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共産法の体系(連載第31回)

2020-05-03 | 〆共産法の体系[新訂版]

第6章 犯則法の体系

(3)犯則行為の分類
 古典的な刑法では、犯罪を生命・身体・財産等の被侵害法益に応じて分類することが多いが、これもまた、犯罪と刑罰の対応関係を予め個別的に法定することに照応した体系の組み方と言える。
  しかし、処遇を矯正の必要度によって定める共産主義的な犯則法ではこのような被侵害法益による形式的な分類方式は採用されない。その代わりに、犯則行為の社会的な性質による分類が採用される。
 そのような分類として、経済事犯・生活事犯・人身事犯・政治事犯の四種を区別することができる。
 経済事犯は経済的秩序を乱す犯則であり、共産主義経済の柱となる経済計画に違反する生産・流通行為や無主物となる土地に対する不法占有などが代表例である。
 こうした経済事犯は組織ぐるみで実行されることも多いため、犯行者個人と並んで、組織体に対する強制解散や業務停止といった懲罰的処分が付加されることもあり得る。
 生活事犯は市民生活の平穏を侵害する犯則であり、窃盗のような財産犯のほか、住居侵入や盗聴・盗撮のようにプライバシーを侵害する行為など幅広い犯則が含まれる。数的には、当カテゴリーに分類される犯則が最も多い。
 とはいえ、このカテゴリーに分類される犯則は反社会性が軽微なものも多いため、全体として保護観察のような保護的処遇で済むケースが大半を占めるだろう。
 人身事犯は人の生命・身体を侵害する犯則であり、暴行、傷害、殺人をはじめ、性的犯行もここに含まれる。
 犯行者の病理性という点においては、この事犯が最も深刻で、反社会性パーソナリティ障碍(害)のような難治ケースも含まれるため、矯正処遇においては中心的な位置を占めるであろう。
 政治事犯は内乱や破壊活動のように、社会の政治的安定性を破壊する特殊な犯則ある。その犯行手段として上に掲げた三つの事犯に属する何らかの犯則が実行されるため、たいていは複合的な事犯となる。
 このカテゴリーに属する犯行者は特定の思想・信条・信仰を抱懐していることが多いが、いわゆる「思想犯」という特待的地位は保障されず、複合的事犯としての矯正処遇が与えられる。


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