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犯則と処遇(連載第38回)

2019-03-18 | 犯則と処遇

32 出頭令状について

 犯則捜査における見込み捜査禁止の鉄則とそこから導かれる物証演繹捜査、さらに科学捜査優先の鉄則からすれば、犯則捜査はまずもって物証の収集を先行させなければならない。とはいえ、収集した物証の意味を確認するためにも、関係者の供述を必要とすることはあり得るので、いずれは関係者の取調べに踏み切るべき場合がある。

 取調べの第一段階はまず任意出頭を求めて完全な任意で行なう取調べであり、可能な限りこの方法で捜査を完了させるべきであるが、対象者が非協力的な場合は一定の強制下に取り調べる必要がある。このような強制的取調べは、人身保護監の発する出頭令状に基づいて行なわなければならない。
 出頭令状には、その対象者別に二種があり、一つはまさに犯則行為の嫌疑がかかっている被疑者向けの対被疑者出頭令状であり、今ひとつは被疑者ではないが捜査中の事案について重要な情報を保持していると見られる者向けの対重要情報保持者出頭令状である。

 この出頭令状が発付されると、対象者は正当な理由のない限り、令状記載の場所で捜査機関の取調べを受ける義務を生じる。しかし、出頭令状のみで身柄を完全に拘束されることはなく、取調べ後は任意の場所へ帰所することができる。ここまでは、上記二種の出頭令状に共通の効果である。
 しかし、正当な理由がないのに取調べを回避した場合の効果には相違点がある。すなわち、被疑者が正当な理由なく取調べを回避した場合は、次の段階として身柄拘束(後に述べる仮留置)の理由となるのに対し、重要情報保持者の場合は、身柄拘束の理由とはならない。ただし、たびたび正当な理由なく取調べを回避すれば、司法妨害による制裁を受ける。

 出頭令状は、被疑者が正式に身柄を拘束されれば、その時点で失効するが、そうではない場合は、捜査終了時まで有効であり、いずれの対象者も捜査機関の指定した日時に取調べを受ける義務を生じる。
 捜査が終了した時は、捜査機関はすみやかに出頭令状を人身保護監に返還しなければならない。その意味で、出頭令状は正式捜査の開始と終了を人身保護監及び対象者に対して告知する機能を果たすと言える。


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