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朝日の吉田証言は、国連のクマラスワミ報告に影響を与えていないとの反論を紹介。

2014年09月18日 22時47分22秒 | 日記
昨日に引き続き、朝日を叩く保守系メディアに対する反論の紹介だ。

エンジョウトオル氏はこの朝日問題で紹介した事があるが、今回は国連人権委員会が採択した「クマラスワミ報告」に焦点を当てて見てみよう。 この報告書は、ネット上でも公開されており、日本語版も見れるようになっている。

 この報告書も、朝日の吉田証言から大きな影響を受けており、朝日の大罪の一つだと、週刊誌を含む保守系メディアが大合唱をしている。

 しかしエンジョウトオル氏は反論する。 吉田証言は本題に入る前の「歴史的背景」という項目で先行調査のひとつとして紹介されているだけで、報告書の正式タイトルにあるように、元慰安婦や元兵士らからの聞き取り内容が主体で構成されている。

 菅官房長官が、このクマラスワミ報告書のなかで、朝日の誤報が世界に日本の印象を辱めていると述べているが、日本政府の明らかなスリカエであると批判している。またこの菅官房長官に無批判に読売、産経が同調しているが、特に日本の最大メディアである読売が、このスリカエを平気で一般大衆に与えた影響は、朝日以上に大きな罪悪を垂れ流してしまったと言える。

 筆者は朝日の誤報に対して「非国民」とか、「反日」とか表現しだす最近の保守系メディアに、重大な危険性を感じる。

 戦前は、政府に反する組織に、このレッテルを貼り、徹底的に弾圧をした暗い歴史があるのだ。

 保守系メディアが、その危険性もわきまえずに、反日、非国民を言い出すところに、歴史を振り返ろうとしない、知性の無さをさらけ出している。

 安倍首相の好きな「美しい日本を取り戻す」というフレーズを、産経などでも好んで使っているようだが、海外の観光客のPR用であれば大いに結構であるが、政権の首脳が使うと何やら胡散臭さを感じるではないか。

 筆者が望む美しい日本は、高齢者や低所得者、シングルマザーであっても、全て生活に不安がなく住める世の中をイメージしてしまうが、安倍首相のイメージは、あくまで強い日本であり、軍備で中国・韓国に負けない日本であり、そのためには、経済も強くありたいと言う日本であろう。(もっとも経済力は筆者も願うが)

 今日18日の週刊新潮の新聞広告は、バカの一つ覚えのように、広告面の80%は朝日叩きに徹しているが、週刊文春は50%だ。それでもまだ朝日叩きを続けている。本当にこんな週刊誌を、わざわざ買って読む読者がいるのであろうか?

 筆者にはつくづく不思議に思うが、まあどこからか見あいの収入が入るから続けるのであろう。

 ぼつぼつ朝日問題は反論もネット上に出だしたようであるから、最後は真実の正論が勝つと思っている為、(産経系の雑誌の正論ではありません)筆者はこの問題を話題にするのも飽きてきたので、次回からは別の話題に取り組みたい。

 急激に進む円安やスコットランドの独立運動など、世界は揺れ動いており、過去の慰安婦問題等にいつまでも関心を払っている暇はない。

(リテラより貼り付け)
朝日報道と国連の批判は無関係....安倍政権の慰安婦問題スリカエを暴く
エンジョウトオル
2014.9.17.

 彼らはあの報告書をちゃんと読んでいるのか。最近の慰安婦問題をめぐるメディアの雄叫びを聞いていると、そんな疑問を抱かざるをえない。

 吉田証言の取り消し以降、勢いづいている産経、読売をはじめとする保守メディアは朝日の全面謝罪にも納得せず、今度は「朝日の誤報が国際社会の誤解を生んだ」「国連のクマラスワミ報告撤回を要求せよ」という大合唱を始めた。

 「クマラスワミ報告」というのは1996年に国連人権委員会が採択したスリランカの女性法律家、クマラスワミ氏による慰安婦問題の調査報告書のこと。日本軍の従軍慰安婦を「性奴隷」と認定して日本に法的責任をとることを求めたことから、「河野談話」とともに右派陣営から目の敵にされてきた。そして、このクマラスワミ報告の「性奴隷」という認定に根拠を与えたのが、朝日新聞の「吉田証言」報道だった。つまり、朝日が「吉田証言」を取り消したのだから、クマラスワミ報告も無効だし、朝日はその責任を取れというのが、読売、産経をはじめとする保守メディアの主張なのだ。

 いや、メディアだけではない。菅義偉官房長官は9月5日の記者会見で「(クマラスワミ)報告書の一部が朝日新聞が取り消した(吉田証言に関する)記事の内容に影響を受けていることは間違いない」とわざわざ強調。「朝日新聞は記事を取り消したが、慰安婦問題に関して国際社会で誤解を生じている」とまで言っている。

 そして、この会見を受けた読売は〈世界の誤解、払拭多難…「性奴隷国家」吉田証言から〉などと大々的に報じた。

 安倍晋三首相もすかさず「夕刊フジ」のインタビューで「(朝日の報道で)多くの人が悲しみ、苦しみ、国際社会において日本の名誉が傷つけられている」と、まるで朝日の報道がなければ国連の報告書そのものが存在しなかったように語っている。

 だが、これらの主張はどう考えてもおかしい。それは、実際にクマラスワミ報告を読めば明らかだ。ちなみに「クマラスワミ報告書」の全文日本語訳はアジア女性基金のホームページにアップされているので誰でも読める。

 たしかにクマラスワミ報告に「吉田証言」が引用されているのは事実だが、それはA4判50ページ近い報告書のうち数行にすぎない。しかもそれは、本題に入る前の「歴史的背景」という項目で先行調査のひとつとして紹介されているだけで、報告書の根幹ではない。(吉田証言と同様に信用性が問題視されているジョージ・ヒックスの著作もこの「歴史的背景」の項目で引用されている)

 クマラスワミ報告書が立脚しているのは、報告書の正式タイトルにある「朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査」からもわかるように、元慰安婦や元兵士らからの聞き取りである。吉田証言が虚偽であっても、クマラスワミ報告書の有効性とは何の関係もないのだ。

 それだけではない。読売や産経はあえて書いていないが、クマラスワミ報告には「吉田証言」に対する異論もきちんと示されている(11ページ)。

 《慰安所が設置された状況や軍の性奴隷とするために女性をどのように集めたかについて、歴史学者から情報を得た》として、《千葉大学の歴史学者秦郁彦博士》の説を紹介している。秦氏が、“慰安婦狩り”が行われたとする済州島で調査したが証拠はなかったということや、「慰安婦犯罪の加害者は、朝鮮人の首長、売春宿の所有者、少女たちの両親であった」「慰安婦は平均的な兵隊の給料の110倍受け取っていた」という秦氏の見解も紹介され、いわゆる「強制連行」の有無については両論併記の形をとっているのだ。

  そして、《第二次大戦までの期間と大戦中に行われた軍性奴隷のリクルートについて書こうとすると、実際にどのような女性を徴用したかについての資料が残されていなかったり、公の文書が公開されていないという最大の問題にぶつかる。「慰安婦」のリクルートに関する証拠はほとんどすべて、被害者自身の証言に基づく》とも明記されている。

 つまり、この報告書はもともと狭義の強制連行の有無を特定できていないことを認めていたのである。

 クマラスワミ氏が日本の慰安婦制度を「性奴隷」と認定したのは、主に慰安所への軍の関与と慰安婦たちの被害実態によるものだった。報告書は元慰安婦への聞き取りによって明らかになった慰安所の実態を詳述している。

 《(工場での仕事だと言われたが)工場はどこにもないことがわかりました。女の子たちはそれぞれ小さな部屋をあてがわれました。中には藁布団が敷いてあって、ドアには番号がついていました。(中略)二日待たされた後、軍服を着て帯剣した兵隊が部屋に入ってきました。『言うとおりにするか、どうだ』と言うや私の髪を引っ張り、床に押し倒して脚を広げろと命じました。私をレイプしたのです。その兵隊が行ってしまうと、外に20人か30人の男たちが待っているのが見えました。その日全員にレイプされました。それ以来、私は毎夜、15から20人に暴行されたのです》

 《最初の一年間は、他の朝鮮人の少女たちと同様に、高級将校の相手をさせられましたが、時が経つにつれ、私たちが次第に『中古品』になってくると、相手は下級将校になりました。病気に罹った女性はたいてい消されました。妊娠を避けるため、あるいは妊娠しても必ず流産するよう、『606号注射』もうたれました》

 《中国の吉林省に着いた最初の日に、日本兵から五つの命令に従わなければ死ぬぞと言われた。天皇の命令、日本政府の命令、彼女が属している陸軍中隊の命令、中隊の中の分隊の命令、そして彼女が働くテントの保有者であるその兵隊の命令である》

 繰り返すが、報告書は吉田証言を根拠にして、従軍慰安婦を「性奴隷」としたわけではなく、こうした聞き取りに立脚しているのだ。

 そして今回、日本の最高権力者と最大の発行部数をもつ新聞が手を組んだ大キャンペーンによって、この情報操作はこれまでにない大きな効果を発揮している。大衆の間には「従軍慰安婦自体が朝日の捏造だった」という認識が広がり、「すべての慰安婦が自由意志で志願した娼婦」という定義が“真実”として流通している。

 海外では絶対に通用しない論理だが、しかし、国内ではそれが常識になってしまったのだ。そして、少しでも異論をはさもうものなら、有無を言わさず「非国民」「反日」と攻撃される言論状況ができあがりつつある。

 しかも、勢いづいた右派陣営の主張はさらにエスカレートしている。9月15日、ジャーナリストの櫻井よしこ氏と作家でNHK経営委員の百田尚樹氏、そして「WiLL」花田紀凱編集長がパネラーをつとめる「朝日慰安婦報道が崩した日本の誇りを取り戻そう!」というトークショーが開かれたが、3人はこぞって朝日とクマラスワミ報告を徹底批判。花田編集長の「これからの主戦場は国連だ。国連を脱退するくらいの覚悟でやれ」という発言も飛び出し、大いに盛り上がったという。

 とうとう国連脱退まで……もはや言葉もない。

(貼り付け終わり))

朝日の吉田証言は、河野談話に影響を与えていないと明言する、元外交官東郷和彦氏。

2014年09月18日 00時14分22秒 | 日記
 保守系メディアによる朝日新聞叩きは相変わらずであるが、ここにきて実際問題として、韓国始め国際的に大きな影響を与えたのは、朝日の書いた吉田証言ではなく、当時の日本政府が発表した河野談話であると、正確に歴史を見るべきだと言う意見が多く出てきている。

 この河野談話の中身を見直すべきだと言う、保守系メディアや一部の自民党議員の発言が根強く出て来るが、河野談話を作成する際も「吉田発言はまやかし臭かったので参考にはせず、あくまで元慰安婦の証言を参考にした」と当時の内閣官房副長官 石原信雄氏は、明確に説明している。

 そしてここにきて元外交官であった東郷和彦氏も、添付のコラムを書いておられる。

 「朝日新聞の吉田証言否定は、世界の大勢に対して、ほとんど意味をもたない。ましてや、吉田証言については、この問題について日本でもっとも権威を持って研究してきた秦郁彦氏と吉見義明氏との間で、すでに1997年に「強制連行を示す資料はなかった」との結論がでている、言わば決着済みの問題である(前掲拙著『歴史と外交』81ページ)。20年近く昔に専門家の間で決着した問題についていま大報道をしても、事態の本質に与える影響はわずかであろう。特に韓国との関係では、本件は、日本内部のマスコミの問題であり、大きな意味を付与させることは難しいと思われる。」と吉田証言は20年前にすでに結論が出ている事だったと明言している。

 朝日がなぜ今この時期に、吉田証言内容を削除しようと大々的に特集を組んだのか、またお詫び発言に迄進んだのか、またこれ見よがしと、保守系メディアが寄ってたかって朝日叩きをしているのかも、疑問だらけだ。

 東郷氏は元外交官だけに、日韓関係の改善を進める動きに、大きなブレーキがかからないかと、安倍政権の対応に決して良い影響を与えないと懸念しておられる。

 これから朝日叩きをした保守系メディアに対する批判が、色々と出てくるであろう。 読売、産経等が朝日批判に対する反論記事を自社の紙面に出せば立派なものだが、どのメディアがまともに取り上げるであろうか? 見ものである。



(BLOGOSより貼り付け)

慰安婦問題の現状と安倍新内閣におけるこれからの対応 -
元外交官・東郷和彦

 日本のマスコミが、慰安婦問題を巡って爆発したかの感がある。8月5日、朝日新聞は見開き4面を使って「慰安婦問題どう伝えたか、読者の疑問に答えます」という大特集を発表した。特に、1982年吉田清治氏が証言した「済州島における強制連行」について「この証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します」との公告を行った。慰安婦問題が日韓で取り上げられた初期に、吉田証言が日本軍の慰安婦に対する行動について一定のイメージを形成してきたことは、家永三郎氏の『戦争責任』(1985年)、国連『クワラスミ報告』(1996年)、米下院対日非難決議(2007年)などにおいて、すでに知られた話であった。

 しかし、朝日による吉田証言否認の衝撃はその後波紋をひろげ、8月26日高市早苗自民党政調会長は菅官房長官に対し、朝日の一部証言取り消しをふまえ新談話の発出を要請、菅官房長官は、「考えていない」と応じた(8月27日『毎日新聞』)。 ここにジャーナリスト・池上彰氏が朝日のコラム『新聞ななめ読み』で、「過ちがあったなら訂正するのは当然。(中略)過ちを訂正するなら、謝罪もするべきではないか」と記述、いったん朝日がこのままでの掲載を認めないという事態が発生した。一時は、池上氏の連載中止かという事態になったが、結局9月4日、朝日は「池上さんと読者の皆様におわびして、掲載します」との公告とともに、元通りの論評を掲載した。

 9月11日木村伊量社長は記者会見の席上で池上問題について「責任を痛感している」と発言。更に、9月12日朝刊の紙面で木村社長より「吉田氏に関する誤った記事を掲載したこと、そしてその訂正が遅きに失したことについて読者のみなさまにおわびいたします」と表明し、第三者委員会を立ち上げて事態の再検討を行うことを明らかにした。

 以上の事態に対し安倍首相は、9月11日のニッポン放送ラジオ番組で「慰安婦問題の誤報で多くの人が苦しみ、国際社会で日本の名誉が傷つけられた」と発言。 14日のNHKの番組では「世界に向かってしっかりと取り消すことが求められている。朝日新聞自体が、もっと努力していただく必要がある」「日本兵が人さらいのように慰安婦にしたとの記事が世界中で事実と思われ、非難する碑ができている」「一度できた固定観念を変えることは難しいが、(日韓関係の)関係改善に生かしていくことができればいい」と述べた。



 日本中が、また、世界の大勢と異なった方向に流れ始めたのだろうか。慰安婦問題について、2014年、年の初めの状況は、大変だった。2013年12月26日の安倍総理の靖国訪問をうけて、慰安婦問題における河野談話見直しの世論が加速した。27日日本維新の会は年明けに河野談話撤回要求のための署名運動を展開すると報ぜられ、産経新聞は元旦の記事で河野談話の欺瞞性を強く提起した。

 この動きは明らかに米国を強く刺激したと思う。東アジアの最大の問題は台頭する中国であると見るアメリカにとって、日韓はこれに対する共同のパートナーである。歴史問題をめぐり深刻化する日韓関係をこれ以上複雑化させることは、許容範囲を超えることになったと思う。

 3月12日と13日、斎木昭隆外務次官が韓国を訪問、これを受けた14日の参議院予算委員会で安倍総理は、河野談話について「安倍内閣で見直すことは考えていない」と述べ、また、「筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思い、非常に心が痛む。思いは私も歴代首相と変わりはない」と答弁した。これは2007年の3月安倍第一次内閣で「強制性否定発言」で猛烈な安倍批判がアメリカで起きたときに、安倍総理がブッシュ大統領に述べ、事態を鎮静化させた時の発言と同じだった。

 他方、この日の答弁で、菅官房長官は、「河野談話作成過程の実態を調査することが必要だ」と述べ、ここでその後の動きを規定する非常に重要な方向性が決まったのだと思う。 以上の動きは、直に外交関係の動きとして現われた。2014年3月にハーグで行われたオバマ大統領を間にはさんだ、安倍総理と朴大統領の三者会談は、この慰安婦問題をめぐる日韓の最初の妥協を基礎に行われた。この妥協が、更に、4月のオバマ大統領の訪日・訪韓という日程の形成を可能ならしめたと言ってもよいと思う。この訪問では、オバマ大統領の韓国での慰安婦発言という問題を後に残してしまったが、ともかく問題の過熱化をさけつつ、事態は次の局面に移ったのである。



 次の局面は、菅官房長官が約束した河野談話作成の経緯の調査であった。かくて、6月20日「慰安婦問題をめぐる日韓間のやりとりの経緯」という長文の報告書が発表された。

  発表された後の外国での受け止めは、芳しくなかった。韓国外務省は、ほぼその直後といってもよいタイミングで、「深い遺憾」の意を表明し、「報告書は、河野談話を見直さないという政府方針に逆行する」「河野談話は日本の独自の調査と判断によってだされたものであり、韓国政府は日本側の度重なる要請により、非公式に意見をつたえたにすぎない」という声明を発表した(6月21日『毎日新聞』)。

 6月23日のニューヨークタイムズ紙は、「日本の歴史的めくらまし」という強烈な安倍批判の論説を掲載した。アメリカの友人からは、ワシントンの国務省やホワイトハウスの雰囲気も、概ね同じだという情報が入った。筆者は、この論説に対する反論を同紙のop.ed.欄に投稿したが、採用されなかった(注:その後、反論の趣旨を、オーストラリア国立大学の『東アジアフォーラム』特別号に投稿し、まもなく出版となる予定である)。

 しかしながら、である。東京における事態は意外な方向に展開した。先ず、報告書自体、談話形成の過程で、慰安婦に対する狭義の強制性(首根っこを掴んでトラックに乗せて拉致していくような行為)を認めたような箇所はでてこなかった。韓国政府の役割についても、少なくとも筆者がこの記録を読む限り、良心的に仕事をする外交官なら当たり前のことをしていたに過ぎないし、これを聞いていた日本側が、談話の責任をいささかなりとも韓国側に押し付けるものでないことも、また明らかなことと理解された。 更に談話が発表された直後に、談話の当事者の河野洋平氏が、「(検証結果の)報告書に私が足すべきものも引くべきものもない。正しくすべて書かれている」(6月22日『毎日新聞』)と、いわば報告書の内容を追認する声明をだした。ここに、まったく予想されていない事態、河野談話が、その支持者のみならず、その批判者によってもそれなりに支持され、日本における立場が強まったという事態が起きたのである。



 ようやくここまで来たのである。朝日新聞の検証報道の意図が、過去における「虚偽報道」を検証し、新聞としてのけじめと反省を明らかにしようとする意図に発することを、疑う理由はないと私は思う。けれども、この「虚偽報道」の否定を通じて、日本の世論が、いわゆる「狭義の強制性はなかった」という点に雪崩を打ち始めたのだろうか。

 この点については、世界の大勢は、狭義の強制性があるかないかについて、ほとんど関心がないという点につきる。アメリカ世論の決定項は、今自分の娘がそういう立場に立たされたらどう考えるか、そして「甘言をもって」つまり「騙されて」連れてこられた人がいたなら、それとトラックにぶち込まれた人と、どこが違うのかという立場に収斂している(詳細は、拙著『歴史と外交』(講談社現代新書、2008年、92ページ)、『歴史認識を問い直す』(角川ワンテーマ21、2013年、163~166ページ)参照)。

 従って、朝日新聞の吉田証言否定は、世界の大勢に対して、ほとんど意味をもたない。ましてや、吉田証言については、この問題について日本でもっとも権威を持って研究してきた秦郁彦氏と吉見義明氏との間で、すでに1997年に「強制連行を示す資料はなかった」との結論がでている、言わば決着済みの問題である(前掲拙著『歴史と外交』81ページ)。20年近く昔に専門家の間で決着した問題についていま大報道をしても、事態の本質に与える影響はわずかであろう。特に韓国との関係では、本件は、日本内部のマスコミの問題であり、大きな意味を付与させることは難しいと思われる。

 私の見るところ、改造安倍内閣の対外関係で、この問題はいよいよ正念場を迎える。2007年以来述べている考え方に基づき、以下の点を提言したい。

  第一に、この問題は、日韓関係においても、日本と世界との関係においても様々な日本にとって望ましくない事象を引き起こしている。全体の根源を断ち切り、日本にとって今後この問題が不要な政治問題化しないように対応する方策は一つしかない。それは、今韓国で生きている約50名の慰安婦の人たちと和解に達することである。この問題について韓国で最終的に絶対的な権威をもって発言しうるのは、この人たちだけである。この人たちとの和解こそ、必須である。最近筆者が韓国の関係者と議論している中で感ずるのは、慰安婦の人たちの心に沁みとおる気持ちの表明がまず必須であるということである。言葉にすれば3月14日の安倍総理の国会答弁で表現されるようなものを、いかにして表現するかであると思う。もう一つは具体的な行動であり、それはアジア女性基金で民間からの拠出によってまかなった償い金を政府予算で拠出することを核とするスキームを考えるということだと思う。以上の二つの和解の枠組みをつくるには、安倍政権としての明示的な行動とともに、朴大統領以下の韓国側の全面的な共同行動が必要である。韓国政府との協力なしに、和解は成立しない。

 第二に、もしもこの人たちとの間で和解が成立しなかった場合には、韓国市民社会でこの問題の言わば「代表権」を持つのは、韓国挺身隊問題対策協議会(挺隊協)の方々である。筆者の見るところ、この市民団体は、植民地時代に日本帝国主義がなした悪の象徴として慰安婦問題を位置づけ、これに対する日本の反省と責任を、法的責任と犯罪性の受任という形で認めない限り和解はあり得ないという信念に立つ団体である。加えて、アジア女性基金が提示した謝罪を受け入れた61名の慰安婦の方々が韓国の利益を裏切ったとして、韓国社会から排除するという極端な行動をとった人たちである。この人たちがこの問題に関する決定権を持ったなら、慰安婦問題はほぼ永遠に解決しないことになる。

 第三に、アメリカをはじめ世界各地で作られている慰安婦像の問題にどう対処するかの問題がある。この点は各国の内政の問題ともからみ、極めて複雑な問題となっている。しかし、世界で慰安婦像問題を推進している中心勢力は在外韓国人勢力であり、ただ今現在彼らと在外中国人勢力との連携が強化されるという状況にある。在外韓国人勢力が沈静化しない限り問題は解決しない。それには、ソウルと東京との和解という解決策しかありえない。

 日韓関係は今歴史問題・領土問題を含む過去の問題によって、様々に引き裂かれ、大変難しい状況にある。けれどもその中で、もしも最初に解決を試みるとすれば、慰安婦問題ではないかと筆者には思われる。これは慰安婦問題の解決が容易だからというよりも、ほかの問題があまりにも難しいからかもしれない。けれども、同時に、今年に入ってからの一連の動きの中に、解決に向けての何がしかの動きが読み取れないでも無いように、見えるからでもある。朝日新聞の「虚偽報道」とその是正は、日本のジャーナリズムのあり方から考えれば大きな問題である。真剣に考えねばならない問題である。しかし、そのことによって、せっかく見え始めた慰安婦問題に関する解決の糸口をとざすことのないように、切に望みたい。

(2014年9月14日記)
(貼り付け終わり)