ザ・コミュニスト

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ワクチン・プロパガンダ合戦

2021-07-18 | 時評

COVID‐19パンデミックも第二年度後半に突入し、もはやロックダウン(もどきを含む)によっても感染拡大防止効果を期待できず、ワクチンの普及が唯一の出口戦略となる中、ワクチンをめぐる世界の公衆衛生イデオローグと反ワクチン・デマゴーグのプロパガンダ合戦も熾烈になってきている。

公衆衛生イデオローグらは、かれらが期待する集団免疫の獲得のため接種率を上げようと、ワクチンの有効性と安全性の宣伝に躍起となっているが、政府機関や学術団体等の公式ウェブサイトなどを通じたワクチン宣伝工作はかえって逆効果である。

というのも、反ワクチン・デマゴーグとそのフォロワーらは、まさにそうした当局発表やそれに近い権威団体の情宣を最も信用しないからである。海外のある放送局のニュース番組で、解説者が「ワクチンに関する誤情報が最悪の形で“民主化”されている」と巧みに表現していたが、まさにその通りの事態である。

反ワクチン・デマゴーグの意図はよくわからないが、たいていは「反権力」のポーズを取りつつ、民衆の守護者を装って支持者を獲得し、名声や場合により関連書籍出版、ウェブサイトの広告収入などの個人的利益を狙っていると見える。

一方、民衆にとって、ワクチンへの不安は歴史的なものである。遡れば、ワクチンの元祖エドワード・ジェンナーが開発した牛痘接種による天然痘予防策にしても、当初は「牛痘を打つと、牛に変えられる」などという俗説が流布され、忌避者が出た。

伝統的なワクチンは細菌やウイルスなどの病原体をあえて人体に注入することで抗体を形成し予防するという逆説的な発想に基づく薬剤であるから、不安を助長しやすい。チンパンジーの風邪ウイルスを注入するアストラゼネカ製ワクチンも、この伝統型ワクチンに近い。

しかし、現在主流的となっているファイザー製とモデルナ製は遺伝物質メッセンジャーRNAの一部を接種することにより、体内でウイルスのたんぱく質を作成して免疫機能を刺激し、抗体を形成するという新しいタイプのワクチンであるが、このような新世代ワクチンも、遺伝子操作されるのではといった不安(「牛に変えられる」の遺伝子バージョン?)を惹起する。

こうした民衆の不安に付け込み、それを煽るのが反ワクチン・デマゴーグの手法である。さすがに、「牛痘接種で牛になる」というレベルの言説では通用しない現代のデマゴーグは、門外漢にとって真偽の判定が難しい疑似科学的言説を駆使する。*従って、真正な科学的根拠に基づきワクチンの問題性を指摘する言説を展開する者は、ここで言う反ワクチン・デマゴーグに当たらない。

それに対抗しようと、権力や権威にもの言わせて無条件的にワクチンの有効性・安全性を宣伝するイデオローグの手法に陥ることなく、ワクチンに関する客観的な理解を人々に浸透させる方法として、最低限度、次のことを提言する。


〇接種全般の意義について

 通常の治験の手順を同時進行する形でスピード承認されたワクチンの接種は、事後的な一種の集団的治験を兼ねていることを率直に認めること。👉現段階で接種を受けることは、そうした事後的治験に参加するに等しいことを周知させる。

〇有効性について

 †有効性(有効率)とは、承認前の治験で、ワクチンを接種されたグループと偽薬(プラセボ)を接種されたグループを比較した場合の感染率の差を表しているにすぎないことを明確に説明すること。👉有効性に関する過大な期待を与えない。

 †集団接種の開始から少なくとも一年を経た後に、新規感染者数や重症化率・死亡率等の推移のデータを基に結論づけること。👉現段階での暫定有効性を認めても、無条件に有効性を宣伝しない。

〇安全性について

 †接種後、接種者に起きた有害事象は、接種との因果関係の有無を問わず、全件情報開示すること。👉副反応かどうかは、情報開示後に時間をかけて検証する。

 †有害事象が起こりやすい人の類型(年齢層や性別、既往歴、基礎疾患、体質等)を抽出し、接種するかどうかの各自の判断材料に供すること。👉接種の任意性を万全に担保する。


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