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共産教育論(連載第28回)

2018-12-25 | 〆共産教育論

Ⅴ 職業導入教育 

(2)労働理解と職場見学、職業想像
 職業導入教育の第一歩は、そもそも働くことの意義を理解することから始まる。とりわけ貨幣経済が存在せず、労働に賃金その他の物的報酬が伴わない共産主義社会では、生活の必要から働く必要がないため、働くことの意義について十分な理解を早くから涵養しておく必要性は高い。
 そのような労働理解が職業導入教育のまさしく導入部となる。その点に関連して、精神分析学者エーリッヒ・フロムは物質的な刺激だけが労働に対する刺激なのではなく、自負、社会的に認められること、働くこと自体の喜びといった刺激もあることを指摘している。
 基礎教育課程の労働理解においても、まずはこうした物質的な刺激によらない労働意欲に関して学ぶ必要がある。この部分は、基礎教育課程における原則形態である通信教材によることが可能である。
 しかし、当然ながら、こうした抽象的な労働理解だけでは職業導入教育として不十分であり、実際に労働現場を見学し、働く人の姿を実際に見聞する体験教育も必要である。このような職場見学は「社会科見学」のような方式で、予め教育用模範労働現場として指定された職場に専任教員が生徒を引率して実施する。
 ただし、全職種についてこのような見学を実施することは、実際上も、また安全上も不可能であるので、見学できない職場については動画通信教材で補充することになるだろう。
 このように、既存の職業について見聞を通じて理解を深めることが、職業導入教育前半の大きな目的であるが、貨幣経済によらない共産主義社会では、貨幣経済下なら生計が立たないような新たな職業を自ら創造する自由も拡大される。このような職業創造への視野を養うことも、職業導入教育の課題である。
 この部分は、既存職業に関する理解を前提とした次なる発展段階であるから、基礎教育課程後半期の課題となる。ここでは、自ら創造してみたい職業についての構想を生徒に各自練ってもらい、その可能性について具体的にレポートの形でまとめるなどの自由な想像形式が採られる。


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