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消費税―現代の年貢としての

2012-06-16 | 時評

消費増税が与野党三党の合作で実現される。間違いなく、これは「生活第一」を掲げて政権を勝ち取った民主党最大の―「生活二の次」の―置き土産となるだろう。 

それにしても、消費税ほど歴史的に大きな意味変化が起きた税制も珍しい。かつて、それは高い消費能力を持つ富裕層を標的とするある種社会主義的な税制であった。しかし、大衆消費社会の到来により、現代の消費税は日々の消費行動によって資本に奉仕する大衆≒労働者を標的とする庶民税となった。

庶民税と言えば、かつての農業封建社会では年貢であった。年貢は周知のとおり、農業生産物を物納する税制である。農業封建社会は生産を軸とする―反面、消費は富裕層の特権となる―典型的な生産社会であるから、生産物に直接課税することは為政者にとり最も手っ取り早い収奪手段であった。

これに対し、現代の大衆消費社会では、消費に間接課税することが為政者にとり最も手っ取り早い収奪手段となる。そうすることで、毎年一定量の消費を続ける我々のサイフから“平等に”収奪することができるからである。しかも、生産物課税のように天候等の自然条件に大きく左右されることもなく、安定的に税収を確保できる。 

こうして法人税や社会保険料負担の軽減を望む経済界の要求に応じ、現代の年貢としての消費増税に与野党一体で突き進むのは、まさに資本主義国家の土台‐上部構造の作動そのものなのである。

しかし、増税に怒る必要はない。分析することである。そして、資本主義からの脱出を志向することである。

・・・といっても一挙に革命まで跳ぶ必要はない。さしあたり消費増税に対しては、消費抑制によって抵抗することである。さすがに、安定税収確保のため大衆に毎年一定量の消費を義務づけるほど体制も図々しくはない。だから、不要不急の消費を避け、生きるうえで必要不可欠の消費に限定することである。このような行動はそれ自体としても、「大量消費」を特質とする現存資本主義の構造から抜け出す初めの半歩となるだろう。

もっとも、折からの不安定雇用の増大や全般的な賃金抑制に伴う労働者大衆の収入減という状況下での二段階に及ぶ消費増税は、必然的に消費を抑制させ、不況に追い打ちをかけることになる。これも資本主義自らがツケを払うべき矛盾現象である。

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