「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

15日に骨体操の講座を! 覚えたら生涯の財産

2007年06月30日 | 指圧の活動

  治療所の患者さん達が中心になり、ナンバ式骨(ほね)体操(12体操)をちゃんと覚えたい、との要望が多くありました。

  骨体操というのは、一口で言えば、従来の筋肉主動の体操でなく、“骨”主動での体操です。自分の身体の状態を弛めるためにも、指圧師が受け手の状態を知るためにも、きわめて有効な体操です。
  よし! 皆で長谷川智先生(心身技術研究所副所長)を川越にお呼びして、講座を開いてもらおう、と話が決まりました。しかし色々なスポーツ大会のシーズンと重なり、会場が決まるまでにずいぶん苦労してしまいました。

  講座は、7月15日(日)午前10時からの2時間です。あらかじめ光文社発行の骨体操の本を購入し勉強してから参加しよう、と皆さんとても意欲的です。
  そもそも、こんなに骨体操がわが治療所でブームになったのは、時々患者さんを長谷川先生の講座に誘って行き、身体の使い方などを指導いただいていたからです。体操をやってみると、身体の弛みにくい大事なポイントが弛んでくるのが分かります。当然、治療効果もかなりアップします。
  治療中にそんな話をしながら圧していると、興味を持たれる方がいて、そこでまた少し体操を試してもらうと、わずかなことで身体がよい変化をみせることが多くありました。つい嬉しくなって、やり過ぎてマイナス効果を出してしまうこともあったほどです。

 「やはり正しい指導の下でやらなければ」。 効果の高いものほど、両刃の剣であることがよく分かりました。そこで、どうせやるなら、正しく習得しようということになったのです。
  長谷川先生の講座は、通常は小人数制で、細やかに目が行き届くように配慮されています。しかし今回の川越講座は、特別に“会場に入れる限りはOK”との了解をいただいています。めったに体験できることではありません、ものすごく楽しみです。
 “動き”の体験講座なので、会場のスペースを考慮して30名定員でいこう、と考えましたが、どうやらこの人数を上回りそうな人気です。会場の契約、下見、下準備等、まとまるまでが何かと忙しく、仕事をしながら別に何かをやる、というのは大変なことだと思いました。
  先生の送迎の手配もできました、あとは当日を楽しみに待つだけです。年輩の方も、病床にあっても、足が不自由でも――、さらに、寝ていても、座っていてもできる骨体操は、覚えてしまえば自分の財産です。

  参加者全員で、この体操を身につけることができたらいいなぁ、と思っています。ワクワク!!!


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嬰児の内反足、長期戦覚悟で治療を開始

2007年06月20日 | 素晴らしい指圧効果

  1歳半のR君は、生まれつきの内反足(ないはんそく)で、足先が極端に内側に曲がっています。このままでは、歩けない子になってしまうと医師に言われ、生後1週間目から病院での治療が始まったそうです。
  まずギブスで、左足全体を3カ月間固定。その後さらに装具を着けての生活です。その上で生後半年たったときに、外科手術を受けたという
です。
  R君は、指圧歴20年になるSさんの、可愛い可愛い初孫です。生まれたときから、ずっと写真を見せてもらっていたので、親しみを感じていました。R君の小さな足にメスが入ることになった時、S さんはずいぶん心配していたのです。

  先日、また写真を持って来院されたので、すぐにR君だと分かりました。でも今回は目的が違っていました。R君が立っている写真ばかりで、しかも左足がすべて極端に内側を向いているのです。S さん、このR君の足が心配で、指圧での治療が可能かどうかが知りたいようです。
  生まれた時の状態はどうだったのか、どのような処置がされたのか、中に異物が入っているのか、今後の治療の予定はどうなのか。何を聞いても、定かな答えが1つも返ってきません。
  写真だけでは心許(こころもと)ないので、後日お嫁さんとR君を連れてくるから診てください、ということになりました。

  指圧での治療は、母親の「どうしても治したい」という思いがなくては無理であることをよく説明しました。その意思を確かめた上で、できるものであれば喜んでやらせて頂きます、ということです。
  今月1日の朝でした。雨の中をSさん、R君、お母さんの3人が来院。R君は、思っていたよりは元気でした。確かに左足が気になります。お祖母ちゃまが心配していらっしゃるのが、理解できました。
  しかしお母さんの指圧治療に対する気持ちが、今一つ “どうかな?” という感じです。翌日、さっそくあずかった写真を持って行き、鈴木先生の指導をいただきました。先生は写真を見て、「これならできるだろう」と言われ、色々とアドバイスをしてくださいました。

  予約が立て込んでいるので、初診は6月12日(火)からということで決定。朝一番で、通常の仕事の前の施術です。
  R君、少しけげんな表情でママにだっこされてやってきました。左足の筋肉は、ギブスの影響でかなり痩せて硬くなってしまっています。しかも右よりかなり短いのです。その分、右足に負担が掛かるようです。必要以上に疲労し張りがでていました。
 
  人間の一生の中で、生まれてからの3カ月間は、すべての点で1番成長するときです。体重も3カ月で倍になり、1歳で3倍になるのですから、いかにこの “成長期” が大事であるか分かります。
  この大事な期間中、ギブスで固定されていたのですから、これを取り戻すということの大変さ、厳しさは圧し手にとっても大きいプレッシャーです。
  足全体の色が悪いのには驚きました。茶色いだけでなく、黄色もかなり強いのです。そうとう循環が悪くなっています。左足が弱い分、右足に負担がかかっているようで、膝から下がO脚のように、異様に外側に曲がっています。

  R君は嫌がることもなく、そこそこ圧させてくれます。施術は火・木・金の朝と決まりました。週3回の治療です。
   2回目にもう好転反応の発熱があり、右足が少しスッキリして、顔色から茶色がわずかに減っていました。足の黄色も少なくなったように思いました。3回目の治療時には、R君の表情から“けげんさ”が消え、安心したようです。
  彼と少し遊びました。この先何カ月かかかります。早く仲良しのお友達になりたい、と思いながら圧しています。
  3回目で右足の筋肉の状態に随分改善がみえます。しかし左鼠径部を圧すときは、決まって私の手を払おうとします。一番不安を感じる箇所なのでしょう。そこが異常に硬く簡単には弛みそうにありません。

  18日にも鈴木先生の治療を受けながら、色々指導をいただきました。要約すれば、“あせらずやること”です。2歳になればもう少し聞き分けもよくなるでしょうから、そのときまで待って始めようかとも考えましたが、今始めてみて、これでよかったと感じています。
  この先半年延ばせば、聞き分けは良くなるでしょうが、身体の色々な部分への負担は、その間、増すばかりです。少しでも早く治療開始できたことに安堵を覚えています。
  この先どんな変化をしていくものか、またよい報告ができるように頑張っていこう、と少し緊張しています。


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可愛い指圧愛好者、自分で予約の電話

2007年06月19日 | 素晴らしい指圧効果
  私の “はにかみ王子” Y 君(小学1年生・男児)から、治療所に電話が入りました。16日の夕方です。

 「もしもし〇〇Yです。こんにちは! また指圧をしてください」

  彼一流の、棒読み状態での話し方です。

 「こんにちは! Y君、どこか痛いの?」
 「………」
 「どうしたの? どこか具合がわるいの?」
 「………また指圧して」
 「わかった、じゃあ8時頃にくる?」
 「うん!」

  午後8時。いつものように、ピョンピョン跳び跳ねながら、嬉しそうにやってきました。ところがY君、目の下に隈(くま)をつくっています。今日は、いったい何があったのでしょう???

  お母さんが 「Yは今日お友達とそのお母さんに、△△公園へ連れていってもらったのですが、池に落ちてずぶ濡れになり、怯えて泣いて大変だったんです。死ぬかと思ったみたいです」 と話してくれました。
  なるほど、身体中が固まっています。どこが痛いとか辛いとかというより、激しいショックで全身の機能が停滞しているような感じです。
  背中に、ショックにより心臓に負担がかかったとみられる硬さがありました。腰には、腎臓にも負担がかかったとおもわれる硬さがあります。
  お母さんの話では、Y君は 「足が重ーい」 と言って、足をずるずる引きずりながら歩いていたそうです。子供心に、指圧をしてもらえば楽になれると思ったようで、母親に話して自分で電話をかけてきたのです。
  治療中も、あまりふざけずに圧させていました。お腹が弛んだので治療を終えましたが、直後ここが痛いと左胸をさすりました。

 「大丈夫、痛みが出たほうがいい場合もあるから! 今夜はすぐに寝ようね」

  神妙にうなずき、帰りながら、いつものようにちぎれるほど手を振っていました。可愛らしい Y 君、さすがに今日は少し元気がありませんでした。

  夏に向かい痛ましい水の事故が毎年跡を断ちません。子供も大きくなるほど行動範囲が広がり、親が守り切れないケースが増えてきます。
  今回の件も、今後の教訓になればいいな、と思いながら後ろ姿を見送りました。

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“ 飲むときは、身体と相談して ”

2007年06月18日 | 素晴らしい指圧効果

  事業家であり画家でもあるM(69歳男性)さん、いつもにこやかで、素敵な紳士です。
  ところが16日の朝のことです。青ざめた顔色をして、見るからに具合が悪そうな身体を、引きずるようにして治療所に来られました。こういう状態の方は普通ではあまり指圧に来ません、病院へ行くからです。

  「どうしたんですか?」
  ビックリして聞くと、前夜は仕事で夕食が遅くなってしまった、ということです。

 「おまけにグラスが大きかったんです」
  冗談めかして言っていましたが、アルコールの摂取も過ぎたのでしょう。夜中の3時に、吐いて下して大変だったそうです。
 「まだ水を飲んでも戻してしまう」と仰っていましたが、顔色が悪くげんなりしています。ムカムカして気持ちが悪いのも、まだ続いているとのことでした。
  このようなときは、分かり切っているようでも念のため、鈴木林三先生に電話で指導を受けることにしています。さっそく状態を話しました。

 「気持ち悪いなら、うつ伏せで圧すのは様子を見てからにしたらいい。顔色や悪寒等への対応は、初めに上肢、そして下肢を圧してみなさい」
  先生の言葉として耳に入ってくると、不思議に自信をもって治療に向かえます。
  注意深く観察しながら圧してみますと、上肢を圧しただけで顔色がよくなりました。続いて下肢を圧し、右足が温かくなり始めたころ「悪寒がスーッと消えてきました」と言われ、全体に楽(らく)になった様子が感じられました。
  改めて“人間の身体ってすごいなぁ”と感心しました。上肢と下肢を圧しただけで、こんなに楽になれるのが不思議です。ついさっきまで、あんなに辛(つら)そうだったのです。
  でもとりあえず、うつ伏せで圧すのは止めて、腹部の指圧に重点をおきました。

  さすがにミズオチがかなり張っています。ゆっくり圧していく中に、“これならうつ伏せでも圧せそう”との手応えを感じました。そこで、うつ伏せになってもらって圧したところ、よく弛み、ミズオチの張りも取れました。満足できる手応えを得て、今回の治療を終えることができたのです。

 「このあと、お昼頃にぬるい白湯(さゆ)を少し含んでみて、大丈夫であれば、空腹感を感じた後に少しづつ食べてみてください」
 「いやー、スッキリしました。ここのところ、あんまり調子がいいので、つい飲み過ぎていましたから。いやー、楽になった! よかった、よかった」

  とても喜んで帰られましたので、その日のうちに一部始終を先生に報告しました。

 「まず上肢で神経的な疲労を取ってから、下肢で内蔵の疲れを取るから楽になる。それから全身を圧すことの効果は計り知れないものがある。この方、こういうことは前にもあったんじゃない?」
 「?? 指圧を始めて1年4カ月です。その当時は、好きなお酒もあまり飲めなくなっていて、指圧を受け始めてからは“また美味しく飲めるようになった”と喜んでいましたから、以前に同じようなことがあったかもしれません」

  すっかりご隠居さんのようになっていたMさんですが、今は新しい事業をつぎつぎに展開して、とてもイキイキしていらっしゃいます。すっかり若返ってしまい、指圧はどんな予定より優先して受けに来てくれます。
  さすがに芸術家だけあって、身体が弛むと、仕事やその他への発想が変わることが、よく理解できるようです。

  体調が悪い時ほど、指圧の有り難さを感じるものです。圧し手もその効果に驚きます。圧されるほうも楽になるのがよく分かります。また指圧愛好者が1人増えました。
  鈴木先生の適切なアドバイスには、いつもながら感謝しています。有難うございます。


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夢中で目標達成、さあ新しい世界へ飛躍を!!

2007年06月14日 | 雑感

  この2カ月間、寝ても醒めても“スクワット”に夢中になっていて、とにかく楽しい毎日でした。
 “指づくり”と同じ感覚でやればいい、という鈴木先生の言葉が大きなヒントになったおかげです。それが日夜、頭の中を廻り続けて、片時も離れませんでした。

  ここ数日、その熱が少し冷め始めたかな? と感じています。私は指づくりに確かな手応えを得た、昨年暮のことを思い出していました。そのとき思わず先生に言ってしまったのです。

 「えーっ! “〇〇”とおなじなんだ!」(“
〇〇”は、まだ掴んでいない人のために、あえて伏せておきます)
  「そうだよ」
  「指づくりができたら、どんなに素晴らしい世界に入れるのかと、大きな夢を目一杯広げていたのに“〇〇”なんだ!」
 「そういう発想をするのか」

   自分の意識が「燃え尽き症候群」のようになり、力が抜けてしまったのだと思います。先生にはそれが伝わっていたようで、めずらしくずいぶん慰め、励まして下さいました。

  そのときほどではないのですが、今回もなんとなく醒(さ)めたこの感じ。スクワットが「できた」という実感からかしら? もう1日1回ではなく、何回かやるようになっています。
  11日(月)、治療前に先生に見ていただきました。

 「ウン、できたか」
 「まだ上達の余地はありますか?」
 「それだけ動ければ、十分」

  先生の前なので少し緊張しました、わずかに“意識”が入りました。でもあのひどいバキバキ音はもう出ません。
  少し細かい点を注意されましたが、できていたのは事実です。これまでは、
過程が面白く、夢中になれるのが楽しかったのかも分かりません。だからまた、何だかつまらなくなってきたのでしょう。

  私の話を聞いた先生は、はっきり言われました。
 「その気持を卒業しなさい。できたことを楽しみなさい。熱い気持ばかりではダメだ」

 「自分の殻を脱いで、新たな自分に生まれ変わらなくてはならないのでしょうか?」
  私が考えさせられたことです。
  気が付けばもう結構な歳です。いい加減に成熟しなければ、「変わり時」を失うことになってしまうかも分かりません。
  先生が仰るように「できた身体を誉めてあげる」「できたことを楽しむ」方向へむくことが、ステップアップした新たな世界へ入る道なのだ、と頭では理解できました。

  気持がついて行くには、少し時間がかかりそうです。今までと違う自分に生まれ変わらなくてはなりません。きっとなれると信じています――


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私の “はにかみ王子” Y 君の治療

2007年06月13日 | 素晴らしい指圧効果
  6月9日の夕方仕事をしていると、5月1日と3日のブログに投稿したY君とそのお母さんが、ニコニコしながら顔を出しました。前回の指圧治療で、“楽になる”という体験をしたので、Y君がまた指圧を受けたくなったようです。

 「ここが痛いので指圧を受けたいです」

   はにかみながら、棒読みのように言うのです。見れば右足をさすっています。何があったのか分かりませんが、ほんとうに痛そうでした。私にとっての“はにかみ王子”は、高校生ゴルファーの石川遼クンでなく、小学校1年生のY君です。こんな可愛い患者さんの希望ですから、もちろん二つ返事です。

 「じゃあ、御飯を食べてから7時半頃にいらっしゃい!」
 「ウン!」

  大きくうなずいて嬉しそうに帰ったY君。7時半ピッタリ、飛び跳ねながらお母さんとやってきました。足が痛いはずなのに? すごく嬉しそうです。
  圧してみると、足の指の並び方がバラバラです。そのせいか、今日階段から落ちて腕に傷をつくったと言って見せてくれました。前回の左頬の傷痕は、信じられないくらいきれいになっています。これはもう大丈夫でしょう。

  さっそく痛いという右足から圧してみました。子供の身体は、こじれていないので分かりやすい。お母さんと私の会話です。

 「Y君は、いつも夜何時頃寝るの?」
 「8時半には寝かせようと思っていますが、9時になってしまうこともあります」
 「とくに遅いということではないですね。でもこの足の痛みは、夜更しのせいだと思うんだけど」
 「えーっ! 実は昨夜、普段どおり8時半頃に寝たんだけど、夜中の12時に突然起きたんです。漢字の宿題があったのを思い出し、一生懸命やりだして全部終わってから寝ました」

   私は思わずY君に言いました。
 「それだ! そのせいか、少し風邪気味にもなりかけてるね。夜はちゃんと寝ようね、夜中にやらないで早起きしてやればよかったね」

「そうか! Y、今度忘れたらそうしようね」
  お母さんもすぐ気付いてくれたようです。可愛いY君の信頼をまたまたしっかり得ることができました。かつて一番苦手であった『子供の治療』が、こんなに楽しくなるなんて夢のようです。

  Y君としばらく遊んで、心弾む気分で一日の仕事を終えることができました。基本指圧に感謝!!

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指圧で炎症を抑え、外科手術を回避

2007年06月12日 | 素晴らしい指圧効果

  6月6日、少し遅い昼食を摂っていると電話がかかってきました。Nさん(43歳男性)からです。

 「今群馬の高崎の病院からです。昨夜から腹痛があり普通じゃないなと思って、会社の社長が知ってる病院で受診したんだけど、白血球が1万5千もあって虫垂炎と診断された。すぐに開復手術と言われているんです。切るのはイヤなんだけど、先生は盲腸治せる?」
 「できるけど」
 「じゃあこれからすぐ運転して帰るからお願いできますか」
 「わかった! とりあえず8時に来てください」
 「ハイッ! 今から帰ると4時半までには、家に着くと思います」

  とりあえず予約の仕事がすべて終わる8時としましたが、少しでも早いほうがよさそうなので、必死に時間の工面をして、6時に治療できることになりました。
  約束の時間の少し前、身体をゆがめてやっとやっと歩いて来たNさん。動くと腹部に響いて痛いそうです。少しの間も、痛みでじっと寝ておれません。よくこんな状態で運転してきたものだ、と本人自身が驚いていました。ただ切られたくない一心だったようです。

  いつも緊急で難しそうな仕事の時は、必ず鈴木林三先生の指導を受けることにしています。盲腸炎は、過去3回の治療経験がありましたが、
どれも1回の施術でクリアーできていました。この日は先生の定休日でもあり、どうしようかと迷ったのですが、やはり電話で状態を話して指導をいただきました。
  施術の手順、施術上の注意等伺った後、先生から次のような話がありました。

 「それは、1度じゃ無理かもしれない。近々、もう1回圧すようになるかもしれない。もし病院に行くようなら、行ってもらってもかまわないから」
  いつもの指導と少々違う言葉でしたので、耳の奥に残りました。

  右下肢からの施術開始ですが、痛くて姿勢をつくれないため、ちゃんと圧せる状態ではありません。そこそこ圧せるようになるまでに、かなり時間がかかってしまいました。
  うつ伏せで圧すことはまったく無理です。「ここまでかな?」と、ある程度の手応えを得るまで2時間かかりました。ご本人はずいぶん楽になって、「なんか腹減ってきたなぁ」「何か飲みたいなぁ」などと言い始めました。少しだけ痛みがまだあるけど楽になったと喜んでいました。
  腹部の緩みは、まだ正常とはいえません。「
とりあえず明日また電話をください」と言って治療を終えました。ところが寝る前にオレンジジュースを飲んだせいか、夜中の1時ごろから、激しい腹部の痛みで朝まで眠れなかったというのです。次の朝、一番で私に電話があり、群馬の社長から「憩室炎(けいしつえん=大腸の病気)の可能性もあるそうだから早く病院へ行ってくれ」と言われたそうです。
  ビックリです! 鈴木先生が言われた“近々”とは、昨夜1時過ぎだったようです。やはり病院に行くことになりました! スタッフ全員で“何で分かるの?”と不思議がったものです。
 
  後日、治療を受けながら先生に報告しました。それにしても何で様子を読めるのか、不思議なので聞いてみました。

  「頭で考えていないから――」

  そうか、感覚なんだ! 磨き抜かれた感覚は、すごい! 私は、実際に電話でやりとりしているので、なんとなく納得できます。今までも何度も同じようなことがありました。
  Nさんは憩室炎と診断され、その場で入院。状態がよかったので、外科手術をせずに絶食で点滴治療となり、その日の内に外出許可を得て挨拶にみえたのでビックリしました。
  命に係わるときは仕方がありませんが、できるたけ身体にメスが入ることは避けたほうがいいのです。その影響は身体中に広がりますから。
  昔、盲腸炎で開腹したら違っていて、切ったついでだから虫垂を取ったというケースがよくありました。今回がそれであったかどうかは分かりません。ただ、Nさんが元気を取り戻すための、お手伝いはできた気がしています。
  施術中、Nさんの身体がカーッとすごく発熱し、局部の熱が全身に散りました。これが2度あって局部の熱がとれたのです。

  緊張感が高まる仕事、嫌いではありません。それにしてもいつもながらの適切な指導、鈴木先生には心から感謝しています。


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先生の治療所が引越し、新しい時を予感

2007年06月04日 | 雑感

  鈴木林三先生の治療所が、6月いっぱいで引っ越しをすることに決まりました。新しい治療所は今の場所から歩いて2分ほどで、ずいぶん広くなるようです。勉強会もより充実することでしょう、喜ばしいかぎりです。

  先生が独立開業されたことを小耳にはさんだので、さっそく訪ねたのが平成6年4月18日でした。指圧学校卒業後18年ぶりで、懐かしく、指圧を受けながら昔話に花が咲いたのでした。
  そのときの先生は以前とほとんどお変わりなく、頭に白いものがわずか目についただけ。そして、話の中で先生が言われたことを、私は今もよく覚えています。

 「全身どこを圧すのも同じ圧し方なんだよ」
 「エーッ!それ違うと思います!」

  私の受け答えに、先生は言葉を重ねました。

 「肩甲下部の圧し方が基本で、前頸部からお腹まですべて同じ圧し方で圧せるんだよ」

  寝耳に水とは、このことでした。自分の実技担当の先生であったことも忘れて、逆らっていました。しかしそれ以来、前頸部指圧の素晴らしさに魅せられ、ひたすら前頸部を圧してみたい一心で、勉強に治療にと通い詰めました。以来10数年、1回も休むことなく精進してきたのです。
  その治療所&学び舎(や)がなくなると思うと、正直なところ寂しさが込み上げます。そこで数え切れないほどの教えを受けました。そこで泣いたり、笑ったり…、その時々の驚きや感動が数限りなく甦ります。

  状況が変わると、それに付随して思ってもいなかったことが起きたりするものです。先生の基本指圧を学ぶ者にとっては、より前進すべき「時」が到来したのかも分かりません。
  先生はご自身の還暦祝いの席上、「70歳までは教える」と言われました。あと5年です。髪の白いものも随分増えられたこの頃ですが、この5年にどんな展開があるのでしょうか。
  私の心裡には、いま楽しみと寂しさが同居しています。


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