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比較:影の警察国家(連載第15回)

2020-09-26 | 〆比較:影の警察国家

Ⅰ アメリカ―分権型多重警察国家

1‐5:内務省系警察集合体

 諸国では警察を所管する中央官庁であることが多い内務省であるが、アメリカ合衆国内務省は、諸国の例と異なり、主として連邦管理下の土地に係る連邦省庁として構制されている。そのため、土地管理総局が主要部局であるが、関連上、公園管理や野生動植物保護、先住民行政等にも及ぶ総合官庁である。
 しかし、単なる事務官庁ではなく、内務省の主要部局や下部機関には各々分掌する分野で警察権を付与された法執行部門が配されており、全体として、内務省系の警察集合体を形成している。
 まず中心部局である土地管理総局(Bureau of Land Management:BLM)には、法執行・保安部が付属しており、ここには、現場の法執行に当たる武装レンジャー隊員と連邦土地関連法規違反事案の捜査・立件に当たる特別捜査官が配されている。言わば、「連邦土地警察」である。
 また国立公園管理庁の下には、合衆国公園警察(United States Park Police)がある。公園警察は初代ワシントン大統領が任命した公園監視官に由来する歴史の古い警察であり、現行態勢で発足したのも1919年と、100年以上の歴史を持つ。
 公園警察の要員は600人余と決して大規模ではないが、まさに警察としての階級や組織を持ち、海上にも及ぶ広大な国立公園内の治安警備に当たる任務から、海上部隊や航空部隊、さらには重武装のSWATチームまで擁する本格的な警察組織である。
 さらに、合衆国魚類野生生物庁(United States Fish and Wildlife Service)は、その名のとおり、野生動植物保護を専門とするが、内部に小規模ながら法執行部を擁し、野生動植物保護に関連する連邦法規違反事案を摘発する任務を持つ。
 インディアン事務総局(Bureau of Indian Affairs :BIA) は、1824年の設立以来、先住民の管理統制機関として機能してきた歴史の古い機関であり、現在では全米の先住民居留地の管理を担っている。中でも、司法業務部は居留地における治安・司法・矯正全般の管理部局であり、その重要な任務として、居留地内の警察組織の運営がある。


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