6月6日、少し遅い昼食を摂っていると電話がかかってきました。Nさん(43歳男性)からです。
「今群馬の高崎の病院からです。昨夜から腹痛があり普通じゃないなと思って、会社の社長が知ってる病院で受診したんだけど、白血球が1万5千もあって虫垂炎と診断された。すぐに開復手術と言われているんです。切るのはイヤなんだけど、先生は盲腸治せる?」
「できるけど」
「じゃあこれからすぐ運転して帰るからお願いできますか」
「わかった! とりあえず8時に来てください」
「ハイッ! 今から帰ると4時半までには、家に着くと思います」
とりあえず予約の仕事がすべて終わる8時としましたが、少しでも早いほうがよさそうなので、必死に時間の工面をして、6時に治療できることになりました。
約束の時間の少し前、身体をゆがめてやっとやっと歩いて来たNさん。動くと腹部に響いて痛いそうです。少しの間も、痛みでじっと寝ておれません。よくこんな状態で運転してきたものだ、と本人自身が驚いていました。ただ切られたくない一心だったようです。
いつも緊急で難しそうな仕事の時は、必ず鈴木林三先生の指導を受けることにしています。盲腸炎は、過去3回の治療経験がありましたが、どれも1回の施術でクリアーできていました。この日は先生の定休日でもあり、どうしようかと迷ったのですが、やはり電話で状態を話して指導をいただきました。
施術の手順、施術上の注意等伺った後、先生から次のような話がありました。
「それは、1度じゃ無理かもしれない。近々、もう1回圧すようになるかもしれない。もし病院に行くようなら、行ってもらってもかまわないから」
いつもの指導と少々違う言葉でしたので、耳の奥に残りました。
右下肢からの施術開始ですが、痛くて姿勢をつくれないため、ちゃんと圧せる状態ではありません。そこそこ圧せるようになるまでに、かなり時間がかかってしまいました。
うつ伏せで圧すことはまったく無理です。「ここまでかな?」と、ある程度の手応えを得るまで2時間かかりました。ご本人はずいぶん楽になって、「なんか腹減ってきたなぁ」「何か飲みたいなぁ」などと言い始めました。少しだけ痛みがまだあるけど楽になったと喜んでいました。
腹部の緩みは、まだ正常とはいえません。「とりあえず明日また電話をください」と言って治療を終えました。ところが寝る前にオレンジジュースを飲んだせいか、夜中の1時ごろから、激しい腹部の痛みで朝まで眠れなかったというのです。次の朝、一番で私に電話があり、群馬の社長から「憩室炎(けいしつえん=大腸の病気)の可能性もあるそうだから早く病院へ行ってくれ」と言われたそうです。
ビックリです! 鈴木先生が言われた“近々”とは、昨夜1時過ぎだったようです。やはり病院に行くことになりました! スタッフ全員で“何で分かるの?”と不思議がったものです。
後日、治療を受けながら先生に報告しました。それにしても何で様子を読めるのか、不思議なので聞いてみました。
「頭で考えていないから――」
そうか、感覚なんだ! 磨き抜かれた感覚は、すごい! 私は、実際に電話でやりとりしているので、なんとなく納得できます。今までも何度も同じようなことがありました。
Nさんは憩室炎と診断され、その場で入院。状態がよかったので、外科手術をせずに絶食で点滴治療となり、その日の内に外出許可を得て挨拶にみえたのでビックリしました。
命に係わるときは仕方がありませんが、できるたけ身体にメスが入ることは避けたほうがいいのです。その影響は身体中に広がりますから。
昔、盲腸炎で開腹したら違っていて、切ったついでだから虫垂を取ったというケースがよくありました。今回がそれであったかどうかは分かりません。ただ、Nさんが元気を取り戻すための、お手伝いはできた気がしています。
施術中、Nさんの身体がカーッとすごく発熱し、局部の熱が全身に散りました。これが2度あって局部の熱がとれたのです。
緊張感が高まる仕事、嫌いではありません。それにしてもいつもながらの適切な指導、鈴木先生には心から感謝しています。
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