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旧ソ連憲法評注(連載第26回)

2014-11-27 | 〆ソヴィエト憲法評注

第百十九条

ソ連最高会議は、両院合同会議においてソ連最高会議幹部会を選挙する。ソ連最高会議幹部会はソ連最高会議の常時活動する機関であり、その全活動についてソ連最高会議にたいして報告義務をもち、その会期と会期のあいだ、憲法の定める範囲内で、ソ連の国家権力の最高機関の職務を行なう。

 ソ連は最高会議を頂点とする会議体共和制であるため、常時集会できない最高会議に常設機関としての幹部会が置かれ、常務を担った。大統領のような単独元首を置かない会議体共和制では、ソヴィエト幹部会が集団的な元首となる。幹部会員は例外なくソ連共産党幹部でもあったため、結果的に最高会議を共産党が掌握することになった。

第百二十条

ソ連最高会議幹部会は、代議員のなかから選出される次の者より構成される。最高会議幹部会議長、第一副議長、各連邦構成共和国から一名ずつの副議長十五名、幹部会書記およびソ連最高会議幹部会員二十一名。

 幹部会の構成に関する規定である。15の連邦構成共和国から1名ずつ副議長を出すという形で構成共和国に形式的な配慮が示されていたが、議長職はロシア人が多かった。

第百二十一条

ソ連最高会議幹部会は、

一 ソ連最高会議の選挙を公示する。
二 ソ連最高会議の会期を招集する。
三 ソ連最高会議両院の常任委員会の活動を調整する。
四 ソ連憲法の遵守にたいする監督を行ない、連邦構成共和国の憲法および法律への適合を保障する。
五 ソ連の法律の解釈をしめす。
六 ソ連の条約を批准し、破棄する。
七 ソ連大臣会議および連邦構成共和国大臣会議の決定または処分が法律に適合しないとき、これを取消す。
八 軍の階級、外交官の等級その他の専門称号を制定し、軍の上級階級、外交官の等級その他の専門称号を授与する。
九 ソ連の勲章、記章およびソ連の名誉称号を制定し、ソ連の勲章、記章およびソ連の名誉称号を授与する。
十 ソ連の国籍取得を認め、ソ連の国籍の喪失および剥奪の問題ならびに亡命受入れの問題を解決する。
十一 全連邦大赦令を公布し、特赦を行なう。
十二 外国駐在および国際組織に派遣のソ連の外交代表を任命し、召還する。
十三 ソ連最高会議幹部会あての外国の外交代表の信任状および召喚状を受理する。
十四 ソ連国防会議を設置し、その構成員を承認し、ソ連軍の最高統帥部を任命し、交代させる。
十五 ソ連の防衛のため、個々の地域または全土に戒厳を布告する。
十六 総動員または一部動員を布告する。
十七 ソ連最高会議の会期と会期のあいだに、ソ連にたいする軍事攻撃があったとき、または侵略にたいする相互防衛にかんする条約上の義務を履行する必要がおきたとき、宣戦を布告する。
十八 ソ連の憲法および法律の定めるその他の権限を行使する。

 本条は幹部会の権限を18項目にわたり列挙したものであるが、いずれも日本国憲法では天皇の国事行為に匹敵するものであり、幹部会は次条で定める会期間の活動以外は象徴的な役割を果たすにすぎなかった。

第百二十二条

ソ連最高会議幹部会は、ソ連最高会議の会期と会期のあいだに、次の会期に事後承認を求めるという条件で、

一 必要な場合、すでに施行されているソ連の法令に改正を加える。
二 連邦構成共和国のあいだの境界の変更を承認する。
三 ソ連大臣会議の提案にもとづき、ソ連の省およびソ連の国家委員会を設置し、廃止する。
四 ソ連大臣会議議長の提案にもとづき、ソ連大臣会議の構成員である個々の者を解任し、任命する。

 本条は第百十九条にあったとおり、会期間最高機関として活動する幹部会の権限を列挙している。

第百二十三条

ソ連最高会議幹部会は、幹部会令を公布し、決定を採択する。

 最高会議幹部会には、政令に相当する法規の制定権もあった。

第百二十四条

1 ソ連最高会議の任期が満了したとき、ソ連最高会議幹部会は、新たに選挙されたソ連最高会議が新しい幹部会を組織するまで、その権限をひきつづきもつ。

2 新たに選挙されたソ連最高会議の招集は、選挙の日から二か月以内に、従来のソ連最高会議幹部会が行なう。

 最高会議の任期満了後の経過規定である。


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