「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

切迫早産の危機のり越え、はや4歳に

2006年10月25日 | 素晴らしい指圧効果

 切迫早産で緊急来院されたことのあるM子さんが、3日前、久しぶりにひょっこり顔を見せてくれました。近くまで来る用があったので、立ち寄ってくれたとのことです。Sクンもすっかりお兄ちゃんになって、妹のYちゃんと一緒にニコニコしてとても元気そう。4年前のあの緊張感がなつかしく甦ります。
 
  M子さんはとても明るい素直なお嫁さん。初めての妊娠は順調だったので、ギリギリまで共稼ぎで頑張って、生まれて来くる子を迎えようと準備を
していました。妊娠8カ月のとき、出かけた先で雨に降られ、濡れたまま急いで帰ろうと電車に乗ったら、クーラーが効き過ぎていて、すっかり身体を冷やしてしまったようです。

  ところがその晩から、激しい腹痛とお腹の張りに不安を覚えて、翌朝一番で、かかりつけの医師を訪ねたところ、「切迫早産の危険がある」と、絶対安静を命じられたとのことでした。
  しかし、静かに寝ていてもなかなか状態がよくならなかったそうで、彼女のお母様から私のところへ電話があり、「指圧は有効でしょうか」と相談を受けました。今でもそのときのことを、よく覚えています。
  M子さんは右手で腰を押さえ、すり足で身体を左右に振りながら、そーっと、そーっと歩いて治療院へ来ました。足に触れると、これが本当に20代の女性かと思うほど、硬く冷たくなっていたのです。お腹の張りにもビックリしました。

  右下肢から時間をかけて弛(ゆる)め、足が温かくなってきた頃には、お腹の張りは随分よくなっていました。あとは普通の妊産婦さんへの指圧。腹部で十分な手応えを得たので終了しました。帰る後ろ姿は来院時とはうって変わり、足の裏が見える普通の歩き方になっていました。

  結果、お産は安産で母子共に順調の報告。飛び上がりたいほどの喜びを感じたのが、昨日のごとく思い出されました。その赤ちゃんがSクンだったのです。目まぐるしい多忙な毎日の中にも、この親子の来訪が、一服の清涼剤のような爽やかさを私のもとへ運んでくれました。
  子供たちの健やかな成長は、何物にも替えがたい喜びであり、仕事への原動力になります。心の底から「元気に育って!」と、祈りながら見送ったのでした。


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辛いときは、まず温めて!

2006年10月20日 | 素晴らしい指圧効果

  出版した本(自然治癒力を高める基本指圧の絶大効果・文芸社)が縁となって、施術を受けに来院される方がボチボチありますが、私が多忙のため、思うように対応できず、申し訳なく思っています。

 Tさん(女性・60歳)もその1人。「いつでもいいから」と、遠い先の予約として受けていましたが、1カ月ほど前に初診になりました。「30年来、どこへ行っても何をしても、取れることがない肩甲骨の裏側の痛みがありますが、なんとかならないでしょうか」ということでした。聞けば、左腕骨折のリハビリ中でもあり、左五十肩も発症しています。圧してみると、これほど深く硬いのはめったにないな、という感じ。
 
  長年仰向けに寝て、背中に小さなビンを当て、それでゴリゴリやっていたというのです。筋肉はすでに結合組織化して、痛めてしまっている感触。「これはちょっと難しいな」と思いました。
  私の本を読んで、硬いモノによる刺激や、たとえ人の手指であっても、強い力で筋肉をゴリゴリやると、筋繊維を傷めてしまい、もとに戻らなくなる危険もある、との記述にハッとしたということでした。
  ご本人には「痛めてしまった筋肉は元通りにならないけど、その影響を受けている色々な部分を改善してゆけば、かなり楽になりますよ」と話して治療を始めました。初診から1カ月の間に、私の時間が取れなかったので、途中、当院スタッフが1回治療しました。今回は私の2度目の施術でした。

  リハビリの先生も、回復の様子にとても驚いていたとのことで、本人もたいへん喜んで、「30年来の痛みが1回で取れたんです」と力説していました。  
  圧す側から見ても、思ったよりはいい状態になっていましたが、痛んでいる筋肉が多少緩んできても、元通りになった訳ではありません。しかし、いちばんの悩みから30年ぶりに開放され、ご本人はかなりスッキリした気分らしい。今後、時間をかけて全身的な改善を目指して行こうと思っています。
   
  それにしても、硬いもので筋肉をゴリゴリやるのは、くれぐれもやめてほしいと思います。痛い所だけ攻撃しても、治ることはないからです。「痛み」はあくまでも信号であり、その元は他のところにあることが多く、原因からなおさなければ解決しません。 モノでの刺激だけでなく、たとえ手指でも、強い力でゴリゴリやれば同じことが起きます。筋肉の悲鳴が聞こえるようです。

 辛いときは、まず温めてみてください。その方が身体に優しく、かえって効果が出ることが多いのです。


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「夏バテ」の原因は、ほとんどが冷え

2006年10月09日 | 素晴らしい指圧効果

  ここ1~2週間、急に涼しくなったせいか、身体の状態が厳しい患者さんが目につきます。治療予約の電話もさばき切れず、目が回るほどの忙しさです。
   
  6日は、“1日で10月1ヵ月分の雨が降る”との予報通りのすごい雨でした。朝一番で基本指圧研究会メンバーのHさん(男性)から、突然電話が入りましたが、この1週間体調不良で仕事もできず、ひどい目まいに襲われているというのです。
  少し落ち着いてきて電車に乗れそうなので、ぜひ治療を受けたいということでした。声は元気そうですが、自宅から私の治療所までは片道2時間かかります。よっぽど辛いのでしょう、私はビッシリ詰まった予約を見つめながら、何とか工夫して彼の治療時間を作りました。

  長身の彼ですが、来院したこの日は少し小さく見えました。彼が夏場、素足で出歩いているのを何度か見かけていましたが、素足で歩くと、本人が気付かないうちに、身体を冷やしているのです。それが夏の疲れとなって出ることが多いことを、私は患者さんの身体を通して何度も体験しています。
  右下肢から圧し始めてみました。予想した通り、これでは足がつってしまうだろう、という症状がハッキリ出ています。その上、なんと、ミズオチが異様な形をしているのです。
  本来ミズオチの肋骨は八の字に開いているはずなのに、まるでゲンコツが2つ並んでいるような形になっています。ミズオチは、人間の寿命すら決定してしまうと言われる大事な部位です。そこがこんな状態では、健康な生活は送れません。
「何度も救急車を呼びたいと思った」と言う彼の言葉が、納得できるほど異常な状態でした。とにかく全身が冷たく硬い、職場のクーラーがきつく、夏中、裸足で外出し、身体が冷え切っていたらしいのです。同僚も次々体調不良になっているということです。
  施術により、ミズオチも腹部も、かなり改善されました。
「来週もう一度受けられるといいのにね。」
「ハイッ、ぜひ!」

  急に涼しくなった頃に出てくる「夏の疲れ」は、夏の間に身体を冷やしてしまったのが原因です。飲み物、クーラー……、暑い最中にこのことを頭に入れて、注意して過ごせばトラブルを最小限に抑えることができます。
   
  彼は指圧師として、辛さを経験し、施術による変化を身体で味わったのは、とても貴重な生きた勉強になったはずです。鈴木林三先生は、「死なないまでの経験は、たくさんしなさい」と言われています。体験を積み重ね素晴らしい技術者になって欲しい、と見送ったHさんの後ろ姿は、スラリとした長身の青年に戻っていました。


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