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共通世界語エスペランテート(連載第11回)

2019-07-05 | 〆共通世界語エスペランテート

第1部 エスペランテート総論

(10)エスペラント語の検証③

エスペラント語の自然言語近似性
 
世界語たりうる条件としての自然言語近似性という観点からみた場合、エスペラント語は自然言語にきわめて近似した体系をもっており、この条件は十分みたしているといえるかもしれない。
したがって、人間同士のコミュニケーションに供する言語という点からすれば、エスペラント語は世界語として十分に機能する。
 ただ、自然言語近似性とひとくちにいっても、習得容易性という点からは、さらにたちいって検証すべき点がある。その点、自然言語は従来、形態論的な特徴から屈折語・膠着語・孤立語・抱合語の四種に分類されてきた。
 このうち、屈折語は動詞の活用変化や名詞の格変化が複雑で、習得容易性という観点からはもっとも難攻的である。ただし、英語はその独異な発達過程により屈折性が希薄化している点で習得容易性をましたため、その点で他の屈折語系言語より優位性があるのだろう。
 他方、モンゴル語やトルコ語のほか、日本語もふくまれる膠着語は、動詞活用の規則性がたかく、かつ助詞や接辞の発達により文の構成が明瞭になりやすいという利点をもつが、動詞の活用変化も存在しない中国語のような孤立語の簡便さにはおとる。
 しかし、純粋な孤立語は単語の孤立性のゆえにいわゆる総合の指標がひくく、文意を理解するのに文脈の正確な分析が必要になるという点に困難さがある。その点、膠着語に分類されるインドネシア語やそれとほぼ同等なマレーシア語は動詞の活用変化が存在しない点で孤立語にちかいが、豊富な接辞により総合の指標をたかめている点で、世界語を創出するに際してもおおいに参考になるとおもわれる。
 なお、アメリカ先住民の言語などふるい起源をもつ少数言語にみられる典型的な抱合語は、動詞にさまざまな形態素をつめこんで、ひとつづきの文にひとしい内容を表現できるという点ではある意味で論理的な簡便さもみとめられるが―その点では、ある種の計画言語に応用可能な一面をもつ―、複雑な内容をつたえる場合には煩雑化しすぎる難点をかかえる。
 以上の四分類は古典的な大分類であって、実際のいきた自然言語は単純に分類できるものではないが、ここでエスペラント語をあらためて形態論的にみると、エスペラント語は語彙的に屈折語系の印欧語族、なかでもロマンス諸語の影響をうけているにもかかわらず、活用変化の簡素さや規則性、接辞のおおさといった特徴からみて、膠着語にちかいといえる。
 とはいえ、動詞の時制変化(過去・現在・未来三時制)はのこされているし、形容詞にも複数形が存在するなど、屈折語的な要素を排除しきれていない点もみとめられる。それらを些細な問題として等閑に付することも可能だが、より習得容易性をたかめるためには克服すべき点とみなすことも可能であろう。


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