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先進国型失敗国家への道

2012-02-05 | 時評

日本が失敗国家になる━。

といっても、日本国債が大暴落する日のことではない。半世紀後、人口減の超少子・超高齢社会に到達した日本のことだ。

先般、国立社会保障・人口問題研究所が明らかにした近未来予測はすでに専門家たちがかねて警告していたことの集大成にすぎないとはいえ、改めて衝撃を与えた。人口減の超少子・超高齢社会とはどんな社会か。

まず生産年齢人口が激減するため、生産活動が停滞し、物不足やサービス供給の不全が常態化する一種の欠乏経済になるだろう。

ただ、労働者減により労働市場は売り手市場となるため働く者にとっては天国のように思えるが、対抗上、資本としては人手不足による賃金高騰を懸念して海外へ移転するから、国内産業の空洞化はいっそう進行するだろう。一方、海外へ移転する余力のない中小・零細資本は人手不足と国内市場縮小の両面から次々と倒産・廃業を余儀なくされるだろう。

そうしたことの結果、かえって高失業が常態化するだろう。

他方、人口の4割に達する膨大な高齢者を支えるだけの若年世代は存在せず、年金・介護制度もパンクし、ケアを受けられず放置される貧困要介護老人が続出するだろう。

こうした日本に見切りをつけて海外移住を選択する日本人も急増し、いっそう人口減に拍車をかけるだろう。

この構図はまさに失敗国家である。

通常、失敗国家(failed state)といえば、内乱や独裁、失政・腐敗によって破綻した人口過多の途上国を指して用いられる用語であるが、これは言わば途上国型失敗国家である。

それとは別に、先進国型失敗国家というものがある。これは、資本主義的成功を収めたいわゆる先進国が陥る人口減少型の失敗に起因している。言い換えれば「繁栄」がもたらす失敗である。

もっとも、50年先の話をされてもリアルな実感として迫ってこないかもしれない。しかし、前記予測はペースが早まればより実感の涌く30年後くらいまで繰り上がる可能性もある。

とはいえ、失敗国家への道から抜け出す時間的猶予が与えられていないわけではない。どうやって抜け出すか。

指摘したように、先進国型失敗国家は資本主義的成功ゆえに生ずる失敗に起因するという逆説を理解し、資本主義の内在的限界を直視すること。要するに、戦後日本―より広くとれば近代日本―の「成功体験」を根底から問い直すことである。そこにヒントが隠されている。

間違っても、「少子化対策」「高齢者対策」等々の政治的術策レベルの話に矮小化されたままで終わらないことを願う。

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