。

 今から10年前、日本政府はイランで似たようなカードを切った。日本はイラン政府に熱心に働きかけ、巨大なアザデガン油田の権益を獲得した。ただ、この時は、制裁の名の下に、米国政府によって合意を帳消しにされた。

 中立性のイリュージョンは、うまくやり遂げるのが難しくなっている。日本の経済的影響力が衰える一方で、中国の台頭と米国の9.11テロ攻撃で戦略地政学的な断層が広がったからだ。

 今回の人質事件の危機は、安倍氏の外交政策の野望にとって、もろ刃の剣となるかもしれない。

 同氏はこの事件を、日本がもっと自立する必要がある証拠として利用しようとするだろう。多くの国と異なり、日本には、いつでも救出作戦に乗り出せる特殊部隊がないし、自国民を傷つけようとする外国勢力に対して軍事行動を取る憲法上の自由もない。

 防衛専門家で安倍氏の外交政策を支持する岡本行男氏は、今回の拉致事件によって、日本国民は世界の不愉快な現実を突きつけられたと言う。「我々はもう、カモフラージュされた中立性の陰に隠れることができない」

 日本では、多くの人がこれとは正反対の結論を導き出すだろう。今回の事件は外国での冒険に巻き込まれるリスクを示していると彼らは言うだろう。他国と距離があって、浮世離れした日本の快適さからすると、諸外国はさまざまな一神教が優位性を争う、血も凍るような場所に思える。

 安倍氏は、ISISと戦う国々に対して2億ドルの人道支援を行うことを約束したことで、国会で批判された。批判的な向きに言わせると、それが原理主義の雄牛を煽る赤いマントだったのだという。

 「多くの人が言っていますよ。『一体なんで我々は米国の保安官代理になりたいのか? 我々は本当に自分の身を危険にさらしたいのか?』とね」。東京のテンプル大学のジェフ・キングストン教授はこう言う。この議論の結果は、多分に後藤氏の運命にかかっているのかもしれない。

 処刑された湯川氏は、自分は満州の姫の生まれ変わりだと言っていたことがあり、その挙句に、うっかりと中東に足を踏み入れてしまった夢想家だ。そんな湯川氏とは異なり、後藤氏は、多くの国民の同情を誘っている。

●後藤氏の運命に日本人はどう反応するか

 後藤氏は、ジャーナリストとしてのキャリアの多くを紛争地域の子供たちの苦難を世界に伝えるために費やしてきた人道主義者であり、不運な湯川氏を救出しようとする必死の試みでシリアに向かった。

 28日時点では可能に思えたように、もし後藤氏が解放されたとしたら、安倍氏の立場は有利になるだろう。

 たとえ後藤氏の自由がヨルダンの人質交換を通じて勝ち取られたものだったとしても、妥協を拒む安倍外交は結果を出したと見なされるからだ。

 一方で、もし後藤氏が結局、死ぬことになってしまったら、外国への関与に対する国民の支持が揺らぎかねない。

 そうなった場合、安倍氏が憲法解釈の変更をいっそう推し進めるために必要な法案を可決するのが難しくなるかもしれない。しかし、長期的には、どんな後退も恐らく一時的なものになるだろう。

●いずれにせよ、日本の立場には変化

 何しろ、世界は変化している。中国は日本に対して、自国の領有権の主張を強めている。日本政府の多くの関係者は米国のことを、いざとなった時に日本の防衛のために米国人の血を流すことはない、頼りにならない同盟国と見なすようになっている。

 その一方で、日本が今も原油の調達先として依存している中東は、イデオロギーを巡る戦いで焼け落ちている。日本がどっちつかずの立場を取っていられる時代は終わりつつあるのだ。

By David Pilling

コメントを投稿