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続・持続可能的計画経済論(連載第35回)

2022-10-09 | 〆続・持続可能的計画経済論

第3部 持続可能的計画経済への移行過程

第7章 経済移行計画Ⅰ:経過期間

(2)基幹産業の統合プロセス
 経済移行計画における経過期間において最初の関門となるのは、基幹産業の統合である。持続可能的計画経済における基幹産業とは、計画経済の対象範囲となる業種である。
 何をもって基幹産業とみなすかは産業分類に関わることであるが、その項でも述べたように、環境的持続可能性の確保を主旨とする持続可能的計画経済における基幹産業とは、環境的負荷の大きな産業分野を意味する。
 具体的には、鉄鋼、電力、石油、造船、機械工業に加え、運輸、通信、自動車等々、資本主義経済体制下でも大企業として経済界の基軸となっている産業分野が含まれてくることになるだろう。なお、一般の生産計画とは別立てとなる製薬分野もこれに準ずる。
 これらの産業分野は持続可能的計画経済の完成期においては社会的所有企業としての生産事業機構として統合されるが(拙稿)、そうした将来の生産事業機構の前身となる包括企業体を設立することが、経過期間における基幹産業の統合の眼目である。
 ここで基幹産業の統合とは、しばしば社会主義的経済政策の定番としてかつて見られた民間企業の強制的接収を通じた「国有化」とは全く異なるプロセスであることが確認されなければならない。
 持続可能的計画経済は国という政治主体を想定していないから(拙稿)、「国有化」はそもそもあり得ない。むしろ、資本主義経済体制下では多くの場合、株式会社形態で存在している基幹産業企業体を業界ごとに統合し、一つの会社に再編することを意味する。
 その点、今日の資本主義経済体制にあっては、各業種ごとに同業競合会社が何らかの業界団体を結成しており、協調的行動を取る。
 もっとも、この業界団体は協調的に生産活動そのものを展開するのではなく、多くの場合、業界全体の利益を保持するため、政界に働きかけるある種の圧力団体として機能し、しばしば汚職温床ともなる利権団体でもある。
 これに対して、将来の生産事業機構の前身を成す包括企業体は、協同的に生産活動を展開することを目的とした協同事業会社であり、資本主義下では独占禁止法で禁じられるようなトラストを形成することになる。従って、こうした前身的な包括企業体を解禁するために、既存の独占禁止法を改正する必要が生じる。
 包括企業体の法的地位は、その発足時点においては、株式会社ではなく、特殊な移行会社である。従って、その内部構造としても、将来の生産事業機構に準じた経営委員会や労働者代表委員会などの機関(拙稿)を擁する。
 こうした企業統合のプロセスは法律に基づき命令的に実施されるもので、各企業体が任意の合意(契約)に基づいて行う企業合併とは全く異なることにも留意される必要がある。


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