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民衆会議/世界共同体論(連載第3回)

2017-08-12 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第1章 「真の民主主義」を求めて

(2)直接民主主義の不能性
 
議会制(広くは代議制)は一名、間接民主制とも呼ばれる。「間接」と称されるのは、議会制にあっては、議員が一般有権者の投票という形で付託を受け、代表者として政治を執行するという間接性に着目してのことである。
 しかし、この間接性が曲者で、議員は選挙民に直接拘束されないから、日常的には選挙民から自由に行動することができる。その自由な行動が理にかなっている限りでは、間接性にも利点はあるが、おうおうにして議員の行動は恣意的かつ支援団体・業界への利益誘導的なものとなりがちである。議会制の現状を見る限り、間接性の利点が真に生かされている国は極めて少ない。
 そうした間接民主制への不満は、議会制のような代表システムによらず、有権者が直接集会して政治的な決定に参画する直接民主制の魅力を高める。その際、古代ギリシャの都市国家アテネの民会制度が常にモデル化されてきた。現代では、スイスの州・準州(カントン)のレベルにおける州民総会制がよく引証される。
 しかし、こうした直接民主制を真の意味で実践することは不可能である。モデルとされるアテネの民会にしても、参加資格は成人男性市民に限られ、女性と奴隷の参加は許されていなかったという点では、事実上は成人男性による代議制とみなすこともできる制度であった。スイスの州民総会も現在では人口の少ない二つの州・準州で実践されているのみで、その余は地方議会制である。
 このように、純粋の直接民主制は比較的小さな政治単位では実践可能な余地はあるものの、そうした場合にあっても、参加資格に何らかの制限が加わることが多い。また直接民主制には有権者の意思がまさに直に政治に反映される利点は認められる反面、数の論理が間接民主制以上に重視され、多数派独裁的な暴民政治に陥る危険性もある。
 議会制はこうした直接民主制の欠陥を回避しつつ、議員を直接投票で選出することとして、間接民主制の枠内で直接性を高めようとしている面もあり、そうした限りでは合理性も認められるが、そのことがかえって当選に不可欠な資金と票田作りの必要から金権・パトロン政治を助長している。
 こうした難問を解決するには、直接/間接という二分法からいったん離れ、代議制であるが、より多くの一般市民が自ら代表者(代議員)として参加可能な民主制のあり方を改めて創案する必要があるのである。

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