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共産論(連載第53回)

2019-07-02 | 〆共産論[増訂版]

第9章 非武装革命のプロセス

(2)対抗権力を作り出す(続)

◇共産党に対抗する共産主義革命  
 当連載では「共産党によらない民衆による直接的な共産主義革命」を提唱しているわけであるが、これは主として共産党が支配政党ではない諸国を前提とする論である。そして、ソ連邦解体後の世界においては共産党が支配政党ではない諸国が大半を占めているため、これは大半の諸国に妥当する論ということになる。  
 とはいえ、本稿執筆時点でも共産党が一党支配する国家がいくつか残されている。その中には、将来的に共産党支配体制が崩壊する国も出てくるかもしれないが、さしあたり共産党支配体制が継続すると仮定して、それら共産党支配国家における「共産党によらない民衆による直接的な共産主義革命」とはどのようなものであり得るか。  
 これを簡単にまとめれば、「共産党に対抗する共産主義革命」ということになる。この規定も逆説的に聞こえるが、実のところ、中国を筆頭に、現在の共産党支配国家における共産党は、その党名にもかかわらず、共産主義を棚上げし、市場経済原理を大幅に取り込み、実質上は資本主義化する路線に転換している。
 言わば「共産党が指導する資本主義」である。こうしたねじれ路線にある限り、既成共産党はもはや共産主義から離反していると言い得るのであり、その限りで「共産党に対抗する共産主義革命」は逆説ではなくなるのである。

◇共産党の自主的解散?  
 とはいえ、共産党が共産党である限りは、本来の共産主義路線に回帰して、共産党主導による共産主義社会の建設に再び向かう可能性が消滅したわけではない。ここで想起するのは、マルクス(及びエンゲルス)が『共産党宣言』で示した共産主義革命のプロセスである。以下、引用してみる。

・・・・プロレタリア階級が、ブルジョワ階級との闘争のうちに必然的に階級にまで結集し、革命によって支配階級となり、支配階級として強力に古い生産諸関係を廃止すれば、この生産諸関係の廃止とともに、プロレタリア階級は、階級対立の、階級一般の存在条件を、従って階級としての自分自身の支配を廃止する。

 ここで言う「階級としての自分自身の支配」とは「共産党の支配」とイコールではないのだが、仮にそう解したとしても、マルクスによれば、共産党は古い生産諸関係=資本主義的生産諸関係の廃止に成功した暁には、自主的に解散されることが予定されているのである。  
 ところが、既成の体制共産党はこのような経緯をたどらず、共産党自らが古い生産諸関係=資本主義的生産諸関係に順応し、資本主義化の先頭に立っている状況にある。そのため、共産党の自主的解散の道は望めないわけである。

◇反共革命に非ず  
 ここで注意しなければならないのは、「共産党に対抗する共産主義革命」は「共産党に反対する革命」ではないということである。20世紀末のいわゆる東欧革命からソ連解体に至る過程では、ソ連に代表された共産党支配体制に対する民衆蜂起が、程度や形態の差はあれ東欧・ソ連諸国で連続的に契機し、体制崩壊を導いた。  
 この革命はソ連共産党をはじめとする体制共産党の政治的な抑圧と集産主義体制の失敗に対する民衆の反発・憎悪を基盤としていたがために、「共産党に反対する革命」の性質を帯び、結果として東欧・旧ソ連諸国では一様に市場経済化・資本主義化の道を歩み、今日に至っている。結局のところ、東欧革命は歴史の歯車を元に戻す反動革命に収斂し、真の共産主義社会を目指す前進的な革命とはならなかった。  
 「共産党に対抗する共産主義革命」は、そのような反動革命ではなく、前進的な革命であるから、単純に既成の体制共産党を攻撃し、解体するという体のものではないのである。

◇民衆会議=真のソヴィエト  
 「共産党に対抗する共産主義革命」においても、その方法として民衆会議をベースとして対抗権力状況を作り出す点は同様である。しかし、体制共産党との関係性は単純な敵対ではなく、並存あるいは内在である。言わば、共産党の内部に寄生する形で、展開されていく。  
 実際のところ、ロシア革命当時も、民衆はソヴィエト(評議会)を結成して帝政ロシアの既成議会に対抗したのだが、革命の進展過程でこうした民衆ソヴィエトはボリシェヴィキ→共産党に接収され、党の追認機関に換骨奪胎されてしまった。ソヴィエト連邦という国名に冠された「ソヴィエト」は、もはや形骸だけのものであった。
 このような苦い歴史を繰り返さないためにも、民衆会議は共産党に接収されることなく、寄生して成長していかなければならない。言わば、民衆会議こそ真のソヴィエトである。  
 たとえは良くないが、民衆会議は本物の寄生虫が宿主から養分を吸い取るのと同様に、体制共産党を内部から食するのである。理想的な革命プロセスとは、ロシア革命とは真逆に、民衆会議が共産党を接収し、解散へ導くことである。  
 ただ、それを警戒する共産党当局はまさに寄生虫駆除対策のように民衆会議を排除しにかかるかもしれず、そうなった場合は、海外での亡命民衆会議の結成という形で外在化せざるを得なくなるだろう。


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