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比較:影の警察国家(連載第16回)

2020-10-11 | 〆比較:影の警察国家

Ⅰ アメリカ―分権型多重警察国家

1‐6:その他の連邦警察機関

 アメリカ合衆国の連邦警察集合体に包含される警察機関として、これまでに見たもの以外にも、まだ多数の機関が配されているが、それらを大きく分ければ、特定の連邦庁舎・施設の警護を任務とする庁舎警察と、特定の法領域における法執行を任務とする領域警察の二系統がある。
 前者は警備警察、後者は刑事警察としての性格が強いが、いずれも、アメリカでは庁舎ごと、あるいは法領域ごとに警察機関を分配する分権化の志向性が強いために、細分化された警察機関が林立する結果となる。特殊アメリカ的な現象と言える。
 庁舎警察としては、合衆国議会警察、最高裁判所警察、ペンタゴン部隊防護庁、 FBI警察、合衆国造幣局警察、政府印刷局警察、連邦準備制度理事会警察、退役軍人省警察、スミソニアン協会警備局など多数ある。いずれも、それぞれの連邦庁舎・施設の警備及び庁舎内犯罪の捜査に特化した警察機関である。
 中でも、ペンタゴン部隊防護庁(Pentagon Force Protection Agency:PFPA)は、2001年の9.11事件で国防省庁舎が航空テロ攻撃の標的となったことを契機に、従来からのペンタゴン警察を増強し、それを包含する形で、国防総省とその関連施設全般の警備や捜査などを総合的に担う機関として、2002年に創設された新しい機関である。
 いささか奇妙な警察機関は、 FBI警察である。 FBIはそれ自身が司法省系の代表的な連邦警察機関であるが、 FBI警察は FBIの庁舎警備を専門とする組織内警察であり、その要員の多くは合衆国保安官局からの出向者である。
 一方、領域警察としては、国税庁(内国歳入庁)犯罪捜査部、合衆国郵政監察局を二大機関として、食品医薬品局犯罪捜査部、連邦通信委員会法執行部などがある。
 国税庁犯罪捜査部(Internal Revenue Service, Criminal Investigation:IRS-CI)は、連邦税法違反とそれに関連する資金洗浄、詐欺その他の財務犯罪全般の捜査を担う一種の財務警察である。
 元来、合衆国財務省は機務局(シークレットサービス)をはじめとする連邦法執行機関を擁し、連邦警察集合体の中核を成していたところ、それらが司法省や国土保安省に移管されていき、現在ではIRS-CIが財務省系法執行機関として残されている。
 合衆国郵政監察局(United States Postal Inspection Service:USPIS)は合衆国建国前にまで遡る歴史を持つ古い法執行機関であり、合衆国の郵便制度を悪用するあらゆる犯罪の捜査を任務としている。そのため、独自の研修機関を擁するなど、本格的な法執行機関としての完結性を持つ。


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