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反W杯&五輪デモ

2013-06-21 | 時評

ブラジルのデモ隊が、国の予算を来年のW杯や16年五輪に向けたインフラの整備より、福祉や教育など国民生活の向上に充てるよう訴えている。 

国際スポーツ大会の単発的な「経済効果」を狙って、華美な大会を政府‐資本一体で挙行する線香花火的なやり方は、長期的展望を失った最近の資本主義の常套となっている。

だが、ナショナリズムの感情に絡めた国際スポーツ大会への批判はなかなか浸透しない。そうした困難をW杯常連のブラジルから打破しようという動きは興味深いことだ。

ブラジルと言えば2000年代反グローバリゼーション運動の発祥地であり、03年以来の労働党政権もそうした運動を背景に生まれたのであるが、実際には西欧的な社会‐新自由主義路線にあり、ブラジルが資本主義の新たな優等生BRICsの一角を占めるに至ったのもその成果であった。同時に、デモの引き金を引いた現在のブラジル経済の不調は、そうした路線の躓きを示している。

とはいえ、資本主義の特定の局面―新自由主義―を批判するだけの運動では全く力不足だ。それは結局のところ、西欧社民主義と同様の結末に終わる。西欧的な基盤を持つ南米に発した反グローバリゼーション運動の行き詰まりはその証しである。

「W杯&五輪より福祉&教育!」との主張は、それ自体としては至極もっともだ。もっとも過ぎて拍子抜けする。そこから資本主義そのものの批判へと突き抜けなければ、それこそ一過性の“大会”で終わるだろう。


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