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共産法の体系(連載第7回)

2020-01-24 | 〆共産法の体系[新訂版]

第1章 共産主義と法

(6)重層的法体系
 現代のブルジョワ法は、その適法範囲により大まかに国内法と国際法の二大系統に分けられるが、共産法にはこのような区別がない。というのも、共産社会は究極的に世界共同体というグローバルな民際機構に包摂されるからである。
 従って、共産法は全体的に言えば世界共同体「内部」の法にほかならないが、これを制定される場の観点から分類してみると―
 世界共同体総会を兼ねた世界民衆会議で制定される世界法、世界共同体域の大陸的な区分である汎域圏の民衆会議で制定される汎域圏法、世界共同体を構成する各領域圏の民衆会議で制定される領域圏法、連合領域圏を構成する準領域圏の民衆会議で制定される準領域圏法、地方自治体の民衆会議で制定される自治体法の五種を区別することができる。
 このうち世界法及び汎域圏法は現在の国際条約に相当し、領域圏法が国法、準領域圏法は州法、自治体法は自治体条例に相当するものである。従って、強いて内外二系統に分類するなら、世界法及び汎域圏法を民際法、領域圏法及び準領域圏法・自治体法を域内法と呼ぶことはできる。
 しかし、共産法における世界法はもはや国家主権によって妨げられることはないので、他の法と本質的に異なるものではない。異なるのは、それらの効力が及ぶ地理的な範囲である。すなわち、世界法は全世界、汎域圏法は汎域圏、領域圏法は領域圏、準領域圏法は準領域圏、自治体法は地方自治体に各々及ぶということになる。
 この五種の法の関係に上下優劣はない。世界法や汎域圏法は世界共同体や汎域圏に包摂される領域圏でもそのまま法として通用するのであり、領域圏法とは対等な関係に立つ。さらに、領域圏法と準領域圏法・自治体法の関係も対等である。
 こうした法種間の対等関係は世界共同体、汎域圏、領域圏、準領域圏、地方自治体の間で各々明確な役割分担がなされ、相互に競合しないことの帰結である。そのため、日本式の法令分類でいう条約、法律、条令といった階層的な名称区別も厳密には必要なく、すべては「法」である。 
 このように、共産法の体系は地球を一つに束ねる世界共同体の内部で上下に階層化されることなく重層的な体系を形成し、それぞれが明確な法目的をもって、その全体が有機的に機能していくことになるのである。

準領域圏または地方自治体の管轄事項について全土的な標準を定めておく必要があるときは、枠組み法という領域圏法により準領域圏法や自治体法を制約することがある。また、連邦型の連合領域圏内では、準領域圏法が原則として領域圏法に優先する(ただし、憲章は除く)。詳しくは、拙稿参照。


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