ザ・コミュニスト

連載論文&時評ブログ 

年頭雑感2017

2017-01-01 | 年頭雑感

昨年の漢字は「金」だった。「金」が選ばれるのは、2000年以降で三度目となる。いささかうんざりだが、ある意味では21世紀初頭の現代日本を、さらには世界を象徴する文字なのかもしれない。人類はますます金万能主義にのめりこんでいるからである。

日本では昨年、原発震災から5年を経て、改めて原発避難児童に対するいじめの問題が表面化した。衝撃を覚えるのは、その内実が緊急避難当初以来の放射能忌避的ないじめに加えて、避難者が東電からの賠償金を受給できることにかこつけて多額の金銭をせびり取るたかり行為だったことである。

普通の子どもたち、それも小学生がこうした大人の恐喝まがいの行為に集団で走るのは、子どもの世界でも金万能的な価値観が蔓延していることを裏書きする。近年はマネー教育などと称して、歴史的に形成された数学的な観念にすぎない金銭価値を歴史から切り離し、絶対公理として技術的に教え込もうとするような潮流も見られるようである。これも資本主義のイデオロギー化が進行していることの一つの証であろうが、その中で子どもの世界も金に毒されているのかもしれない。

さらには福祉・医療など人道に関わる分野でも、障碍者施設襲撃テロ、解明は年越しながら病院内での意図的と見られる異物点滴による連続患者殺人疑惑など、信じ難い事件に見舞われた。こうした事象も、本来金銭価値を超えた人道分野でも、金銭価値の浸透による収益至上主義の風潮が現場の士気や初歩的な倫理感覚まで劣化させている可能性が想定される。

世界を見れば、国際的な番狂わせとなったドナルド・トランプの米大統領当選もまた、不動産王の富豪が米大統領に就くという点で、資本主義総本山米国での金と権力の結合をまざまざと見せつける結果となった。ある意味では金万能主義が隠れた国是である米国らしさの現れとも言えるが、今月末発足するトランプ新政権は軍部との結合にも強く傾斜しており、核戦力の強化に走る軍産複合体政権の性格を露にするかもしれない。そうなると、今年の漢字は「核」となりかねない。

一方、一昨年の「世界の漢字」として筆者が勝手に選定した「難」は、残念ながら昨年・今年とまだまだ続くだろう。もっとも、「難」の中心地の一つだったシリアでは、ロシアの軍事介入という荒業により全土停戦が年末駆け込みで成ったが、その過程で生じた目も当てられない人的物的被害は復興に歴史的時間を要する東日本大震災級のものである。

これに対し、トランプは私財を投げ打って難民を助けるのでも、依然として世界随一のアメリカの国富の一部を難民救済に供するのでもなく、入国禁止若しくはそれに準じた制限策をもって難民・移民の流入を阻止するという「米国優先」の独善的な施策に出ようとしている。「壁」も今年の漢字候補かもしれない。

「金」の殿堂である証券取引所ではトランプ・ショックから一転、強烈に金の臭いのするトランプ新大統領を好感して、活況の期待に沸く年初となるようだが、筆者にとっては、また一段と資本主義が限界を露呈する一年となる予感のする年初である。

コメント