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「赤いファシズム」対「ネオ・ファシズム」?

2012-11-17 | 時評

共産党中国の建国者・毛沢東は、建国から7年後1956年の時点で、45年後2001年の中国は「強大な社会主義工業国」になっているだろうと予言した。ただ、1963年の段階では、共産党員が官僚主義・修正主義・教条主義を避けられなければ、中国共産党は修正主義の党に変わり、ファシスト党に変わり、全中国は変色するだろう、とも予言していた。

この予言は、現在、半分くらいは的中しつつあるのではないだろうか。

現在の中国共産党は教条主義を避けられてはいるが、官僚主義は避けられておらず、それにどっぷりと浸かっている。プロレタリア革命を経たはずの国家にそぐわない「二世党員」の増加も目立ち、そうしたいわゆる「太子党」の代表格・習近平氏が党と国家のトップに就くことになった。

修正主義に関しては、共産主義を棚上げして、「社会主義市場経済」の名のもとに事実上資本主義の道を驀進している点で、現行路線の祖であるトウ小平をかつて「走資派」として排除した毛であれば、これを「修正主義」とみなすであろう。

ただ、現存中国共産党をファシスト党と決めつけるのは適切でなかろうが、共産主義的理想が棚上げされ、代わって愛国主義と領土主義が全面に押し出されてきている限りでは、ファッショ化の危険水域に入り始めているようにも見える。

ちなみに、毛は「愛国主義と国際主義の統一」を掲げてもいた。中国共産党の愛国主義は抗日パルチザンを担った歴史から元来、共産主義と並ぶ党のバックボーンであるが、それは決して偏狭な国粋主義ではなく、国際主義を踏まえた愛国主義であった。従ってまた毛は、強国になると予見した21世紀の中国に対しても、傲慢な大国主義的態度を厳に戒めてもいたのだった。

しかし「海洋強国」を謳い、周辺海域での海洋権益を強力に追求する現在の中国式愛国主義は、こうした毛の遺言とは異なる方向に流れているように見える。

一方、日本では、唐突な衆議院解散によって年内総選挙となり、政権が再び自民党に戻る公算が高まっている。そうなれば、党内最右派で、愛国主義・領土主義的主張が際立つ「二世議員」―日本版太子党―安倍晋三氏の首相復帰となることはほぼ確実である。

そのうえ、「第三極」と称する勢力が国会を席巻する可能性も取りざたされる。この勢力は日和見主義者を含む雑多な分子から成るとはいえ、大筋では国家(国粋)主義・権威主義という共通基盤を持つ。あえて言えば、日本型極右勢力であり、その行き着く先は21世紀型のネオ・ファシズムである。

とはいえ、野田首相の不意打ち的な解散決定は、新党が多い「第三極」にとっては準備不足をもたらし、ひとまずその躍進を抑制する効果を持つ可能性は残されている。「中道主義者」を標榜する首相がそうしたことも計算に入れてこの時期の解散を決めたのだとすれば、彼は後世、極右の伸張を抑止した救世主として記憶されることを望んでいるのかもしれない。

しかし、自民党が最右派政権を構成すれば、本質的には親和性のある「第三極」との公式・非公式の連携・協調は大いにあり得るので、日本の政治座標軸がいっそう右に寄る結果自体は変わらないだろう。

そうなると、互いに愛国主義・領土主義で武装した「赤いファシズム」対「ネオ・ファシズム」の中日衝突→武力紛争という構図も杞憂でないことになるかもしれない。両国の一般民衆はそんなことを望んでいないと信ずるし、そうはならないことを願って、表題に?(クエスチョン・マーク)をつけておいたのである。?にとどまらず、表題に×印がつくことを願うばかりである。


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