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市町村自治を守れ

2012-06-15 | 時評

大阪維新の会が強く求めていた大阪都構想を実現する法案をめぐる与野党五党協議が大詰めを迎えている。この法案の内容は、「大阪都」に限らず、全国どこでも政令指定都市と周辺市町村区域を特別区に解体し、大規模広域自治体の「都」に吸収できる仕組みを備えた一般法である。

こうした「改革」の趣旨として、大都市と道府県の「二重行政」の解消が喧伝されている。たしかに「二重行政」は非効率であり、住民の利益を害することもある。

そうした弊害の解消方法として「都構想」が狙うのは、市町村を解体して「都」のような集権的大規模自治体へ併合してしまうことである。「地方自治」ならぬ「地方集権」。こうした「改革」の先には道州制の実現がある。

しかしながら、これは真の意味での地方自治とは異なる「改革」である。地方自治の基本は何よりも市町村自治にある。市町村は、生活に密着した生活関連行政を担う最前線のコミューンとして、重要な役割を担っている。基礎的自治体とも呼ばれるゆえんである。こうした市町村自治の重要性は、多くの市町村自治体を崩壊・離散させた3・11でも再確認されたところであった。

ただ、実際に「二重行政」といった問題を生じるのは、大阪市に代表されるような大都市を優遇し、道府県に準じた権限を与える政策を採ってきたためである。そうした大都市制度に加え、昭和と平成の大合併によって大規模市・町が中央主導で作出され、市町村自治自体が揺らいできたのである。 

こうして市町村自治を揺るがす政策によって作り出された「二重行政」の問題を解消する真の方法は、まさに市町村自治を回復することである。つまり、政令指定都市と一般市町村という差別化政策を廃したうえ、指定都市に相当する権限をすべての市町村に付与すること、そして都道府県の権限をこそ警察や道路・河川管理、災害救難のような消極行政に限定し、「小さな政府」とすることである。

道州制にしても、これに絶対に反対する必要はなく、「小さな政府」としての道州制ならば、市町村自治を脅かすことなく、「地方自治の本旨」(憲法92条)の枠内であろう。

逆に「大きな政府」としての道州制は、国家主義・ファシズムとも共振する集権的制度である。国家主義諸勢力や維新の会のようなネオ・ファシスト勢力も「大きな道州制」に熱心なことには相応の理由があるのだ。

地方自治は「民主主義の小学校」とも呼ばれる。ならば地方自治の根幹を成す市町村自治を守ることは、民主主義を守ることである。

[追記]
本年7月6日にまとまった五党による法案骨子では「都」の命名は認めないことになったが、名称のいかんを問わず、市町村自治を軽視する実質は変わらない。

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