ザ・コミュニスト

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年頭雑感2013

2013-01-01 | 年頭雑感

一昨年の漢字は「絆」だったが、昨年は「金」だという。

一昨年は3・11があったせいか、「絆」という精神的価値に関わる漢字が選ばれたが、昨年は「金」という物質的価値を象徴する漢字に舞い戻ってしまったようだ。「喉元過ぎれば熱さ忘れる」のたとえどおりなのだろうか。

昨年の「年頭雑感2012」では、絆の中でも家族的絆、社会的絆が先細る中で、第三の絆と呼ぶべき政治的連帯、特に反原発デモの行方に注目したわけだが、これも結局は全国的な広がりに欠け、年末の総選挙でも脱原発を掲げた政党が軒並み大敗する一方、原発推進勢力が「圧勝」となり、世界を驚かせた。

昨年の「雑感」で「デモを通じてどんな社会を作り出したいのか、社会的な討議とそれに基づく具体的な変革の行動とが必要である」と指摘しておいた課題がなお未達成であることも一因であろう。

それにしても、ひとたび事故が起こればあらゆる絆を破壊する原発を「卒業」できず、金を落としてくれる原発への執着はなお強いようである。ここには、環境軽視・労働搾取で量的な拡大成長を遂げたかつての“成功体験”―それは、環境・生活という点では“失敗体験”なのだが―への未練を断ち切れない日本社会の姿が垣間見える。

ただ、当然と言うべきか、市場は資本主義守護神の復活に安堵し、ご祝儀相場の活況となったようだ。

結局、日本社会は3・11からほとんど何も学ばず、さしあたり3・11以前へ戻ることになったわけだが、振り出しに戻ってここから今度はどこへ行くのか、社会はまだ考えあぐねているようでもあり、先行きは不透明である。 

不透明といえば、世界情勢も不透明である。欧州債務危機に象徴される世界的規模の経済危機も解決の道筋は見えず、米国の斜陽化も進むだろう。

中国も右肩上がりの成長に陰りが見え始めている。極東アジアでは冷戦への逆行的な軍拡競争のきな臭さが漂い、中東の政治危機、アフリカの食糧危機も持ち越しである。

2013年は内外情勢ともに見通しづらい霧中のように不透明な一年になりそうだ。


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