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スウェーデン憲法読解(連載第19回)

2015-03-01 | 〆スウェーデン憲法読解

第八章 法律及びその他の法令(続き)

法律の改廃

第一八条

1 法律は、法律によらずに改正し、又は廃止してはならない。

2 基本法又は議会法の改正又は廃止については、第一四条から第一七条までの規定が適用される。第二条第一項第四号に規定する法律については、第一七条第一項の規定が適用される。

 法律、基本法、議会法、議会法に準じる宗教団体法の改廃についても、制定に準じた手続が要求される。

法令の公布及び公刊

第一九条

1 議決された法律は、可能な限り速やかに政府により公布されなければならない。ただし、議会又は議会所属機関に関する規定で基本法又は議会法に取り入れられるべきではないものを含む法律は、議会が公布することができる。

2 法律は、可能な限り速やかに公刊されなければならない。法律に別段の定めがない限り、命令についても同様とする。

 法令の公布に関する手続的な規定である。法令の公布はその公刊をもって完了するので、公布と公刊を分けて規定している。

法制審議会

第二〇条

法案についての意見を表明するために、法制審議会を設置しなければならず、法制審議会には、最高裁判所及び最高行政裁判所の裁判官又は必要な場合には元裁判官が構成員として参加する。法制審議会の構成及び職務に関する詳細は、法律で定める。

第二一条

1 法制審議会の意見は、政府により、又は議会法が詳細を定めるところに従い、議会の委員会により徴される。

2 議会は次の各号に掲げる法律を議決する前に、意見を徴さなければならない。

一 出版の自由に関する基本法又はラジオ、テレビ及び類似の伝達手段、データベースから行なわれる公演並びに技術的記録における同様の表現の自由に関する基本法

二 公文書にアクセスする権利の制限に関する法律

三 第二章第一四条から第一六条まで、第二〇条又は第二五条に規定する法律[評者注・おおむね人権制約立法]

四 個人情報について全部又は一部を自動的に取り扱うことに関する法律

五 コミューンの税に関する法律又はコミューンに対する義務を含む法律

六 第二条第一項第一号若しくは第二号に規定する法律又は第一一章[評者注・司法]若しくは第一二章[評者注・行政]に規定する法律

七 第一号から第六号までに掲げる法律を改正し、又は廃止する法律

3 法制審議会の審議が問題の性質上、意義を喪失する可能性がある場合又は深刻な損害が生じるほど法律制定を遅らせる可能性がある場合には、第二項の規定は適用しない。議会が第二項に規定する事項について法律を制定すべきであると政府が提案する場合で、かつ、それ以前に法制審議会の意見が徴されなかった場合には、政府は、同時にその理由を議会に対し、説明しなければならない。法案について法制審議会の意見が徴されなかったことにより、法律の適用は、妨げられない。

第二二条

法制審議会の審議は、次の各号に掲げる事項を対象とする。

一 法案が基本法及び法秩序とどのような関係にあるか

二 法案の規定が相互にどのような関係にあるか

三 法案が法秩序の要請とどのような関係にあるか

四 定められた目的を法律が満たすものと規定し得る程度に法案が作成されているか否か

五 適用に際してどのような問題が生じ得るか

 法制審議会とは、法案作成に際して設置されるチェック機関であり、日本では内閣法制局と衆参両院法制局に相当するものとみなし得るが、常設機関ではなく、法案ごとに個別に設置される非常置機関である点に違いがある。また最高裁判所裁判官の参加が義務づけられているのが特徴である。これにより、最高裁判所裁判官は部分的に立法にも関与することになる。


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