私は昨年暮れの12日、脳出血を起こして川越の救急病院へ緊急搬送されました。そのあと、脳神経外科医・藤原一枝先生の紹介で東京警察病院へ転院することができました。
実は川越の病院でICUにいた8日間、私は来て下さった方は全部知っています。しかし自分の意思表示はほとんどできなかったのです。
転院しても廊下へ出られるのは、お手洗いへ行くときと、誰かについてもらって談話室の自動販売機に飲み物を買いに行くときぐらいでした。
ところが右側の視野が極端に狭くなっていましたので、右側に障害物があっても見えないのです。廊下を歩いて右へ曲がるとき、右側の角が見えないから「ガン」とぶつかってしまいます。部屋へ入るときも、思いっきり顔の右側をぶつけてしまうのです。
たしか12月28日だったと思います、鈴木林三先生が病院へ来て下さいました。そのとき、30分ほどかけて前頸部と両手の指圧をしてくださいました。すると不思議に、視野が広がったような感覚があったのです。
「指圧をすると視野が広がるかもしれない」
私はまだ現実と夢との間をさまよっているようなところがありましたが、先生が圧してくれたように自分を指圧しよう、と決意しました。
ところが前頸部が短く堅くなっていたので、圧すのにも指が入りません。そこでまず、手にあるポイントを圧し始めたのです。すると日毎に目の状態が変わっていくのが感じられました。
指圧を始めて10日ぐらいたったころ、「だいぶん良くなったから、一度視野検査をしてみましょう」との病院の先生の勧めに従って、1月7日に初めて検査をしました。
上の写真が、そのときの右目の結果です。かなり良くなっていますがまだ右下の4分の1が欠損しています。
しかし状態がずいぶん良くなっているのを感じたので、次いで2月5日に再度検査をしました。
先生方から「視野は元に戻らない。それなりに工夫して生活するしかない」といわれていたのですが、私は「まだまだ良くなる」と確信が湧いていました。
その後2月10日に退院して、リハビリセンターで失語症のリハビリをしていますが、同時に、おりにふれてごく短時間ながら、視野回復のための指圧も自分で行っています。
12月20日、東京警察病院へ入院したのがちょうど1年前でした。この日、3回目の視野の検査をしました。私はかなり良くなっているはずだ、という確信がありました。池袋や新宿の混雑する駅構内も平気で歩けるようになりましたし、沖縄や台湾などへ旅行をしても不便は感じません。
検査のあとの診察で眼科の先生にいわれました。
「劇的な回復ですね」
不思議がっておられました。そこで自分が指圧師であること、目のポイントを自分で指圧していたことを話しますと、それはどの部分ですか、どうやって圧すのですか、と熱心に聞いておられた。
「また様子を見たい」とおっしゃり、半年後(5月か6月ごろ)にもう一度検査をすることになりました。
1月7日の検査結果と今回の検査結果を見て、先生は「1月7日は4分の1が欠けていたが、今回は8分の1以下になっている。こんなことがあるのですね」と驚いておられました。
最後に、視野検査の結果をコピーしていただきたい、とお願いしたところ心よく応じて下さいました。
この日は帰宅して祝杯を挙げました。半年さきの検査を楽しみにして、今後とも目のポイントの指圧を続けようと思っています。
ただし、私の場合は早く指圧を始めたからよかったと思っています。遅くなればそれだけ回復が難しくなることは間違いありません。
1月7日の視野検査(右目)。指圧を始めてかなり良くなったと思います
が、まだ右下4分の1が欠損しています
12月20日の検査(右目)。欠損部分が大きく回復しています