山浦清美のお気楽トーク

省エネ、農業、飛行機、ボウリングのことなどテーマ限定なしのお気楽トークができればと思っております。

農家の農地所有のあり方について

2013-01-20 | 農業

 先日、ほぼ同年輩の会社経営者数名と会議の途中で雑談していたおり、農業に関する話題になりました。いわゆる農業従業者の高齢化の問題で、その原因は農地を手放さないことが最大の問題だとの指摘がありました。耕作しなくても農地を所有していること自体に旨味があるからだろうとの主張でした。だから新規就農者や企業が農地を取得できず、農業が近代化しないのだ。企業が農業に参入すれば、もっと効率的に経営ができるようになるとの意見もありました。更には、国が農家から強制的に農地を取り上げてしまい、新規就農者や企業が取得し易くするようにするしかないのではないかとの極端な主張をする方もおられました。

 私が農業(兼業)をしているということをご存じないとみえ、忌憚のないご意見を伺えたことは貴重な体験でありました。思うに農業の現実をご存じない方々の大方のご意見は、先の方々のようにお考えなのではないかと想像したのでした。

 私は、百姓の小倅(長男)として生を受け、サラリーマン生活を経て、現在自営業(省エネコンサルタント、行政書士)と農業を兼業しております。ただ、農業といってもわずかばかりの田んぼと畑です。昔みかん畑であった山と杉、檜の山林は、そこそこありますが、ほとんど管理に手が廻っておりません。このような立場上、私は先の主張にも賛同できるところもありますし、できかねる部分もあります。

 さて、農家が農地を手放さない理由とは一体なんなのでしょうか。余程旨味があるとお考えででしょうか。都市近郊の農地の場合には、そのような時代もあったのかも知れません。残念なことに、そのような農地を所有したことがないので判りません。しかし、田舎の農地の現実はどうかというと、確かにバブルの時に多少値が上がったことは事実です。跡継ぎのいない農家の多くは、この時に手放したかったはずです。田舎にも宅地化の波が押し寄せてきておりました。しかし、農地法がある故に農地を住宅地に転用して売ることが出来なかったのです。この時、農地が売却できれば、借金苦から逃れられた農家が大勢いたでしょう。

 しかしながら、農地法があったからこそ農地が守られてきたという側面もあります。バブルの時に無制限に農地の転用を認めていたならば、日本の農地はどうなっていたことでしょう。売りたくても売れない現実があったればこその現在があるのではないかと思っております。

 こうして、農家は農地を耕作するしないにかかわらず所有し続けてきました。本来の農地法の趣旨は、不在地主から小作農を解放し、自作農を創設するにあったのです。その結果、一時期は自作農が増加しました。日本が高度成長するに従い工業化が進展し、その労働力供給を農家の子弟に求めることとなりました。農業で食っていくより、都会に出て農業以外の産業に従事した方が収入が高くなるといったことになれば、当然のことながら農業の就労人口は減少し、ついには産業としての重要性を失うに至ったのです。

 もはや産業として成立しない農業の問題は、戦後日本の成長戦略の結末として見据える必要があるものと考えます。その結果として、農業就労者の高齢化、依託耕作や耕作放棄地の増加等々の現在の農業問題があるのです。

 農家の農地所有のあり方について、冒頭の主張のように種々の考えがあって然るべきです。農地の高度利用といったことを真剣に検討しなければならない時期にさしかかっているのかも知れません。農業のあり方は、日本のあり方そのものが問われる重要な問題です。長期的展望に立って十分な議論がなされるよう希望します。

<参考> 「兼業農家は是か非か?」 「農業用水路はいつまで維持できるか?」 「灌漑施設の管理作業」 「TPPについて(2)」 「TPPについて(3)-経営規模拡大で対抗できるか?」 「TPPについて(8)-農地法