ザ・コミュニスト

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共産論(連載第54回)

2019-07-03 | 〆共産論[増訂版]

第9章 非武装革命のプロセス

(3)革命体制を樹立する

◇対抗権力状況の解除
 革命的な民衆会議と既存政権の対抗権力状況を確定させた後、その状況を解除し、本格的な革命体制を樹立するまでの間が革命のプロセスにおける最大のクライマックスとなる。
 集団的不投票による革命は本質的に非武装革命であるから、まずは残存する旧体制政権との交渉によって平和裡に政権の移譲を実現させるべきである。これに合わせて街頭デモを組織して旧体制に圧力をかけることは効果的であり、むしろそうした民衆の意思表示なくしては旧体制は民衆会議を交渉相手として認めようとしないかもしれない。
 この局面で旧体制は警察や軍を動員して革命プロセスを粉砕しようとすることも考えられる。そうなると、民衆蜂起型の革命と同様の対峙状況が生じる。それを望むわけではないが、万一そのような状況が生じた場合、警察や軍を敵に回すことは得策でない。武装しない丸腰の革命である以上、圧倒的な物理力を持つ警察や軍に対して正面から対抗する力はないからである。
 そこで、旧体制が政権の引渡しに一切応じない場合であっても、直接的な実力行使によって政権を奪取する方法は採るべきでない。むしろ、旧体制が警察や軍を有効に動員することができないように、革命運動の過程で警察や軍の中堅幹部以下の層に浸透しておき、革命の最終段階では連携して革命体制樹立を導くことができるようにしておくことが望ましい。
 ちなみに、体制共産党の自主的解散による革命の場合は、以上のような面倒なプロセスをすべて省略できるはずであるが、共産党が自主的解散に強く抵抗した場合には、如上のプロセスを経る必要が生じるだろう。

◇移行期集中制
 さて、革命体制樹立まで無事に漕ぎつけた場合、民衆会議の構制も「さなぎ」の状態から脱皮する。まず民衆会議総会(以下、単に「総会」という)が暫定的な代議機関として招集される。これは将来、領域圏における全土民衆会議(または連合民衆会議)が創設されるまでの間の臨時施政機関でもある。(※)
 総会は迅速な決定能力を確保するため、最大200人程度の代議員で構成された比較的小規模な体制でスタートする。総会代議員は革命前民衆会議盟約員または法律家その他所定の専門資格を持つ者の中から抽選で選出された者が就き、その任期は1年とする(再選も可)。
 総会は「革命宣言」を採択し既存憲法を廃棄した後、「革命移行委員会(以下、移行委と略す)」を選出する。移行委はまさに臨時の革命中枢機関であるが、性格としては現行の内閣に近い。しかし、「ボス政治」を避けるため、移行委には委員長のような筆頭職は置かず、完全な合議制をもって運営される。
 移行委を構成する委員(以下、移行委員と略す)は所管分野ごとに総会によって総会代議員の中から任命されるが、その担当分野は旧政府の省庁に符丁を合わせる必要はなく、移行委員も省庁に常駐しない。この段階で残存している各省庁には移行委員の下で実務を担当する複数の「移行委員代理」を送り込む。
 移行委は総会の「革命宣言」に基づきいったん全権を掌握し、法律と同等の効力を有する「特別政令」によって統治する。こうした体制を「移行期集中制」と呼ぶ。
 これはありていに言って、民主主義の一時停止である。しかし、恐れる必要はない。およそ革命にあっては初期の体制移行期に必ずこうした一時期を経ることが避けられないのである。

※地方の各圏域にも同様の性格を持つ暫定民衆会議が設置され、民衆会議総会と連携しながら移行期集中体制を形成する。地方の暫定民衆会議では議長が事実上の地方首長として移行期プロセスを主導する。

◇「プロレタリアート独裁」との違い
 マルクス主義の革命理論ではプロレタリア革命後、共産主義社会へ移行するまでの過渡期の政治体制を指す概念として伝統的に「プロレタリアート独裁」という規定が行われてきたが、その内容があいまいであったため、最終的には「共産党独裁」にすりかえられてしまった。
 我々の移行期集中制もそうした「プロ独」の焼き直し概念のように疑われるかもしれないが、決してそうではない。むしろより厳格に移行期に限定しての短期的な政令統治システムである。従って、「独裁」という語が含意するような恣意的権力行使はあり得ないし、あってもならない。
 もっとも、既存憲法が廃棄されるのに伴い立憲政治は一時停止されるほか、全土に及ぶ代議機関もまだ暫定的な民衆会議総会という形でしか存在しないため、法律に基づく行政もペンディングとなる。ただし、移行委の特別政令は緊急的なもの(緊急政令)を除いて総会の承認を要するものとし、その専横を防ぐべきである。
 いずれにせよ、こうした移行期集中制は短期の期間限定的な体制でしかあり得ず、それが不必要に遷延することのないよう、可能限り早期に立憲体制への移行を促進することが要求されることは言うまでもない。


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