映画はだいたい2時間。
人間が集中していられる時間もだいたい同じ。
2時間あれば人生を知るには十分だろう。
君との距離15センチ。
適切な間隔を置いて、君は僕の周辺視野の中にいた。
どこで笑い、どこで泣き、どこを気にとめないのか。同じ方向を見つめながら、密かに横顔を探っている。
全く同じではつまらない。全く違うのも寂しすぎる。ちょうどいい君が、この世界のどこかにいるはずだ。
・
……
文字盤の上のカタツムリ。長く留まれば指の運動に制約を受ける。もしも歩みが重なればミスタッチになる。どうしてここに?
痛みは雨のようなものだ。自分の意思でコントロールすることはできない。けれども、雨を知っていればきっと乗り越えられる。
「どうしてここに?」
互いに理由を答えられない。きっとそんなものはないのだろう。運命という響きはここに似合わなかった。風が教えてくれたタッチ。
カブトムシの座標をかわしながら、主人公は物語を完成させる。
表現が偏っている。
エピローグまで書店員たちには届かない。
作者は笑っている。カタツムリの笑顔のようだ。
そして、カタツムリは空の上を歩き始めた。
星に働いていた力。そのすべてを忘れて。
・
「つまらない映画だったわ」
はっきりと君は言い切る。
「そうかな。感動的だった」
僕たちは真逆。ジャンルが違う。
「さようなら。あなたの人生にはつき合い切れない」
「それじゃあここで。僕はもう少し見ていくよ」
彼女だけが席を立った。少しあきれたような顔。
「もう終わってるわ。お先に」
僕は独りエンドロールを見送っている。
さよなら……