「基本指圧」に憧れて ― 村岡曜子のブログ

我が国固有の指圧を広く浸透させ、社会の保健と福祉の増進に寄与したい。

7月の練習会、「力が抜けて圧す」コツにメンバーが果敢に挑戦!!

2012年07月28日 | 分類なし

  7月の月例練習会が15日(日)午後1時30分から2時間、池袋の豊島区勤労福祉会館で開催されました。学会発表後の初めての練習会でもあり、久々に前頸部の圧し方を勉強することにしました。

  開始に先立ち、「今日は前頸部を練習します」と言うと、期せずして「やった!」という声が聞かれました。メンバーがこの練習会を楽しみにしているのが感じられ、責任者として心から嬉しかった。同時に、難しい部分の練習ですから、不用意に圧されて体調が悪くならないようにと、案じずにおれなかったのも事実です。
  前頸部指圧は「浪越指圧」のいちばん重大な箇所です。うまくできた人、できなかった人など様々でしたが、全員が真剣に取り組みました。練習の中心は「余分な力が抜けた圧し方」です。

  実は私の治療院に週何回か、2年間通ってこの圧し方を練習してきたK君。この日、初めてメンバーの前頸部を圧したのですが、受け手から「本当に初めてなの?」と言われ、とてもうれしそうでした。
  彼は指圧学校を卒業して国家試験に合格したあとも、どうしてもそれで満足できず、本物の「圧し方」を求めて練習してきたのです。しかし毎日の努力、これがなかなかできないことです。彼の圧し方がここまで進歩できたのも、安易に妥協せず、納得のいく勉強を続けてきた成果でしょう。ただし「テング」になったらおしまいです。K君は決してそんな青年ではありませんが、過去の例を見るにつけ、こんな時こそ慎重の上にも慎重に、腹を決め切って頑張ってほしい、と思わずにはおれません。

  K君以外にも、目を見張る成長を示している若い人たちがいます。1回1回の練習を大事にして果敢に取り組んでいる姿、本当に素晴らしいと思います。

  受け手が強く押されることを好み、押す方もともすれば「力押し」に頼り、本来の指圧の良さが失われつつあるのが最も大きな危惧です。こんな中で、力が抜けた状態で圧す「コツ」のようなものをつかんだのではないか。上手になっていく姿を見ると、本当に嬉しくなります。
  時間があれば「腹部の圧し方」も練習したいと思ったのですが、これは次回以降に持ち越しです。


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リハビリの先生が二分脊椎症の「排泄改善」に重大な関心

2012年07月07日 | 基本指圧の素晴らしさ

  脳出血の後遺症である「失語症」のリハビリのため、私は東京・錦糸町で藤原一枝先生が主宰される「藤原QOL研究所」に隔週、埼玉・上尾の国立「埼玉総合リハビリテーションセンター」に毎週通っています。
  藤原研究所では音楽療法を行っています。リハビリセンターではST(言語聴覚士)の先生が、いろいろな方法を用いて回復に取り組んでくれます。また月1回、リハビリセンターの医師の診療があり、回復状況などを確認して話してくれるのです。

  前週のリハビリは翌日(6月30日)が学会発表だったので、STの先生に話してお休みにしてもらいました。7月6日は定例のリハビリでした。終了後、リハビリテーション科の医長K先生の診察です。STの先生から聞いていたらしく、この日、診察よりも学会発表に興味があったようで、話はほとんどそのことでした。
 
ことに二分脊椎患者の排泄問題に関してもの凄く興味を持っておられました。私が指圧で身体を弛めながら、洗腸で便を全部出すことをせず少し残しておくことで、便意を催す「引き金」にしたいと考えたこと、だんだん洗腸の間隔を延ばすように心がけたことなどを話しました。
「そうだよね、我々はきれいに洗腸してしまうことしか考えないから…」。
  ことに、「ここで強調したいのは、二分脊椎症で便秘するのは先天的な障害ではない」という藤原先生の発言には大きな衝撃を受けたようで、
「その通りだよね」と何度も頷いておられました。
 
 
又どういう意図かわかりませんが、「僕がこんなことをやりたいと思ってもできないものね」とも仰っていました。
  
私は指圧をとおして患者さんの身体を整えながら、必要があれば藤原先生に相談して、服用している薬の量を減らしたりしながら、自力回復に少しでもつなげることができるのは本当に幸いです。これも藤原先生という、何でも相談できる先生がおられるからです。私が勝手に薬の量などを変えたら、それこそ「医師法違反」になってしまうのです。

  このK先生、以前からの藤原先生の知り合いだそうです。そういえば2年前の12月、私が脳出血で緊急搬送されたとき、藤原先生は夫に「もし希望なら、日本で10指に数えられる脳外科のS先生を紹介してあげる」と仰ったそうです。救急搬送された病院では、開頭手術だと言っていたのですよ。
 
私が転院のために行った東京警察病院の脳外科受付の前にいたとき、若い先生が出てきて「村岡さんですか。私は藤原先生と同じ職場にいてお世話になったことがあります」と声をかけてくださいました。これまで医師の方から声をかけてもらったことも記憶にありません。藤原先生の人徳と、人脈の広さを感じました。

 
また夫は私が入院したとき、財団法人「二分脊椎・水頭症研究振興財団」事務局の九十九そのえ様にもお電話したそうです。
「(財団は神戸だから)遠いので連れては来れないでしょうが、脳外科医は何人もいるから写真を送ってもらったら、どういう方法がいちばんいいか考えることができますよ」。親切に励ましていただき、そのあと松本悟会長先生が電話に出てくださり、いろいろとアドバイスを下さったと恐縮していました。

  実は今回の
学会で発表した中の1人、二分脊椎症の女性。この方も例にもれず排泄障害で悩んでいたのですが、九十九さんから私の指圧を紹介され病状を改善できたものですから、九十九さんを「恩人」といっています。わたしも学会発表の場で、久しぶりにお会いすることができました。とても懐かしかった。

 
こんなことをいろいろ考えていると、現在の自分があるのも、周囲の皆さまに助けていただいたのだとつくづく考えさせられます。どこまで回復できるか、ともかく一生懸命リハビリに励み、基本指圧をとおして少しでも人助けができればと願っています。


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基本指圧による二分脊椎症患者の排泄障害の改善

2012年07月04日 | 指圧の活動

  第29回日本二分脊椎研究会が、6月30日(土)に千葉のホテルポートプラザちば2階ロイヤルⅡで開催されました。この日、私が指圧で排泄障害の改善に取り組んで来た二分脊椎症患者のうち、男女2例について藤原一枝先生(元都立墨東病院脳神経外科医長)が口演してくださったものです。男性は3回の治療で済み、うち2回は鈴木林三先生(日本指圧専門学校講師)の治療を受けました。女性は9ヵ月の治療で自力排便が可能になったものです。

  二分脊椎症とはどういう病気か、厚生労働省班研究ウェブサイトから一部を抜粋してみます。
 
「二分脊椎は、生まれつき脊椎の癒合が完全に行われず一部開いたままの状態にあることをいいます。そのなかには、脳からの命令を伝える神経の束(脊髄)が、形成不全を起こし様々な神経の障害を生じる病気もあります。主に腰椎、仙椎に発生しますが、その部位から下の運動機能と知覚が麻痺したり、(略)さらに膀胱や直腸の機能にも大きく影響を及ぼすことがあります。(以下略)」

  実際、二分脊椎症患者には排泄障害を伴う人が多いのです。
 
その方たちの排尿はカテーテルによる「導尿」という方法で、排便は「洗腸あるいは浣腸・摘便」などの方法を用いているようです。私がこれまで治療してきた患者さんは5人ですが、私の方針を是として治療を任せてもらったのは4人。4人はすでに自力排便ができるまでに改善しましたが、1人目は3年前に発表し、4人目は現在継続治療中のため、今回は第2・3番目の方にかかる発表でした。

 
口演してくださったのは藤原一枝先生。「指圧によって、浣腸や洗腸を脱した18歳の2例」と題したものです。
 
先生は指圧が有効で、効果は持続的と述べられ、もう浣腸や洗腸をしなくても良くなった報告をされました。小学校入学から洗腸を続けていた中学1年生の男児が、自力排便できるようになった例を2009年の発表で知った女性が、指圧を受けた例です。治療10回目で排便があり、便意を感じたり腹圧をかけることができるようになり、9ヵ月63回で指圧が終了した例を示されました。
  続
いて18歳の男性が私と鈴木先生の治療を併せて3回受けただけで、以後は自分で腹部指圧を行い解決した例を示されました。

 
先生が強調された点を簡単に紹介します。
 
「なぜ、指圧が効果を発揮したのでしょう? 洗腸の仕方にもあります。『洗腸の程度を次第にやわらげ、便塊を少し残していた事が良かった』と考えます。まず、腸の運動の基になる便塊があること、次に、腸内細菌や腸粘膜の役割を温存している事が、人体の自然な働きを高めたというのです」
 
「ここで強調したいのは、二分脊椎症で便秘するのは先天的な障害ではないという事です」
 
「二分脊椎の患者さんにも腸の自動能はまちがいなくあるので、排便管理には幼児の時からの習慣が大切です。毎日の指圧は有効で、手間も時間もかかりません。自分の腸を働かせるのは生理的にも免疫的にも意味があります。難治の便秘をプロの指圧師の力で解消し、その効果が持続している3例を供覧しました」
 
「指圧師の話では、二分脊椎症の頑固な便秘の方の腹部は、抵抗感のないおなかで、のれんに腕押しと申しましょうか最初は五里霧中、まるで正体不明な手触りだそうです。洗腸量を減らしながら取り組んでいると、しだいに腸に触る感じが出てくるそうです」

  そのあと、腹部指圧の圧(お)し方を動画にまとめたものをスクリーンに映して、藤原先生は発表を終了されました。

 
この日、日本指圧専門学校校長の石塚寛先生(徳島大学名誉教授、解剖学)をはじめ、弊治療院のスタッフ、基本指圧研究会会員など指圧関係者も大勢参加。改めて基本指圧の効能を眼前にする思いでありました。

(以下、「第29回日本二分脊椎研究会」プログラム・抄録集から当該抄録を掲載します。)

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指圧により、洗腸や浣腸を脱した18歳の2例

  村岡曜子 1) 鈴木林三 2) 藤原一枝 3) 山城雄一郎 4)

  1) 基本指圧研究会 村岡曜子治療院 指圧師
  2) 日本指圧専門学校 講師、江戸川橋指圧センター 指圧師
  3) 東京都立墨東病院 脳神経外科
  4) 順天堂大学大学院プロバイオティクス講座 

[目的] 二分脊椎患者における膀胱直腸障害への対処の選択肢も多くなってきたが,行動範囲が広くなる成人に向けて、危機感を感じる当事者は少なくない。浣腸や洗腸に頼っていた18歳の男女が、指圧によって便秘症を脱し、その効果が持続しているので提示したい。

[対象] 開放性二分脊椎で脳室腹腔シャント術も行っている18歳の男女の2名。排便のコントロールを目指し、指圧を2009~10年に開始した。きっかけは、第26回の当研究会(2009年)で発表された「洗腸6年のあと,排便の自立を得た一例」の中学生男児に使われた指圧の効果に着目してであった。当人達は積極的に指圧に取り組み、便性の記録にも協力した。

[方法] 指圧師による基本指圧を施術した。浣腸に依存していた男性の場合は3回、洗腸に依存していた女性の場合は9ヵ月間に63回施術した。洗腸からの移行期には、便塊を全部出さず、少し残しておくことを心がけた。

[結果] 浣腸を併用していた男性は指圧法を3回で習得し、その後自力排便である。腹部XPでは正常に結腸膨起を示す。女性は尿失禁予防に抗コリン剤を使用し出してから更に便秘が高じ、洗腸(平均 700cc/日)と便秘薬に頼り、続発する下痢便と便漏れに悩んでいた。指圧10回が過ぎた時点で洗腸を脱した。腹圧をかける訓練を経て、便意も感じるようになった。摘便と自力での硬便排出を経て、指圧41回目のあと(指圧開始から5ヵ月後)には長形便が出た。指圧53回目の後は摘便も不要になった。指圧を始めてから生理毎の尿路感染がなくなっていた。指圧施術後1年半になるが、両者とも排便は自立状態である。

[考察・結論] 副交感神経の働きを高める指圧は、「便秘に陥らないこと」と「難治の便秘を絶つこと」の二点に有効である。更に今回の試みは腸内細菌叢の改善にも関与し、免疫能も高めている可能性がある。自覚な取り組み、腹部状況の変化・腹圧のかけ方の習得が大切である。





 


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