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空虚な宣言

2012-09-15 | 時評

またもや「マニフェスト」である。ただし、今度は「革新的エネルギー・環境戦略」なる政府版「脱原発」マニフェスト。3年前の「生活第一」マニフェストも空虚であったが、今度の「脱原発」マニフェストはよりいっそう空虚である。

まず第一に、「2030年代の原発稼動ゼロ」を目標にするというが、2030年代に民主党ないし同党を主体とする政権が存在しているという保証は何もないことである。それどころか、今後の動向いかんによっては、民主党という政党自体が2030年代に存続しているかどうかすら見通せない情勢である。そういう意味において、野田首相の「見通せない将来について確定的なことを決めるのは無責任」とは至言である。

しかし、はっきり見通せる将来がある。それは次の総選挙では民主党が下野し、「親原発」の自民党が政権に復帰する公算が高いということだ。同党が政権復帰を果たせば、単なる閣議決定にすぎず、法案化されない「戦略」が直ちに撤回されることは明らかである。

要するに、今般の「戦略」とは将来的な遵守の担保が全くない単なる「宣言」にすぎない。そうした性格にふさわしく、この「革新的エネルギー・環境戦略」は20年乃至30年後の脱原発へ向けた具体的な行程も示さず、むしろかねてより批判の多いプルサーマル計画を含めて、当面は原発再稼動・維持を確保するところに真の狙いを持つ保守的「戦略」である。

メディアの中には今回の「戦略」とやらを善解して、矛盾を抱えつつも「脱原発」の方針への転換を一応示したものと評する向きもあるが、総選挙時の「生活第一」と同様、誤解を招く甘い論評である。

もっとも、「マニフェスト」に散々騙されて懲りた国民はもはやマニフェストやその類の何々戦略等々に再び騙されることはまずないであろうが。

[追記]
野田内閣は上記「戦略」の閣議決定をすら見送り、単に「戦略」を「踏まえた」施策の推進というあいまいな方針のみを閣議決定した。「戦略」の空虚さを内閣自ら認めたことになる。

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