『ジャンヌ・ダルクージャンヌと炎』の公演も中日が過ぎ、今週も青森から東京へと駆け抜け、5校の学校で公演が行われました。
6月 18日(月)[青森県] 青森工業高校 同校体育館
19日(火)[東京都] 富士見中学校 同校講堂
20日(水)[東京都] 桐朋高校 福生市民会館
21日(木)[埼玉県] 埼玉大学教育学部附属中学校 同校体育館
22日(金)[千葉県] 野田中央高校 野田市民会館
青森工業高校
105年の歴史を誇る伝統校です。(百周年の時に作られた絵の上に1913〜2012とあります)
この学校では『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』を3年前に上演、2度目の公演となります。
午前中は肌寒いくらいでしたが、午後は晴れ間も見え、体育館内は700人以上の生徒さんがぎっしり、熱気がそのまま伝わってくるようでした。
開演前に担当の先生からご挨拶があり、そのあとジャンヌ・ダルクの歌詞が出てくる歌(筆者は知っている懐かしい歌です)が歌われ、先生の歌に合わせて元気溢れる生徒さんの手拍子があり公演が始まりました! 元気な姿はそのまま芝居へと向かい、笑ったり、場面ごとに感じたり考えたりしている一人ひとりの息づかいが感じられる公演でした。
カーテンコールのあと生徒会長さんから「生の演劇を見る機会がない僕たちに、素敵な時間をありがとうございました。芝居を見てジャンヌ・ダルクの人生をもっと知りたいと思いました」とお礼の言葉をいただきました。凝縮された2時間という舞台から、見て感じ考えたこと、疑問に思ったことが、いまここで生きている生徒さんたちの、これからの人生に繋がってほしいと願っています。
公演後、生徒さん、先生、観劇に来られた保護者の方全員が舞台、舞台裏を通って退場。わずかな時間のなかで道具に触れ、「じゃーね!」などとジャンヌ人形に声を掛ける生徒さんたち。
舞台撤去には図書委員、ソフトテニス部のみなさんが精力的に手伝ってくれました。ありがとうございました!!
富士見中学校
こちらの学校では『ヘレン・ケラー』、そして昨年の『ジャンヌ・ダルク』の上演と3度目の公演となります。今年も中学1年生が講堂で観劇。今回もまたみなさんと、どんな出会いがあるか私たちも楽しみにしていました。
初々しい眼差しで、客席後ろから登場する旅役者たちを好奇心いっぱいに見つめる生徒さんたち。物語のひとつひとつの出来事を受けとめていく生徒さんたちとともに、舞台がつくられていきました。代表の生徒さんが「私たち富士見中の生徒もジャンヌのように強い意志を持った女性になりたいと思います」と述べてくれました。
公演後には希望する生徒さんの舞台見学がありました。
舞台撤去にも多くの生徒さんが、関心を持ちながら積極的に参加してくれました。ありがとうございました!!
最後まで手伝ってくれた生徒さんたちに、ジャンヌ役の白根からお礼の挨拶。
今日のこと、この舞台がみなさんの出会う様々なことのなかで、大切な思い出となり、支えになってくれたらと思います。
桐朋高校
こちらの学校では初めての公演となります。
1000人近くの男子生徒さんたちがどのように見るのか、気持ちも引き締まるなか公演が始まりました。最初の登場の驚きから、「何だろう」という感触など、見入る生徒さんのまなざし、それぞれの呼吸が混ざり合うように、舞台と客席が交差していきました。その集中したそのまなざしは最後まで途切れず、カーテンコールでは声援を送ってくれた生徒さんもいました。
公演後には、舞台撤去を見ながら、新聞部と希望者の生徒さんたちと客席で座談会が行われました。先生方も何人か参加してくれていました。短い時間でしたが、一幕の終わり、フランスを勝利に導き、シャルル7世の戴冠式を終えたあとのジャンヌの思いなど、場面の細かな所についてや、撤去している役者の姿がかっこいいなど様々な質問や感想があったそうです。
一人ひとりにとっての芸術鑑賞の場、今回の舞台を通して一人ひとりの生徒さんが「何か」を受けとめてくれたことに、ご担当の先生も喜んでおられました。
見るということのなかで違うものを持ち合い、様々な視線のなかでつくられた公演でした。受けとめてくれたこと、感じたことを一人ひとりの生きる力にしていってほしいと願っています。
埼玉大学教育学部附属中学校
3度目の公演となるこの学校では、中学3年生が文化祭で演劇の発表をします。
午前中には3年生170人の生徒さんがクラスごとに、舞台見学を行いました。
興味津々に大道具、小道具、被り物など触れ、身につけたりする生徒さんたち。照明や音響にも早速質問があり、説明を受けたことをメモしたりと楽しそうにしているみなさん。何人の生徒さんから「演劇っておもしろい」という声を聞きました。上演する演目が決まり、出演者、舞台、照明、音響の担当も決まって未知な事に触れていくワクワクする様子が伝わってきました。
公演は中学生全員が観劇します。500人以上の生徒さんが一杯になった体育館、進行も生徒さんが行います。楽しそうに、そして一生懸命に真剣に舞台を見てくれました。公演後に代表の生徒さんが「小学生の時に伝記を読んだことがあったけれど、怖いとか悲しいとかいう感情はありませんでした。でも今日見た演劇からは本物の感情が生まれてきました。私たちも舞台、照明や音などの技を使って、みんなで一緒に舞台を作っていきたいと思います」と率直に感想を話してくれました。舞台から受けた思いを真っ直ぐに話す生徒さんの姿に、文化祭の演劇を担当されている先生もびっくりされたと聞きました。
公演後にも出演者、舞台、照明、音響に分かれて代表の生徒さんたちとの質疑応答がありました。みなさんの姿は、初めて演劇に出会った時の大事なことを思い出させてくれました。演劇を見る、作ることを通して関心が生まれ、自分や仲間のことを考えたり発見したことを大切にして、たくさんのことを経験して、自分たちの舞台をつくっていって下さい!
野田中央高校
風では初めての公演となる学校です。
朝、舞台道具搬入口で集まっている劇団員に「演劇を初めて見る子もいる、話しはしてあるが物語の内容を把握していない子もいるかも知れませんがよろしくお願いします」と担当の先生が挨拶に来られました。そのあと若い先生方が、生徒さんたちがどうやったら演劇に少しでも関心や興味をもってくれるのか考え、やってみようと、1000人以上の生徒さん一人ひとりの座席に『ジャンヌ・ダルク』の観劇の手引きを置いていました。
公演が始まると、客席背後からの登場に大盛り上がりの生徒さんたち。一気にお互い親近感が生まれるような雰囲気でした。大きな声で笑い、じっと見入る姿がとても印象的で、大きな波のように生徒さんそれぞれに受けとめたことが舞台に返ってくるようでした。生徒会長さんが「ジャンヌ・ダルクの勇敢さと、最後にジャンヌが火炙りの刑になったことで、周りの人たちがどれだけ悲しんだのか知りました」とお礼の言葉を述べてくれました。生徒さんの話にもあったように、死刑執行人が語るラストシーンは、生徒さんたちが感じていることがひとつの静寂となってそのまま舞台に残っていました。
公演後、観劇の手引きを置いていた先生が、舞台を見ていた生徒さんたちの姿に感激し、喜びの声で挨拶されていました。
演劇部、希望者のみなさんと舞台見学、座談会が行われました。
みなさん、ともに舞台をつくっていただき本当にありがとうございました。
一瞬一瞬のなかで生徒さんたちが物事を捉え、感じている姿が印象に残った5日間でした。旅も中半、座長の栗山が「見てくれている生徒たちをもっと受けとめてつくっていこう」と役者たちに声を掛けました。一人ひとりの生徒さんのなかに起きてくる何かを信じて、私たちも自身を刺激し揺さぶりながら、後半の公演に向かいたいと思います。
召使い・イザボー王妃役/工藤順子