7月に入り、暑さも本格的になってきました。ツアー6週目を迎えた今週は、
7月5日(月) 【福島県】会津美里町立本郷中学校 同校体育館
6日(火) 【福島県】会津農林高校 會津風雅堂
7日(水) 【群馬県】伊勢崎高等特別支援学校 同校体育館
8日(木) 【群馬県】樹徳高校 桐生市市民会館
9日(金) 【東京都】千早高校 練馬文化センター
の公演でした。
本郷中学校
文化庁の事業、「子どものための文化芸術鑑賞・体験支援事業」で行われた本郷中学校の公演。この機会に、ヘレン・ケラーについて事前学習をしたいという先生の希望があり、劇団から生徒さんたちにパンフレットを送りました。今回は感染症対策で、3年生が体育館で観劇、1・2年生はリモート配信でクラスで観劇。午前中にリモート配信の準備をしていると「舞台の様子やポンプが気になってしかたなかった!」と、数名の1年生が舞台見学に来てくれました。
開演前には「コロナウイルスの流行、豪雨による被害など、人生には嬉しいこともあれば、思いがけないこともあります。ヘレン・ケラーは140年前に生きていた実際の人物です。家庭教師のアニー・サリバンと出会って彼女は変わっていきました。みなさんも今、自分を見つけているところです。自分自身と照らし合わせて見てほしい」と、校長先生がお話しされました。本番が始まると自分たちの感覚を大事にしながら、何かを感じ、考えている生徒さんの姿がありました。また同じ空間に共にいるという力強さが舞台上に伝わってきました。カーテンコールでは「体育館に入ったとき、豪華なセットに驚きました。途中、ヘレンが赤ちゃんのゆりかごを倒してしまうところで、これからどうなってしまうのだろうと不安になったのですが、最後はみんなが笑顔になって、感動しました」という生徒会長さんの言葉と、花束をいただきました。
終演後は全校生徒のみなさんが舞台見学。舞台の仕組みを楽しんだり、照明や音響のオペレート体験、俳優と交流したりなど濃い時間を過ごすことができました。それから、書きたてホヤホヤの感想文もいただきました!
実は本郷中学校には、12年前に若松第二中学校で『星の王子さま』を公演したときに「呑み助役」演じてくれた教頭先生と、劇団員、佐野準の恩師・菊池先生がいらっしゃいました。嬉しい再会やつながりのあった温かい公演でした。
会津農林高校
会津農林高校は感染状況を鑑みて、一度公演の延期を決めた学校でした。しかし先生から「やっぱり芸術館鑑賞会を実施したい!」と熱のこもった連絡を再度受けて、実現した公演です。会場を体育館から會津風雅堂(文化会館)に変更し、密を避けての観劇。開演前には、会の司会進行、生徒代表挨拶をしてくれる生徒さんたちと先生方が会館を訪れて、入念にリハーサル。生徒さんにアドバイスする先生、アドバイスを受けてチャレンジする生徒さん、双方の姿が素敵でした。
「コロナウイルスのなかで様々な行事がなくなりました。学校で様々な行事を経験してみんなが育っていくと、私は思います。そのために今日のこの行事は大切なんです。去年まで勤めていた学校で、大会がなくなって目標がなくなったと泣き崩れる生徒に、これまで積み重ねてきたものがあるじゃないか、人間力を見失わないでほしいと言いました。苦しみの中にあって何を見つけるのか、今日の公演を通して感じてほしい」開演前に校長先生が生徒さんたちにメッセージを送りました。開演するとこちらが吸い込まれるかのような美しい静寂が空間に漂い、生徒さんの真剣な眼差しを感じました。先生方の願いはきっと生徒さんたちに届いていると思います。これからも学校生活や行事を通して忘れられない、大切な思い出ができますように。応援しています!
伊勢崎高等特別支援学校
会津農林高校の公演を終えて、旅班は伊勢崎高等特別支援学校に移動、公演準備のため舞台設営を行いました。夜、学校に到着すると、待っていてくれたのは教頭先生。マスクから覗く顔に見覚えが……。なんと、1年前に『星の王子さま』を公演した群馬県立沼田特別支援学校の教頭先生でした!思わぬ嬉しい再会!そして担当の内林先生は、群馬県立聾学校の土橋校長先生との長く親しいお付き合いがあるそうです。こうしてまたつながりから生まれた公演。明日の本番がさらに楽しみになりました。
伊勢崎高等特別支援学校の公演も文化庁の事業で、バリアフリー演劇で行いました。公演当日は、全校生徒が朝から順番に舞台見学。俳優、舞台手話役者・音声ガイド・スタッフの自己紹介をしたあとは、舞台のすみずみ、体育館のありとあらゆる場所を、生徒さんも、先生も、劇団員も一緒になって体験。「すご~い!」「嬉しい!」「楽しい!」と感嘆の声がそこらじゅうから聞こえてきます。生徒さんは積極的に劇団員と交流して、質問をしたり、小道具の人形が好きになったり、衣装を着て役になりきったりと、楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
お弁当を食べて続々と入場してくる生徒さんたち。熱気の溢れる会場にベルが響き本番が始まると、ひとりひとりが、それぞれの表現で舞台を共につくってくれました。ヘレンがアニーを打負かすと嬉しそうに体を揺らしたり、声があがります。アニーにヘレンがやられると、なんだか少し悔しそうな客席。隣にいる先生に声を出しながら自分の気持ちを伝えようとする生徒さん。もっともっと一緒にこの空間と時間を過ごしたい、そう思わせてくれる経験をすることができました。カーテンコールではサプライズで、生徒さんたちが「校歌」の手話歌をプレゼントしてくれました。さっきまで客席にいた生徒さんが舞台に上がり照明を浴びて、体全体で表現し、わたしたちに「一緒に歌おう」と呼びかけてくれました。
公演終了後、みんな名残惜しそうに体育館を後にしていきます。ヘレンと抱き合い、俳優とタッチして、写真を撮って。担当の内林先生は、「生徒たちがこんなに真剣に見ていることに驚きました。いつもは体育館に入ってきたり、みんなと一緒にいることのできない子も今日は最後までいたんです。子供たちの力、すごいですね」と、生徒さんたちのこの日の姿に大喜びしていました。またお会いできることを心から楽しみにしています。
樹徳高校
8日は群馬県の桐生市・シルクホールで樹徳高校と中・高等部のみなさんに観ていただきました。久しぶりの2回公演。座席の間隔を空け、2回席までいっぱいに使っての上演です。去年の公演が延期となり、やっとこの日を迎えることが出来ました。今度のツアーは昨年度からの延期が多いのですが、先生方と保護者のみなさんの理解があってこそ、今日のこの日が迎えられたことに感謝します。開場時間を早めて感染症対策をしていただいた先生方、本当にありがとうございました。終演後にはご担当の先生方もほっとされた笑顔でわたしたちを迎えてくださいました。
千早高校
翌日は練馬文化センターにて、千早高校のみなさんとの公演です。コロナによる学校行事の自粛が始まって、1年半ぶりにやっと全校生徒が一か所に集まってできた学校行事。その感激が生徒のみなさんから感じられた客席でした。『ヘレン・ケラー』の上演は6年前に続き2回目です。みなさんの大変元気そうな姿を見て、私たちのこれからの活動への意欲も湧いてきました。
人と人とのつながりを深く感じることのできる公演が続いた一週間でした。共に過ごした時間が、生徒さんと先生方のひとり一人の元気や笑顔になってくれたらと願います。またみなさんと再会できることを楽しみにして、ヘレン・ケラーの旅は続きます。
文:渋谷愛/緒方一則