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共産教育論(連載第9回)

2018-10-23 | 〆共産教育論

Ⅱ 義務保育制度

(2)義務保育制度の概要
 義務保育課程は、義務教育課程としての基礎教育課程の前段階として位置づけられるものであるが、制度としては基礎教育課程とは区別される。すなわち、基礎教育課程は市町村よりも広域的な地域圏を主体として提供されるが、義務保育課程は基礎自治体としての市町村を主体として提供される。
 義務保育は基礎教育課程の前段階とはいえ、対象者が乳児を含む非自立的・要保護的な幼児であり、そこには自ずと福祉的なケアの要素が不可欠であるため、福祉を含む生活行政全般を担う市町村の任務として割り当てたほうが適切だからである。
 保育は保育所を通じて提供される通所型サービスであるうえに、全員の義務となれば、極めて多数の保育所施設を要することになるが、その点、貨幣経済が廃される共産主義社会においては、各市町村が保育対象者全員を通所させ得るだけの保育所施設を確保することは可能であるので、保育所不足問題は解消される。
 ちなみに、私立の保育所は認められない。義務化された保育課程は、基礎教育課程と同様、全面的に公共的サービスとして、公的な責任体制の下に提供されるものとなるからである。
 義務保育の対象年齢は、生後6月から基礎教育年齢に達する6歳までである。すなわち、この年代の幼児は、保護者側の事情いかんにかかわらず、保育所に通所する義務があるということになる。ただし、義務的な保育時間は原則として午前または午後の半日である(半日保育制)。
 従って、例えば保護者が就労しておらず、終日子どもの世話が可能な環境にあるとしても、原則半日は子どもを保育所に通所させる義務があることになる。このようなサービスは一見不要不急にも見えるが、保護者にとっても半日の育児休息(レスパイト)としての意義が認められるであろう。
 なお、緊急的な場合を含めて保護者側の事情により半日を越えて託児する必要がある場合は、任意的な保育として時間延長することも認められる。同様に、保護者側の事情により託児の必要性が認められる場合は、生後6月未満の乳児であっても、任意保育として受け入れられるが、この場合は必要性に関する事前審査を要する。

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