時太山は17歳で入門してわずか2ヵ月後、額が割れて肋骨が折れ、顔が腫れ上がり、鼻は潰れて形が変わり、足にはタバコを押し付けたような複数の火傷跡が残る状態で、遺体になって自宅に戻ってきたというのです。(各新聞報道)
ところが時津風親方は、当初「通常のけいこの結果」と説明していました。その上、遺体を親の目に触れさせないためか、「(遺体は)こちらで取り仕切りますから」ということで、現地での火葬を示唆する電話をかけたというのです。(毎日新聞夕刊 2007.9.27)
もちろん親は納得できず、「それは困る、こちらから迎えに行く」と抗議したところ、傷だらけの遺体が搬送されてきたといいます。
親方はテレビ・新聞などマスコミで、「親御さんから預かった大事な子供に、暴力を加えることなど正直言ってありえない」と繰り返し強調していました。ところが親が行政解剖を希望した結果、新潟大学で「多発性外傷によるショック死が考えられる」と判断されたというのです。
あとで分かったことは、実際は、時津風親方が前夜の酒席で、自らビール瓶で時太山の額を殴打、兄弟子らが金属バットで凄惨なリンチを加えていた、というではありませんか。
年若く、入門わずかで身体もまだできていない、とうてい耐えることができなかったでしょう。元小結(親方)や現役力士から加えられた暴行は、凄まじいものだったのでしょう。
この親方、27日の日本相撲協会の定例理事会に出席し、協会側に迷惑をかけた謝罪はしましたが、自らの責任や進退にはまったく触れませんでした。しかも相撲協会からは、親方の処分についての発表もなく、時太山の親に対して、今日に至るまで謝罪の一言もないということです。
しかも北の湖理事長まで、これほどの事件を「捜査中ですから、警察にお任せするのが一番。捜査の結果が出たら、はっきりしたことが言えると思う」といっさい口を閉ざし、協会独自では調査をしようともしなかったのです。これではまるで他人事(ひとごと)ではないでしょうか。
昨日、渡海紀三朗・文部科学大臣に理事長が呼ばれて叱責され、あわてて“お詫び記者会見”をしていました。協会のトップに、責任を受け止める自覚がないならば、役職を続けるべきではないと私は思います。
理事長が理事長なら、広報部長も同じです。高砂親方(元朝潮)は、「(この事件について)私からお話しすることはできない」と恥ずかしげもなく語っていました。「朝青龍事件」のときも、当初同じことを言っていたのを思い出しますが、そんなことなら広報部長の資格はないのではないでしょうか。人一人が死んで(殺されて)いるのです。
他の組織を真似てか、理事長、理事、…事業部長、巡業部長、広報部長…など仰々しい役職を作り元役力士を充てていますが、任命された者は、はたして自分がどういう役目を果たさなければならないか分かっているのでしょうか。理事長自体がまったく自覚がないようでは、以下は推して知るべきではないでしょうか。
検察は時津風親方を傷害罪で、兄弟子らを傷害致死容疑で立件することも視野に入れているようですが、最終的には「執行猶予」などがついて、さしたる刑にならないでしょう。
親御さんは刑事裁判と別に、ぜひとも民事裁判を提訴して、一片の誠意もない相撲協会や時津風親方と徹底的に戦ってもらいたい、多くの人たちが心から応援しています。
それでなくても、今、新弟子検査を受ける(入門希望)者が激減しているというのです。こんな実態では、どこの親が息子を預けようと思うでしょうか。
ここで体質を大改革しなければ、大相撲の未来は絶対にありません。「国技」と気取ってみても、勝手に言っているだけで、法的な裏づけなどないのですから……。日本の伝統を滅ぼしてしまうか否かが、理事長以下協会の幹部、親方衆にかかっているのですよ。