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スウェーデン憲法読解(連載第18回)

2015-02-28 | 〆スウェーデン憲法読解

第八章 法律及びその他の法令(続き)

基本法及び議会法の制定

第一四条

基本法は、二度の同文の議決により制定される。一回目の議決により、基本法案は未決の状態で承認される。二回目の議決は、一回目の議決の後に全国規模の議会選挙が実施され、新たに選挙された議会が集会した時よりも前に行われてはならない。さらに、憲法委員会が例外について議決しない限り、最初に議案が本会議に通知された時点と選挙との間には、九か月以上経過しなければならない。この例外の議決は、遅くとも議案の審査までに行わなければならず、構成員の六分の五が当該議決に賛成票を投じなければならない。

 本条から第十六条までは、基本法すなわち憲法の制定手続に関する特則である。ただし、初めに述べたように、スウェーデン基本法はこの統治法のほかに、王位継承法、出版の自由に関する法律、表現の自由に関する基本法を含む計四法典の集合体であるので、本条以下の規定は、これら四法典すべての制定に適用される。
 基本法は最高法規であるから、一般法律よりも厳重な手続によって制定され、本条は議会選挙をはさんで二度の議決を要求している。議会選挙を要求するのは、基本法の制定に関して、原則的に国民投票が要求されないことの代替としてであろう。

第一五条

議会は、最初に承認された基本法案を同時に否決する場合を除き、他の未決の状態にある基本法案に抵触する基本法案を未決の状態で承認してはならない。

 本条は、複数の基本法案を同時に審議する場合に、相互に矛盾した法案が議決されることのないよう配慮した規定である。憲法が複数の法典から成る国ならではの規定と言える。

第一六条

1 一〇分の一以上の議員の動議が提出され、かつ、三分の一以上の議員が当該動議に賛成票を投じた場合には、未決の状態にある基本法案についての国民投票が行われなければならない。当該動議は、議会が当該基本法案を未決の状態で承認した時から五日以内に提出されなければならない。当該動議は、委員会において審査してはならない。

2 当該国民投票は、第一四条に規定する議会の選挙と同時に実施される。当該国民投票に際しては、議会の選挙の投票権を有する者が未決の状態にある基本法案を承認するか否かを表明することができる。当該基本法案に反対した者が賛成した者よりも多く、かつ、反対票を投じた者の人数が議会選挙の際に投じられた有効投票の半数を超えている場合には、当該基本法案は否決される。他の場合には、議会は、最終審査のために当該基本法案を上程する。

 基本法制定に際して、原則的に国民投票は行なわれないが、議会の判断により、基本法制定過程での議会選挙に付随して国民投票が行なわれることがある選挙で信を問うだけでは済まされない場合に、有権者に直接賛否を問う趣旨である。

第一七条

1 議会法は、第一四条第一文から第三文まで及び第一五条に規定する方法により制定される。また、議会法は、投票者の四分の三以上かつ議員の過半数が議決に賛成票を投じた場合には、一回の議決のみにより制定することができる。

2 ただし、議会法における補足規定は、法律一般と同一の方法により制定される。

3 第一項の規定は、第二条第一項第四号に規定する法律の改正にも適用される。

 議会手続や議会の内部事項の詳細を定める議会法(国会法)は基本法を構成しないが、その重要性に鑑み、その制定は基本法に準じる。ただし、議会選挙は不要で、かつ所定の場合には一回の議決で決してよいものとされる。さらに、補足規定については通常の法律と同様の手続で制定できる。
 また、宗教的共同体に関する法律の制定も議会法の制定に準じる。歴史上王室主導での宗教改革を経験したスウェーデンにおける宗教問題の重要性を反映した規定である。


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