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旧ソ連憲法評注(連載第34回)

2015-01-10 | 〆ソヴィエト憲法評注

第二十一章 検察庁

 本章は、司法と関連の深い行政組織である検察制度について定めている。

第百六十四条

すべての省、国家委員会、官庁、企業、施設、団体、地方人民代議員ソヴィエトの執行処分機関、コルホーズ、協同組合その他の社会団体、公務員および市民による法律の正確で一様な執行にたいする最高の監督は、ソ連検事総長およびそれに従属する検事が行なう。

 ソ連の検察官は単なる公訴官ではなく、このように裁判所を含むあらゆる公的機関、諸団体から市民に至るまでの法律の遵守状況をまさに「検察」する官職であった。

第百六十五条

ソ連検事総長は、ソ連最高会議により任命され、それにたいして責任をおい、報告義務をもち、ソ連最高会議の会期と会期のあいだは、ソ連最高会議幹部会にたいして責任をおい、報告義務をもつ。

 検察権も究極的には最高会議に属するため、検察トップの検事総長の任命権は最高会議にあり、検事総長は最高会議によって監督された。

第百六十六条

連邦構成共和国、自治共和国、地方、州および自治州の検事は、ソ連検事総長が任命する。自治管区検事、地区検事および市検事は、連邦構成共和国検事が任命し、ソ連検事総長の承認をうける。

 連邦構成共和国以下の検察官の任命人事のすべてにソ連検事総長が関わる中央集権的な検察制度であった。

第百六十七条

ソ連検事総長および下級のすべての検事の任期は、五年である。

 ソ連の検察官は強大な監督権を持つ一方で、裁判官と同様に任期制とすることで、一定のバランスを取ろうとしていた。

第百六十八条

1 検察庁の諸機関は、いかなる地方機関からも独立してその権限を行使し、ソ連検事総長のみに従属する。

2 検察庁の諸機関の組織および活動手続きは、ソ連検察庁法が定める。

 検察庁は、ソ連検事総長を頂点に、徹底した中央集権制が採られていた。これも、共産党の一党支配制を法制面で担保する装置となっていただろう。


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